商標取得の必要性と優先度(商品・サービス名/社名/機能名・技術名/マーケワード(キャッチフレーズ、概念)
商標は、基本的には商品名・サービス名について取るものですが、それに限らず、社名・機能名・技術名・マーケティングワード等についても商標取得することがあります。
それぞれの商標取得の必要性や優先度について、ざっと考え方をまとめてみました。
商品名・サービス名
事業として進めるうえでは商標必須です。
名称決める前に使用に問題ないか調査して、できれば商標取得できる名称に決めて、出願しましょう。
予算とタイミングで躊躇している場合は、何かあったら名前変えればいいという温度感の状態だと後回しも可、名前は絶対変えたくない・変えるのに30万円以上の損失が生じるという状態だと、やっぱり出願したほうがいいです。
なお、共通ブランドでのシリーズ名称(例えば、Googleマップ、GoogleカレンダーみたいなGoogle〇〇とか)の場合は、共通するブランド部分だけ(この場合だと「Google」)だけ取得しておけば基本的には足ります。(予算が十分あるならそれぞれ取ったほうが手厚いけどね)
ブランディングもしやすいし商標管理も楽なので、複数サービス展開する場合はこれがおすすめです。
ただし、〇〇の部分が単独でも商標取得できるくらい特徴的な言葉の場合は、後から他社に〇〇だけの商標取られると困るので、取っといたほうがいいです。
社名
社名の商標を取得する必要があるかどうかは、一応論点はあります。
社名を社名として普通に使うことには商標権は及ばないからです。
ただし、モンシュシュ事件のように、社名の表示も商標的な使用とされることもありますので、
社名はブランディングに一切使わない、露出しないなどの特殊な事情が無い限り、やっぱり社名も商標は取るべきです。
というか社名とサービス名は揃えたほうがお勧めです。
機能表示・技術名
さあ、この辺から悩ましくなります。
サービスの機能名に、ちょっと気の利いたネーミングを付けたり、独自技術にも名称を付けたりすることがあります。この場合、その名称に商標は必要でしょうか。
商標とは、自社の製品・サービスを他社のものと区別するために使用するマークなので、機能名や技術名はちょっと違うような気もします。
実際に機能名・技術名の表示が、商標的使用と認められたケースと認められなかったケース両方があります。
QuickLook事件、GENESIS事件
ただ、使い方によっては侵害になるし、他社が商標取得しているワードを機能名だからと言って使用するのはやはりリスクであり躊躇するので、
現実的には識別力をクリアしている限りは商標は取ったほうがいいってことになるんだと思います。
逆に、いちいち機能名とかまで商標の予算かけたくない場合は、商標が取れないような識別力の弱い機能名にすればいいことになります。
機能名での商標取得例でいうと、「コード払い」(メルカリ)、「ラクラク分析レポート」(SmartHR)、「MY通知」(マネフォ)
技術名だと、「プラズマクラスター」「ヒートテック」「アイサイト」
など。
意外に普通っぽい機能名でも商標取られてたりするので注意。
マーケティングワード
さて、一番悩ましいのがマーケワード。
キャッチフレーズだったり、新しい概念の言葉だったり商品の特徴だったり。
まずキャッチフレーズについては、審査基準の改定により、以前は認められにくかったものも登録になるようになりました。会社のビジョンなんかも同じですね。
「The Power of Dreams」(ホンダ)、「やめられない、とまらない」(カルビー)「お金を前へ。人生をもっと前へ。」(マネフォ)
など。
会社のビジョンやキャッチフレーズについて商標を取得する必要があるかと問われると、商品名サービス名に比べると優先順位は下がるけど、まあブランディングに使うなら取ったほうが望ましいは望ましいって感じでしょうか。
あとは新しい概念とか、商品・サービスの特徴みたいな言葉とか。
新しい概念的なところでいうと、例えば「リーガルテック」は複数の会社が商標を取っています。「IPランドスケープ」とか「スタートアップ知財」とかも。
商品・サービスの特徴的な言葉でいうと、
「ウェブ接客」(プレイド)、「科学的人事」(プラスアルファコンサル)、「チャットコマース」(ZEALS)とか。
この辺は、どこまで権利行使できるか微妙なところもありますが、新しい用語作ってそれを流行らせながら商標も取ると、効果的なマーケティングになるでしょう。
ただし回避自体は簡単なので、ワードチョイスとブランディングとの組み合わせが大事。取得の必要性があるわけではないけど、上手く使うと効果的って感じでしょうか。
というわけで、優先順位には差があるけど、単に新商品・新サービスの名称考えるときだけでなく、新機能・新技術・新しい特徴的なマーケワードを考えるときにも商標検討が必要ってことですね。
全て取得する必要はないけど、少なくとも調査はしといたほうがよさそう。
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