当業者とは何か? 特許の進歩性の便宜的な考え方
当業者とは何か?
初学者が最初の頃に疑問に思うことですね。
当業者とは発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であり、進歩性は、当業者が従来技術に基づいて出願された発明を容易に発明することができたかどうかによって判断されます。
うーん、じゃあこの分野だとA先輩くらいかな。A先輩がこの発明をすることが出来るかどうかで進歩性の判断が出来るかな?
という考えでは、なかなか正解にたどり着きません。
今回は、私が昔の上司に教わった当業者の考え方を紹介します。
学術的には多分間違ってるけど、便宜的な考え方としては分かりやすいんじゃないかなと思います。
当業者と進歩性の便宜的な考え方
当業者は、知識はないけど組み合わせの天才の人のことです。
そんな無垢な当業者の前に、天からフラフラと引用文献1と引用文献2が降ってきます。その二つの文献を見て、いろいろ思いつく組み合わせの中から、本願発明を組み合わせることができるのであれば、進歩性が無いということになります。
組み合わせの際に技術常識が問題になるのであれば、また天から技術常識の証拠となる文献が降ってきます。
それが当業者であり、進歩性の考え方の大枠です。
そんな天から引用文献を降らせてくる神のような存在は誰か?
もちろん審査官です。
審査官は答え(=本願発明)を知っている状態です。当業者くんが本願発明にたどり着くように、引用文献を与えるのです。
そして当業者くんは、天啓として与えられた引用文献を基に、でも答えは知らない状態で、本願発明にたどり着くことができるかどうかが進歩性の問題です。
当然、材料(構成要件)が無い場合はたどり着くことができないし、組み合わせようと思うだけの動機付けが必要となります。
どうでしょう?あくまで便宜的な考え方としては分かりやすいんじゃないかと思います。
この大枠を前提としたうえで、組み合わせられるかどうかという点の判断が難しいので、それはこちらの進歩性について解説している動画をご参照ください。
今回と同じ内容の動画はこちら
関連記事
-
ニュージーランド、ソフトウェアに対する特許権付与を禁止へ
ニュージーランド、ソフトウェアに対する特許権付与を禁止へ 最近、特にIT分野で特 …
-
知財立国研究会第3回シンポジウム ~元特許庁長官 VS 元知財高裁所長で、特許庁と知財高裁の10年を回顧する~
シンポジウムの紹介です。私も入会させて頂いている知財立国研究会にて、「打ってでる …
-
知財システム・サービス紹介シリーズ 第3回「特許ストーリー」
知財システム・サービスを紹介していくシリーズ、 第3回は、アイビーリサーチ株式会 …
-
法制度改正と特許出願(技術書典)
技術書典(エンジニアのコミケ)に、技術と法律チームで出展して、薄い本を出します。 …
-
独占性と排他性:独占排他権の誤解
特許権は、「独占排他的な権利」であると言われます。 独占的であり、かつ排他的であ …
-
知財業界の歴史と未来
”歴史を振り返って、過去から現在までの時の流れに思いを巡らせてごら …
-
特許のスコアリング・指標 ~特許の質評価・分析~
特許の評価(価値評価)と言う時、大きくは定性評価と定量評価に分かれ、定量評価の中 …
-
分割出願の審査請求の要否をどう判断するか
以前に、特許査定後のコピー分割(バックアップ分割)のおすすめを書きました。 特に …
-
サーチャー酒井美里×IPFbiz ~特許調査のプロフェッショナル~
対談シリーズ第10回は、スマートワークス(株)代表でスーパーサーチャーの酒井美里 …
-
2020年の抱負
一年の計は元旦にあり! ということで、毎年恒例、今年の目標です。 ちなみに、昨年 …
- PREV
- 2023年の抱負
- NEXT
- 知財キャリア相談 よくある質問