パテントトロール対策団体の比較 ~LOTネットワーク設立~
2014/08/21
特許連合「LOTネットワーク」が設立されました。
・米グーグル・キヤノンなど6社、特許連合設立を発表
・Asana, Canon, Dropbox, Google, Newegg and SAP Announce Formation of New Cooperative Patent-Licensing Agreement
・米グーグル・キヤノンなど6社、特許連合設立を発表
・Asana, Canon, Dropbox, Google, Newegg and SAP Announce Formation of New Cooperative Patent-Licensing Agreement
パテントトロールの標的になるのを回避する狙い。
グーグルは「LOTネットワークは特許の世界の軍縮のようなもの。連携することで特許訴訟を減らし、製品開発に集中できる」としている。
ということです。
パテントトロール対策のための団体ということで言えば、
同じような趣旨の団体等は、既にいくつかあります。
・RPX
・Allied Security Trust
・Open Invention Network
・Eco-Patent Commons
・PatentFreedom
など。
パテントトロールが多発するのは、ある意味当然ですが、
パテントトロール対策団体が多発するのは、興味深いメカニズムですね。
それぞれに違いがあるので、簡単に調べてみました。
RPX
RPXは、2008年に設立された、特許リスク軽減を掲げるサービスを提供する企業。
RPXのサービスは公開市場から特許権を買い取ることにより、会員がNPEからの訴訟リスクとコストを蒙る危険性を軽減することを目的としている。
要するに、トロールなどが購入してしまうと侵害訴訟につながる可能性のある特許を、
誰も行使することができないように買い集め、管理しておくということです。
誰も行使することができないように買い集め、管理しておくということです。
会員企業からの年会費で成り立っており、会員企業は、RPXが買い集めた特許の永続的なライセンスを受け取ることができます。
サンフランシスコに基盤を置く企業ですが、
日本からも、日立製作所、NEC、パナソニック、ソニー、シャープなどが会員になっています。
Allied Security Trust(AST)
各会員の預託基金は特許購入に利用され、購入会員には特許がライセンスされ、ある期間が経過したのち、特許は売却されるか贈与される。
趣旨はRPXと類似しているのですが、
特許購入のプロセスが異なり、ASTは法的手続きに関与せず個々の会員が入札する権利を与えられる。
会員は21社で、公開されている企業は
アバイア
エリクソン
ヒューレット・パッカード
IBM
インテル
モトローラ
オラクル(サン・マイクロシステムズが参加し、サン買収後同社が継承)
フィリップス
ブラックベリー
IBM、インテル、HPなどは、
RPXとASTの両方に加入しているようです。
Open Invention Network(OIN)
特許を買収し、、Linux、Linuxに関連するシステムやアプリケーションに対しその特許を主張しないことに同意した企業、個人に同社が買収した特許をロイヤルティー・フリーでライセンスする。
ソフトウェア分野、特にLinuxに特化しています。
2009年に、OINがASTから特許を買い取ったというニュースもあり、
なんだか複雑な関係。
IBM、ノベル、レッドハット、ソニーにより設立、
その後、NEC、フィリップスやTwitter、Cisco、富士通などもメンバーに加わっている。
その後、NEC、フィリップスやTwitter、Cisco、富士通などもメンバーに加わっている。
Eco-Patent Commons
こちらは環境分野に特化しており、
参加する企業が自らの裁量で、環境技術に関する特許を開放し、
開放された特許は、環境保全を目的とすることを条件に、誰でも自由に活用することが可能となる。
これは、パテントトロール対策とかではなく(だから、ここに含めるかも微妙ですが)、
環境保全のためのボランティア的発想。
公開されている特許も限定的のようです。
PatentFreedom
パテントトロールがどの特許で誰に訴訟を提起しているか、
という情報を調べて提供することで、パテントトロールに備えよう、
という情報を調べて提供することで、パテントトロールに備えよう、
というサービスを提供していた会社。
2014年6月に、RPXに買収されたようです。
LOT Network(LOTNET)
さて、今回話題のLOTNET、
RPXやASTとはまた大きく違うスキームのようです。
ASANA, Canon, Google, Newegg, Pure Storage, SAPなどが当初メンバーに入っています。
LOTNETの狙いは、
会員企業が有する特許を、パテントトロールに売却した場合(または転々流通してパテントトロールに行き着いた場合)、
その特許をもって、パテントトロールが他の会員企業に権利行使できないようにすること。
そのスキームは、ざっくり言うと、
「特許移転をトリガーとする会員企業同士での無償ライセンス」。
“License on transfer”と表現されています。
特許が譲渡される前に、ライセンス契約があれば、
それは特許を購入した新権利者に対しても当然対抗を主張できる、ということ利用しています。
ただし、加入した瞬間から全会員に対して無償ライセンスを提供することは、
当然ながら受け入れられないので、
そのライセンスは、特許を譲渡する瞬間(直前)に発生する、
という形にしています。
契約書をダウンロードして、署名してアップすれば、
会員になる、ということのようです。簡単!
RPXなどと比べると、特許を買い集めるということをしないので、会費も安くすみ、少なくとも他の会員企業から生じる特許については、トロールからの脅威を防ぐことができる。
皆で仲良く協力して、トロール対策しましょう、
という感じで、好きです。
ただし、もちろん会員企業にもデメリットはあります。
会員企業から特許を買おうとするときは、LOTNETによるライセンス契約が発生して、
他の会員企業に対しては特許権は無力になるので、
トロールに売るかどうかを問わず、特許を売りにくくなります。
売りにくいというか、特許権の売却価値が下がる、という感じですね。
ただし、ライセンス発生には例外を設けていて、
・譲渡がLOTNETのメンバー間で生じた場合
・譲渡がM&A等の一環で生じた場合
は、ライセンスは発生しません。
また、特許譲受人の保護の観点からでしょうが、
LOTNETのライセンシー(会員企業)が特許譲受人に対して攻撃的特許訴訟を提起した場合は、
ライセンスが終了する、
つまりカウンター特許としては、購入特許も使える、
ということにしているようです。
特許を売却するつもりの無い企業にとっては、
費用負担もデメリットもほぼなく、メリットを享受できるので、
会員企業は結構増えるような気がします。
特に特許保有数の少ないIT企業やスタートアップを中心に。
特に特許保有数の少ないIT企業やスタートアップを中心に。
※短時間で情報まとめたので、
色々足りない点や不正確な点があるかも。
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