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今週の知財ニュース(ニューバランス商標、JASRAC独禁法、Google特許、カナダ著作権)

      2015/10/03

GWに入るので、少し早めに今週の知財ニュース
月曜が祝日のときは、前の週の金曜日にジャンプが出るような感じです。

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ニューバランスに18億円賠償命令 中国、商標権侵害で

近年は中国の知財意識も高まっていて、特許出願数など凄まじいのですが。
久しぶりに、昔ながらの中国知財恐るべきという感じのニュースです。

ニューバランスが商標権侵害で18億円の損害賠償を命じられました。
侵害した商標は「新百輪」、ニューバランス(新しいバランス)を中国語に翻訳した言葉だそうです。

「新百輪」の商標登録に対しては、ニューバランスが異議申立もしていたようですが、認められず、逆にそれをもって故意侵害が認定された模様。

商標権者がどういう企業で、どのような目的で商標を取得し、製品販売などを行っているのか否かも不明ですが、ちょっとひどいですね。

中国商標で、これまで最悪だった事例は「クレヨンしんちゃん」の件かなと思うのですが、それを超える事例になるかもしれません。

同法院の幹部は「中国で公平な競争をするには、知的財産権を勉強しなければならないということを海外ブランドに気づかせてくれるだろう」とコメントしている。

ということですが、”中国の”知的財産権を、まさに勉強しなければならないですね。

http://www.asahi.com/articles/ASH4Y029NH4XUHBI03F.html

 

JASRAC 独占禁止法 最高裁判決

JASRACと放送事業者との包括契約が独占禁止法違反に当たるかという点について、公正取引委員会の審決を取り消す最高裁判決がでました。

審判に差し戻されることになりますが、おそらく、独禁法に当たるので契約内容を見直すべしとする審決になるんだろうと思います。

問題となっているのは、JASRACとテレビ局等との「包括契約」。包括契約と対比するのは個別曲契約で、個別契約の場合は、使いたい曲1曲ごとに利用料を払うことになります。
JASRACは、一応個別契約のメニューも用意しているそうです。

しかし、放送の中でどの曲が流れるか、事前に把握することは困難ですし、全てを正確に報告することも難しい。また現状の契約スキームだと、個別曲契約にすると利用料が莫大になってしまう。

ということで、全ての放送局が包括契約を選んでいます。

包括契約はどういうものかというと、利用する楽曲数に関わらず、収入の1.5%を支払えばいくらでも流していいですよという、使いたい放題プランです。便利。

権利者への分配のために使用した曲を報告する義務はあるのですが、全曲報告でなくサンプリングでもOKだそうです。(キー局は全曲報告しているよう)


放送局にとっては非常に便利な契約なのですが、何が問題かというと、例えばイーライセンスが管理する楽曲を放送で使おうと思ったら、JASRACに支払う額は変わらずに、純粋にイーライセンスへ支払う額が追加されてしまう。
だったら、放送局にとっては、JASRAC管理楽曲だけを選んだほうがお得。ということで、イーライセンス等の新規事業者の進出を阻害する、ということです。


恐らく、今回のニュースを見た人の多くが、「JASRACざまあ」「JASRACが独占するのはけしからん」「やはりKASRACだ」みたいな感想を持ったんじゃないかと思います。

でも、JASRACが集中管理をしているのって、使う側としては非常に便利で、包括契約も合理的で便利なものだったりするんですよね。

今回の件は、基本的にはJASRACとイーライセンスという音楽権利管理事業者同士の喧嘩です。直接的には、利用者のための争いでもなければ、権利者のための争いでもない。
もちろんJASRACにも問題が多々あって、管理事業の中に競争原理が入ることは有益でしょうけど、あまりそれぞれの管理事業者が喧嘩して、別々のことをしだすと、使う側としては面倒だろうなという印象です。


さて、今後の審決見直しを経てどうなるのか。
究極的には、包括契約ではなく個別曲契約にしろということになるかもしれませんが、それは今は現実的ではなさそう。
そうすると、利用楽曲数に応じて、管理事業者で按分するような形で利用料を払うことになるのかなと思います。

例えば、あるテレビ局が流す音楽のうち、JASRAC管理楽曲が99%だったら、収入の1.5%の99%をJASRACに払うみたいな。

残りの1%が別の管理事業者に配分されるかというと、今のところはそうではなく、他の管理事業者とは個別曲契約だったり。また利用楽曲の報告もそれぞれに分けて報告する必要があったり。色々面倒そう。

また、利用料を99%にするために、厳密で高精度な全曲報告をしろと言われると、報告のための手続きコストのほうがかえって高くなりそう。

権利集中管理のあるべき姿は、よくよく考える必要がありそうです。

判決文

ところで、本件が自由競争を阻害している判断の根拠の一つとして、判決文には下記のように書かれています。

また,本件市場に新規に参入する他の管理事業者は自らの管理楽曲の個性を活かして供給の差別化を図るなどの方法によって既存の管理事業者と競争することとなるところ,放送事業者による放送番組に利用する楽曲の選択においては,当該放送番組の目的や内容等の諸条件との関係で特定の楽曲の利用が必要とされる例外的な場合を除き,上記の諸条件を勘案して当該放送番組に適する複数の楽曲の中から選択されるのが通常であるということができ,このような意味において,楽曲は放送利用において基本的に代替的な性格を有するものといえる。

音楽なんて、どれを使ったって別に変わらないんだよ、と。
一面事実かもしれないけど、ひどい言われようだ。

http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG28H8N_Y5A420C1EA1000/

 

グーグル、特許買い取り推進プログラムを発表–パテントトロール対策で


いやー、Googleさんは本当に面白いですね。
特許のマーケットプレイスを開設。登録された特許のうち、いい感じのものをGoogleが買ってあげますよと。


日本語のニュースのほうには「パテントトロールのような組織とやり取りする煩雑さを取り除くのがこのマーケットプレイス方式の狙い」と書いてあったので、
最初はトロールから特許を買い上げる目的なのかと勘違いしました。

つまり、トロールにいちいち対応している人的コストのほうが負担だから、文句があるならまとめて言ってこい、金払って満足するなら全部まとめて買い上げてやるよと。

原文のほうをよくみたら違いました。
事業者などの普通の権利者が特許を売りたいときに、トロールに売ったりしないで、Googleが買い取ってあげるよ、ということですね。

どっちにしても凄い。
何が凄いって、普通、特許のマーケットプレイス(売買市場)を作ろうと思ったら、売り手と買い手を繋ぐ場を作ることを考えると思うけど、そうではなく、全部自社が買うためのものを作れるということ。

トロール問題の深刻さが、日米間でだいぶ違うのかなと思います。


http://japan.cnet.com/news/business/35063829/

 

カナダ 著作権保護期間を70年へ?

カナダ政府が、著作権保護期間を現在の50年から70年に延長することを提案しているようです。

TPPでは日本と同じく、70年へ延長することを反対していましたが、仲間が減って、70年になる可能性が高まるのかな。

実際、ゼロベースで考えたときに、著作権保護期間を何年にすべきと決めるのはすごく難しい。
50年が長いのか短いのかも、それぞれの主張にそれなりの理由があって、決めがたい。
そうすると、国際ハーモという便利な言葉が一番強くって、安易に主流の70年に流されてしまいそう。


http://yro.slashdot.jp/story/15/04/25/2137235/

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