独立開業してからの3か月を振り返って
2016/03/31
今年の頭に特許会計事務所を独立開業してから、3か月が経過しました。
無事に(?)、年度末を乗り切ったところで、この四半期を振り返ってみようと思います。
事業の調子と、独立してみた感想と、今後の考えることなど。
業績とか、目標達成とか
まず、事業の調子としては、頑張ってるほうだと思います。
もともと事務所勤務からの独立ではないので、既存客0、見込み客ほぼ無しの状態から始めた割には、なんとかなっています。これは本当に、色々案件を紹介してくれる周りの方に恵まれたからという理由につきます。
今年の元旦に、今年の仕事の目標を立てました。四半期が経過した時点での達成度合いは下記のような感じ。
- 所員数を4人以上にする
⇒5月か6月に弁理士3人、事務員(妻)1人の4人体制に出来そう。 - 顧問契約の企業を5社以上にする
⇒3社から顧問契約頂いた。特許事務所としては珍しいのでは。 - クライアントのリピート率を9割以上にする
⇒これは短期の定量評価しにくい目標でしたね。でも、リピートしてもらえそうということでは達成できそう。 - 既存客からの口コミ・紹介による案件を10社以上得る
⇒既存客からの紹介ということでいうと、もう少し時間かかりそう。 - 継続発注を貰える中堅企業のクライアントを2社以上得る
⇒中堅以上の企業からは2社から発注貰ってる。うち1社がしっかり継続できるかは、今が踏ん張りどころ。
悪くない状態だと思っています。
今のお客さん30社くらいのうち、6割くらいは人からの紹介です。残りのうち、半分は元々の繋がりの縁、半分はHP等による引き合いです。お客さんの層で言うと、Tech系のITベンチャーがほとんど。
業務の種類で言うと、売上比率で、4割くらいが特許出願、3割くらいが知財コンサル(特許動向分析とか)系、1割くらいが商標出願、1割くらいが特許調査系、残りの1割くらいが顧問契約とか雑多な相談とか。
わりと手広くやってます。特許の売買とか、ライセンスの交渉支援とかも、売上には至ってないけど、案件としては入ってきてます。
独立してみた感想
独立してみた感想は、色々あります。
まず、「楽しい」!
楽しく仕事をするために独立したんだから、楽しくないと困るけど、思った以上に楽しいです。
面白いお客さんたちに恵まれて、またパートナーにも恵まれ、わくわくする仕事が多いです。
あとは、自分の仕事、アウトプットの純度が高く、無駄なことが無いのが、楽しく感じる理由かもしれない。
読まれない議事録を何度も修正したり、見た目だけのグラフを作って説明のための説明をしたり、そういう無駄なこと(本当は崇高な理由があって無駄じゃないのかもしれないけど、私の近視眼には無駄に見えてしまうこと)がなく、やっていること全てが売上にダイレクトにつながって、お客さんへの価値に転換できている感じが楽しい。
もちろん、意思決定を自分で出来ていることも楽しく感じる理由だと思う。それが成功しようが失敗しようが、オウンリスクでトライできる。社内調整というものが無いですからね。
自由であることによる楽しさっていうのも大きいです。
そして、「勉強になる」!
いや、本当に、一つ一つの仕事が勉強になります。これでも10年間は知財業界にいたのだから、ある程度のことは分かっているつもりだったけど、実際に事務所の業務として具体的なことをすると、細かいことが分からなかったり。
例えば、弁理士としての一番の基本業務である特許出願をとっても、一から、願書と明細書と図面を書いてHTMLにしてインターネット出願ソフトで出願して、っていうことができる弁理士って、意外と少ないんじゃないでしょうか。
もちろん、こんなことは事務の人を雇ってやってもらえばいいんだろうけど、自分で一つ一つ確かめながらやっていくと、新しい発見があります。
そして、私には当然分からないこともたくさんあって、有り難いことに、それを教えてくれる人が周りにいました。明細書作成は明細書作成のプロに、商標は商標のプロに、事務業務は事務業のプロに、外国出願は外国出願のプロに、それぞれ教えてもらって。
また、実際の業務の中でも、何気ないお客さんの言葉から発見があったり、お客さんから厳しいご指摘を頂いたり。こういう愛のある厳しい指摘を頂いているうちに、しっかり吸収していきたい。
もちろん、実務に関する学びだけでなく、経営としても、営業としても、非常に多くの学びポイントがありました。独立して経営するのって、これまで得てきたスキルの総体性が問われます。
また、会って話をする人種も変わってくるので、新しい情報が大量に入り込んできます。
最後に、「結構疲れる」!
トータルの業務時間でいうと、どうだろう、そんなに変わってないかもしれない。
土日も半分以上は仕事する代わりに、平日ものんびり過ごしたりするし。夜遅くまで仕事する代わりに、朝はゆっくりだったりするし。
仕事のスタイルとしては融通がきいて、体力的な疲れはないんだけど、とにかく、ずっと仕事のことを考えています。
案件の管理は自分でしっかりしないといけないし、営業のことも、人事のことも、経営のことも、将来のことも、直近の締め切りのことも、とにかくずーーっと仕事のことを考える生活になります。
そんなに辛いわけじゃないけど、これって結構疲れます。
今後の考えること
さて、この後、どんな方向に事業を成長させていこうかな、どんな事務所に作り上げていこうかな、と色々考えています。
とにかく大きくさせるのか、少数精鋭にするのか、変わった事務所にするのか、ホワイトな感じにするのか・・
多分、それを考えるうえで基礎となるのは、「仕事」というものを私がどう捉えるかだと思います。
仕事というものを、明確に「成長の機会」と捉えている人がいます。ある程度まで割り切って「お金儲けの手段」と捉えている人もいます。「趣味の延長線」という人もいるだろうし、「夢をかなえるための手段」と捉えている人もいると思う。
自分にとって仕事とは何か。なかなか明確に、端的に答えることができない。
でも、自分にとって仕事をするうえで一番重要視するものは何かというと、それは「楽しい」ことです。
子供みたいですね。
ただ、もう少し掘り下げて、楽しいって何かというと、成長出来ることも楽しいし、新しいことを知ることも楽しい、お金を儲けることも楽しいし、面白い人と知り合うことも楽しい、高いパフォーマンスを発揮できた時も楽しい、面白い案件にコミットできることも楽しい。
逆に言うと、ルーチンワークのみだと楽しくないし、全く儲からないと楽しくないし、あこぎに儲かっても楽しくないし、しっかり自分のパフォーマンスが発揮されないと楽しくない。
色々あるんだけど、それらの総体としてとにかく楽しく仕事をしたい。そういうことが実現できるためには、ある程度のしっかりした体制がないとやりたい案件できないし、お金もしっかり稼がないと楽しいを超えて苦しくなるし。
結局、それが自分にとって楽しいかどうかで、色々やりながら、ある程度の規模まで事務所を拡大させていくんでしょうね。目の前の案件だけじゃなくて、面白いネタも仕込みながら。新ネタの仕込みが重要!
あとは、顧客にとって頼りになりながらも気軽に話せるような間柄を作って、権利化だけじゃなく、権利を取った後の活用や、普段の業務体制の構築なども支援していく。知財と会計のクロスポイントを開拓していくというのも、自分の役目だと思って将来投資します。
そういえば、先日のMagicalStoneの発表では、個人的にもだいぶリスクを取ったなあと思います。当事者企業のリスクじゃなくて、私個人のリスクという意味で。
もっと距離を取って、安全なところから匿名で応援だけすることもできたんですが、思い切ってコミットして記事を書いたりしました。そういう意味では、だいぶ無駄なリスクを取った気がします(しつこいけど、当事者企業のリスクじゃなくて、私の立ち位置という意味でのリスクね)。ちょっと予想外の観点から炎上していて、炎上の火の粉がこっちにも飛んでくるんじゃないかとドキドキしています。
でも、せっかく独立して自由な立場になったんだし、応援したい人たち(ゲームが大好きでコアな上位プレイヤーたち)がいたから、思い切って名前出して記事かいちゃえ!と踏み込みました。
思い返せば、このブログを始めるずっと前、大学の時にもこっそりブログを書いていたことがあります。
その時のブログのタイトルは「ドキドキするようなイカれた人生」。
BLANKEY JET CITYのD.I.Jのピストルから取ったタイトルですが、きっとそういう人生に憧れていたんですね。
だいぶ、そういう人生になってきた気がします。うん、頑張ろう。
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Comment
いつも楽しくご活躍振りを拝読しています。弁理士1人態勢がいつのまにか3名、合計4名と拡張しつつ、新規開拓も順調のようで、
日本弁理士として海外でマーケティング、新規開拓、渉外等、すこし変わったポジションに居る私ですが、日本から発信される斬新な情報にいつも感化されます。
あっというまに新年度ですが、今後の益々のご活躍とご健勝をお祈り申し上げます。
>海外渉外弁理士さん
コメントありがとうございます。
いつも見て頂いているようで嬉しいです。
海外の情報には疎いので、いつか情報交換などさせてください!
安高先生
ご多用中、早速のコメントをどうもありがとうございます。
安高先生のご活躍振りには新しい弁理士の可能性を感じ、ワクワク致します。
日本に伺う機会もあると思いますので、ぜひともご対談できれば幸いです。
今後も楽しみに拝読させて頂きます。
ちなみに先生から見て、今回のMagicalStoneの炎上の件はどのように映り、どう思われましたか?
記事にまでしなくていいので、ここのコメントで少しで語っていただけませんか
>Strayfさん
著作権の観点で相談されたのですが、中途半端に応援するのではなく、
しっかり話を聞いて、冷静に止めるべきだったかと反省しています。
私にとっては憧れの存在でもある上位プレイヤーの皆さまからの熱い声を聞き、
私自身、冷静な判断が出来ていなかったことを申し訳なく思います。
法的に云々ではない重要な点がありました。
それでも、代表のRMT事業のみが悪く言われていますが、
自分のやっているゲームが大好きで、eスポーツ化を夢見るコアなゲームファンの集まりによる行動であることは間違いなく、
今後、クリーンな体制になったときには、やはり、また応援したいというのが個人的な思いです。