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基本特許とは何か。基本特許の例/リスト[弁理士の日記念]

      2015/10/03

本日7/1は、弁理士の日らしいです。
弁理士だけど知らなかった。

ということで、ドクガクさんの「弁理士の日を勝手に盛り上げよう!企画」に乗っかって、「知財業界のトリビア」について書きます。

何を書こうかと悩みましたが、「基本特許」について紹介しようと思います。


知財業界で仕事をしていると、何かと出てくる「基本特許」という言葉。

基本特許を取りましょうとか、この特許は基本特許なのか応用特許なのかとか。
そもそも基本特許って何なのだと。

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基本特許とは何か

改良特許や周辺特許との対比で語られますが、
「発明の効果」を実現するための、どのような実施例であってもカバーされる請求項で権利化された特許権のことを、基本特許を呼ぶと理解しています。

要するに、製品/サービスの基本となる部分を押さえている権利。
これをベースとして様々な改良(+αの追加)をすることはできるが、外すことはできない基本部分で権利化されているため、これに関する製品・サービスを実施するときには回避をすることが出来ない権利のこと。


それでは実際、どのような特許が「基本特許」と呼ばれているのか。
各業界でのいわゆる「基本特許」を集めてみました。

 

ベンズイミダゾール誘導体(ブロプレス薬品)(特許第2514282号)

基本特許を集めると言っても、例えば医薬品の分野では基本特許がゴロゴロしています。

例えば、高血圧症治療薬で有名な武田薬品の「ブロプレス」、これに関する特許は特許第2514282号です。
請求項は下記の通り。

請求項1:
1-(シクロヘキシルオキシカルボニルオキシ)エチル 2-エトキシ-1-[[2’-(1H-テトラゾール-5-イル)ビフェニル-4-イル]メチル]ベンズイミダゾール-7-カルボキシラートまたはその塩。


権利範囲が物質そのものなので、まさに基本特許。

医薬分野は、特許の重要性が他分野とは桁違いですが、これは一物一特許というか、基本特許一つで製品を押さえることが出来るということに大きく起因します。

物質特許は、まさに基本特許そのものですが、このような形で権利が取れる医薬分野や、化学・食品分野は一つの特許の影響力が大きいですね。

この分野で基本特許を挙げてもきりがないので、ここからは別分野の基本特許を紹介します。

 

iPS細胞(誘導多能性幹細胞の製造方法)(特許第4183742号)

京都大学の山中伸弥教授のノーベル賞の授賞理由となったiPS細胞(誘導多能性幹細胞)の作製に関する基本特許です。
請求項は下記の通り。

請求項1:
体細胞から誘導多能性幹細胞を製造する方法であって、下記の4種の遺伝子:Oct3/4、Klf4、c-Myc、及びSox2を体細胞に導入する工程を含む方法。


iPS細胞の製造方法の特許ですが、現状、iPS細胞を生成する上では回避できない基本特許なのだろうと思います。

 

パーフェクト特許(振り込み処理システム)(特許第3029421号

三井住友銀行が有する振込み処理システムに関する特許で、業界では「パーフェクト特許」と呼ばれ、猛威を振るったようです。
請求項は下記の通り。

請求項1:
銀行システムにおける、支払人と関連づけられた複数の関連口座を用いて振込を行う振込処理システムであって、前記複数の関連口座に振り込まれた資金を、取りまとめるための特定口座に入金処理を行う手段と、前記関連口座への振込情報を、支払人と関連付けられた関連口座の口座関連情報および/または前記関連口座を特定する番号を付加して、出力する出力手段と、出力された前記振込情報を前記特定口座の振込情報として格納する手段とを備えることを特徴とする振込処理システム。


支払人を特定するための振込み処理の方法(システム)であって、便利にやろうとするとこの形に近づき、なかなか回避が困難。

ビジネスモデル特許の中でも、かなり基本特許に近い部類のものだと思います。

 

ICカード(特公昭53-6491)

ICカードのアイデアは、1970年当時、有村国孝という青年が、古河電工を辞めて米国に行き、そこで日本より10年早いカード社会を経験し、「将来は記録容量の小さい磁気カードでは役に立たなくなるのでは」ということから発想したものだと言われています。

有村国孝さん個人の特許ですが、請求項は下記の通り。

請求項1:
能動素子を含み外部からの入力に応答して識別用の新たな信号を発生する集積回路を識別装置として本体に埋設して成るカード。

まさに基本特許ですね。

 

マピオン特許(広告情報の供給方法)(特許2756483号)

凸版印刷の特許で、業界では「マピオン特許」と呼ばれているようです。

請求項1:
コンピュータシステムにより広告情報の供給を行なう広告情報の供給方法において、広告依頼者に対しては、広告情報の入力を促す一方、予め記憶された地図情報に基づいて地図を表示して、当該地図上において広告対象物の位置指定を促す段階と、前記地図上において位置指定された広告対象物の座標を、入力された広告情報と関連づけて逐一記憶する段階とを備える一方、広告受給者に対しては、前記地図情報に基づく地図を表示するとともに、当該地図上の地点であって、記憶された広告対象物の座標に相当する地点に、図像化した当該広告対象物を表示して、所望する広告対象物の選択を促す段階と、選択された広告対象物に関連づけられた広告情報を読み出す段階と、読み出された広告情報を、前記広告受給者に対して出力する段階とを備えることを特徴とする広告情報の供給方法。


広告主が地図上の対象物に対応付けて広告情報を入力しておき、地図の利用者がその対象物を選択すると広告が表示されるというもの。

非常に基本的な内容となっており、回避するのが困難な基本特許になっているかと思います。

 

ワンクリック特許(特許第4959817号)

Amazonの有名なワンクリック特許。
こんなもので特許になり得るのかと、話題になりました。


請求項1:
アイテムを注文するためのクライアント・システムにおける方法であって、
前記クライアント・システムのクライアント識別子を、前記クライアント・システムのコンピュータによりサーバ・システムから受信すること、
前記クライアント・システムで前記クライアント識別子を永続的にストアすること、
複数のアイテムの各々のアイテムについて、
前記アイテムを特定する情報と、前記特定されたアイテムを注文するのに実行すべきシングル・アクションの指示部分とを、前記クライアント・システムのディスプレイに表示することであって、前記シングル・アクションは、前記特定のアイテムの注文を完成させるために前記クライアント・システムに要求される唯一のアクションであり、前記クライアント・システムに対して前記シングル・アクションの実行に続いて前記注文の確認を要求しないこと、および
前記シングル・アクションが実行されることに応答して、前記特定されたアイテムの注文要求と前記クライアント識別子とを、前記サーバ・システムに送信することであって、前記注文要求は、前記シングル・アクションによって示されたシングル・アクション注文要求であり、前記クライアント識別子は、ユーザのアカウント情報を特定することを備え、
前記サーバ・システムが、前記シングル・アクションによって示されたシングル・アクション注文要求と、前記クライアント識別子に関連付けられた1または複数の以前のシングル・アクション注文要求とを組み合わせ、1つの注文に結合することを特徴とする方法。


請求項は意外と長いので、どこか回避できる隙もありそうにも思えますが、1Clickによる注文機能を付けることを躊躇わせるには十分な、基本特許です。

 

3Dプリンタ(特開昭56-144478、特公平2-48422)

3Dプリンタは、1980年4月に小玉秀男氏が出願した「特開昭56-144478:立体図形作成装置」が最初であるとされています。しかしながら、この特許の審査請求はされませんでした。

未登録ですが、請求項は下記の通り。

請求項1:
上面が解放されているか、もしくは光を透過する材料からなっている容器と、該容器中に貯蔵された感光性樹脂と、該感光性樹脂中で上下に動く工作台と、該容器上部にあって感光性樹脂の表面を照射する露光装置とで構成される、立体図形作成装置。

登録されていれば、きっと基本特許になったでしょう。


その後、3D Systemsの創立者であるCherls W. Hulls氏が、1984年8月に光造形法を用いる3Dプリンタ特許「米国特許4,575,330(特公平2-48422:3次元物体を作成する方法と装置」)を出願し、これが3Dプリンタの基本特許とされています。

 

被引用数の多い特許ランキング TOP5

最後に、なかなかネットから他業界の基本特許を探すのは困難なので、よく重要特許の指標として使われる「被引用数」が多い登録特許のTop5を出してみました。

1位:被引用数291回
液浸型露光装置(特許第3747566号)株式会社ニコン

請求項1:
レチクル上に描画されたパターンをウエハ上に焼付転写する投影光学系を有し、該投影光学系のウエハに最も近接したレンズ面と前記ウエハとの間のワーキングディスタンスのうちの少なくとも一部分を、露光光を透過する液体で満たした液浸型露光装置において、
前記ワーキングディスタンスの長さをLとし、前記露光光の波長をλとし、前記液体の屈折率の温度係数をN(1/℃)としたとき、
L≦λ/(0.3×|N|)
となるように形成したことを特徴とする液浸型露光装置。

2位:被引用数269回
記録媒体(第2839879号)株式会社東芝

請求項1:
再生対象としての多数のデータ・ユニットが記録され、このデータ・ユニットがその先頭に配置されたナビゲーション・データ・パック並びにこれに続いて配置されたビデオ、オーディオ及び副映像データ・パックを含むデータ・パック列から構成されている光ディスクにおいて、前記ビデオ・オーディオ及び副映像データ・パックは、それぞれ1つのパック・ヘッダ及び1つのデータ・パケットから構成され、前記ビデオ・パケットには、MPEG規格に準拠するビデオ・ストリームのデータが格納され、前記ナビゲーション・データ・パックは、第1及び第2のデータ・パケットを含み、前記第1のデータ・パケットは、パケット・ヘッダ、これに続くサブ・ストリームID領域及び第1のパケットデータ領域を具備し、前記第1のパケット・データ領域には、前記データ・パック列の再現を制御する第1のパケット・データが格納され、前記パケット・ヘッダには、前記第1のパケット・データがMPEG規格で定められたプライベート・ストリーム2に属する旨を示すストリームIDが記録され、前記サブ・ストリームID領域には、前記第1のパケット・データを識別するサブ・ストリームIDが記録され、前記第2のデータ・パケットは、パケット・ヘッダ、これに続くサブ・ストリームID領域及び第2のパケットデータ領域を具備し、前記第2のパケット・データ領域には、前記データ・ユニットを検索する第2のパケット・データが格納され、前記パケット・ヘッダには、前記第2のパケット・データがMPEG規格で定められたプライベート・ストリーム2に属する旨を示すストリームIDが記録され、前記サブ・ストリームID領域には、前記第2のパケット・データを識別するサブ・ストリームIDが記録され、前記オーディオ・パックのデータ・パケットは、パケット・ヘッダ、これに続くサブ・ストリームID領域及びパケット・データ領域を具備し、このパケット・データ領域には、MPEGオーディオ・ストリーム以外のストリームに属するオーディオ・パケット・データが格納され、前記パケット・ヘッダには、前記パケット・データがMPEG規格に定められたプライベート・ストリーム1に属するデータである旨を示すストリームIDが記録され、前記サブ・ストリームID領域には、前記パケット・データが特定のオーディオ・ストリームに属するオーディオ・データである旨を示しているサブ・ストリームIDが記録され、前記副映像パックのデータ・パケットは、パケット・ヘッダ、これに続くサブ・ストリームID領域及びパケット・データ領域を具備し、このパケット・データ領域には、MPEGビデオ・ストリーム以外の副映像ストリームに属する副映像パケット・データが格納され、前記パケット・ヘッダには、前記パケット・データがMPEG規格に定められたプライベート・ストリーム1に属するデータである旨を示すストリームIDが記録され、前記サブ・ストリームID領域には、前記パケット・データが特定のデータ・ストリームに属する副映像データである旨を示しているサブ・ストリームIDが記録されていることを特徴とする光ディスク。


2位:被引用数269回
情報記録媒体(特許第3784879号)パイオニア株式会社

請求項1:
少なくとも一つのデータグループユニットを含むインターリーブドユニットであって、所定のデータグループに属する所定のセルに属する所定のインターリーブドユニットと、他のデータグループに属する他のセルに属する他のインターリーブドユニットと、がインターリーブされた状態で含まれる記録情報を生成する生成手段と、
前記生成された記録情報を情報記録媒体に記録する第1記録手段と、
一の前記セルがいずれの前記データグループに属するかを特定する第1識別情報を含む再生管理情報を前記情報記録媒体に記録する第2記録手段と、
を備え、
前記記録情報内の前記データグループユニットの各々が、当該データグループユニットが夫々に属する前記データグループを示す第2識別情報を含む制御情報を夫々に含んでいることを特徴とする情報記録装置。

 

4位:被引用数259回
遊技機(特許第3976440号)株式会社ソフィア

請求項1:
複数種類の識別情報を表示可能な可変表示装置を有し、特図始動口への遊技球の入賞により始動条件が成立し、始動条件の成立に基づいて前記可変表示装置で可変表示ゲームを行い、該可変表示ゲームの停止結果態様が特定表示結果の場合に所定の遊技価値を付与する特別遊技状態を発生可能な遊技機であって、
前記始動条件の成立を所定数記憶可能な始動条件記憶手段と、
前記特図始動口への遊技球の入賞により確変獲得決定乱数を抽出し、前記特別遊技状態の発生確率を通常とは異なる高確率にする確率変動状態を発生させるか否かの判定を行い、該判定結果に基づいて特別遊技状態の終了後に確率変動状態を発生させる確率変動発生手段と、
前記確率変動発生手段によって確率変動状態が発生した場合に、特別遊技状態の終了後に前記可変表示装置による可変表示ゲームの変動回数が確変報知遅延カウンタに設定した値に達したことを条件として、確率変動状態である旨を報知する報知遅延制御手段と、を備え、
前記報知遅延制御手段は、
前記特別遊技状態が終了する度に前記確変報知遅延カウンタの値をランダムに設定するランダム報知遅延制御手段を有し、且つ、
特別遊技状態の終了後に、前記始動条件記憶手段で始動条件を記憶可能な前記所定数の変動回数を超えて前記可変表示装置の可変表示ゲームが開始された後に、確率変動状態である旨の報知を行うことを特徴とする遊技機。


5位:被引用数243回
遊技機(特許第3106092号)株式会社三共

請求項1:
表示状態が変化可能な可変表示装置を有する遊技機であって、前記可変表示装置を可変開始させた後、表示結果を導出表示させる制御を行なう可変表示制御手段と、前記可変表示装置の表示結果内容を該可変表示装置が可変開始する以前の段階から予め決定しておく表示結果内容事前決定手段とを含み、前記可変表示制御手段は、特定のキャラクタを前記可変表示装置に表示させる制御を行なうことが可能であり、前記表示結果内容事前決定手段により表示結果内容を特定の表示態様に相当するものにする決定が行なわれた場合に、該特定の表示態様が表示結果として導出表示される以前の段階から、前記特定の表示態様が表示されることを前記特定のキャラクタを用いて遊技者に報知する表示制御を行なうことが可能であり、前記表示結果内容事前決定手段により表示結果内容を前記特定の表示態様に相当するものにする決定が行なわれた場合であっても当該報知をしない場合があることを特徴とする、遊技機。

 

基本特許、、かな?

 

まとめと考察

以上、知財業界トリビアということで、各業界での基本特許を集めてみました。

基本特許にもいくつかパターンがあることが分かったかと思います。

 

まず、iPS細胞や3Dプリンターのような、画期的発明についての権利。
⇒「画期的特許」

いわゆる基本発明に体現する特許。これが基本特許の典型例でしょう。

権利範囲を広くするには、当然進歩性という要件とのせめぎ合いがあります。従来技術が全く無いような、画期的な手法による基本発明は、しっかりとクレームを書けば基本特許にすることができます。

真に独創的なアイデアか、十分な基礎研究が必要とされます。


また、ICカードやマピオン特許のような、先読み発明についての権利。
⇒「先読み特許」

基礎研究がされておらずとも、技術の動向を先読みして、今後こういう課題が発生するだろう、こんな技術が可能となるだろうと。

企業が目指すべき基本特許の良い例かもしれません。


そして、ワンクリック特許やパーフェクト特許のような、当たりまえなことについての権利。
⇒「当たり前特許」

言われてみたら当たりまえで、技術的に凄いところは無いんだけど、従来例は無い。
そうそう取れるものでもないし、下手すると超ニッチで自社しか付けない機能の特許にもなりがちですが、上手くすると強力な武器になる。


こんな基本特許の取得が目指せればいいですね。

 - 特許

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