企業知財部と特許事務所の違い【知財人材・弁理士のキャリア】
知財人材・弁理士のキャリアとして、代表的なものが企業知財部と特許事務所の2つ。
この2つの就職先について、どちらがいいのか比較して検討されることが多いと思います。
知財業界を15年ほど転々とし、企業知財も特許事務所も経験した立場から、それぞれの良いところをまとめてみようと思います。
(相対的な良いところなので、悪いところはその裏返しってことで省略します)
企業知財部の良いところ
ビジネススキル全般が身につく
一般的なビジネススキル全般を学ぶ機会が多く、汎用的なビジネス力が身につきやすいです。
新卒でこの2つの選択肢で悩んでいる場合に、他に強い理由がなければ企業知財部を選んだ方が無難な理由にもなります。
もちろん特許事務所でもビジネススキルは身につきますが、なんというか、社内調整みたいなサラリーマン力的なものとか、ちょっとした機微は違いが出るような気がします。
知財業務全体の流れが把握できる
これは結構大きい違いですね。特許事務所だと、どうしても全体の流れから一部を切り離して業務発注ということになりがちなので。
もちろん組織にもよって、スタートアップへの知財コンサルをしているような事務所ならまだカバーできる部分もありますが、
それでも企業知財じゃないと経験しにくい業務はあり、事業と知財との絡み、知財業務全体を把握できているかどうかは、能力・知見としても差が出る部分だと思います。
係争、渉外など企業知財でないとできない業務
上とも近い話ですが、やはり企業知財でないと経験のしにくい知財業務というのがあります。
中に入り込める
上手く言語化できないんですが、特許事務所やコンサルのように外から支援するのとは違って、プレイヤーの中に入り込むことで見えてきたり経験できたりするものがあるような気がしてます。
他部門との連携、異動の可能性
他部門との連携も業務上あるし、なにより他部門に異動する可能性がある。
これを良いところと捉えるか悪いところと捉えるかは人次第かもしれませんが、まだ若くて色んな可能性を残したい場合はメリットだと思います。
安定と平和
これももちろん組織次第ですが、僕の観測範囲においては経営の安定性、処遇の安定性は企業の方が高いのと、
なんというか、働いている感じとして平和でまったりした雰囲気が企業知財の方があります。
特許事務所の良いところ
仕事の業績と評価が明確
企業知財部はコストセンターであるのに対して(色々意見はあると思いますが)、
特許事務所の弁理士・特許技術者はプロフィットセンターです。
これが結構大きくて両者の性質の根本的な違いになります。
特許事務所の仕事の業績は売上という分かりやすい形で結実して、それでもって評価がされるので、とても分かりやすい。
今年のあなたの売り上げはいくらですね、なので年俸はいくらになります、と。
企業知財部だと仕事の実績も評価も、どうしても分かりにくいところがあるので、立ち回りやプレゼンが求められたりします。
頑張れば稼げる
上と関係してくるのですが、業績と評価が明確なので、能力があって頑張れば、頑張った分だけ収入が増えます。
自由
これは組織にもよるところが大きいでしょうが、私の観測範囲だと、特許事務所の方が働き方や時間の使い方が自由な点が多いです。
業績と評価が分かりやすいので、実績さえ出してくれたら働き方はある程度任せるという点があるんだと思います。
具体業務のスキルが身につく
企業知財だとビジネススキル全般や知財業務全体の流れが分かるという点との対比として、特許事務所だと明細書作成等の具体業務のスキルが身につきます。
これがあると、高齢になってからも潰しがききやすいような気はします。
様々な技術分野や企業と関われる
これも、企業知財だと一つの会社・事業と深く関われる点との対比ですね。好みだと思います。
独立の可能性
いつか弁理士として独立したい場合は、特許事務所(特に小~中規模)で経験積んだ方が必要な知見が得られやすいと思います。
と言っても、企業知財だと今は副業やりやすかったり、違う形での独立もあり得るので、そんなに大きいポイントではもはやないかも。
以上のように、それぞれに良いところがあるので、自分の性格に合うほうを選んでください。若いうちはどちらからでも転職可能だと思います。
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