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資格スクエア鬼頭政人×IPFbiz ~ベンチャー起業、勉強のコツ~

   

対談シリーズ第17回目は、資格スクエアを運営している株式会社サイトビジット代表の鬼頭政人さんです。

鬼頭さんは、東大法学部を出て弁護士資格を取り、法律事務所⇒投資ファンドというエリートコースから、突如ベンチャーを起業した面白い方です。
ベンチャー起業に至ったきっかけと、資格スクエアというビジネスへの思い、ついでに勉強のコツについてお伺いしました。

鬼頭政人

これまでの経歴 法律事務所⇒産業革新機構

安高:鬼頭さん、よろしくお願いします。
まずは起業に至る前の経歴からお伺いさせてください。司法試験に合格して、まずは法律事務所に入ったんですよね。

鬼頭: 最初は20人くらいの法律事務所で、いわゆる普通の弁護士業務をやっていましたね。企業のお客さんが多かったですけど、週に数回裁判所に行って。

安高:事務所の仕事はいかがでしたか?

鬼頭:弁護士の仕事は肌にあっていて、楽しかったんですよ。辞めるつもりもなかったんですけど、その中でベンチャーの仕事が面白いなっていうのは感じていました。
ただ、そういう仕事になると経営者が相手になるので、法律しかできないとアドバイスできることが限られていて。知財の人も同じような感覚を持つかもしれないけど、経営者の方はビジネスのことを考えていて、法律的にこうですというだけだと話が弱いんですよね。

安高:私も前の会社で、全く同じことを感じていました。知財のコンサルをやってて、知財の観点からしか話せないとどうしても限界があるというか。私の場合は会計知識身につけようと思って会計士試験を受けて、で、結局企業の中に入ってみたいと思って、今の会社に転職したんですけど。

鬼頭:そうですよね、私が転職した動機も結構それがあって。あのときの自分を今振り返ると、アドバイザーとして、法務だけじゃなくてもっと色々分かっている人になりたくて、という思いが強かったですね。
それで、知り合いが産業革新機構にいたのですが、あるときに「今リクルートやってるから来れば」と言われてエントリーしました。転職活動は他にしていなかったんですけど、受かったら行こうと思っていました。

安高:事務所の仕事に不満はなかったんだけど、ベンチャーに関わる仕事をもっとしたい、アドバイザーとしての力を付けたいと思って、ということですね。

鬼頭:ええ、事務所の不満はなかったですね。事務所の運営自体には、もっとこうしたほうがいいというのはありましたけど。事務所の人たちはみんな素晴らしくて、職人みたいな人たちなんですよね。

安高:事務所の弁護士さんは、本当にプロフェッショナルな働き方をしますよね。

鬼頭:今振り返っても、あんな人たちってあんまりいないんだなって思います。最初の職場だから気づかなかったけど、今でも凄かったなと思いますね。

安高:事務所にはどれくらいの期間いたんですか?

鬼頭:法律事務所は丸3年、革新機構も丸3年ですね。

 

産業革新機構にて

安高:革新機構での仕事はどうでしたか?

鬼頭:最初の1年半は大型のPJに入っていて、死ぬかと思いましたw
本当に辛くて、経営者を外から連れてきて、バリュエーションを回したうえで、事業計画を立てたり。そもそもM&Aとかのフローも知らない中で事業計画を作れと言われて、エクセルをいじったこともなかったので、苦しみながら1年半はやりました。非常に難しいディールだったんで。

安高:しんどいながらも、やりたいことが出来ていた感じですか?

鬼頭:ベンチャー投資がやりたくて入ったので、最初は「M&A!?」という感じでしたが(笑、やっているうちにM&Aには色々な要素が詰まっていて勉強になることが分かったし、案件をアサインしてくれているのだからまずはこの案件を全力で頑張ろうと思ってやっていました。死にそうになりながらw
それが1年半でクロージングして、そこからベンチャー投資チームに入って、ベンチャーとか中小企業を見たり、あとはファンドtoファンドで、VCファンドにお金を入れたりとか。

安高:面白そうですね。

鬼頭:ファンドの力学とかも分かったし、今も役に立ってますね。

安高:それで、なんで起業しようと思ったんですか?

 

起業の理由 開業or起業

鬼頭:産業革新機構という会社は時限会社、つまり期限が来ると必ずなくなってしまう会社なので、その次のキャリアをどうするかは常に考えていないといけないんですね。
投資という仕事は、忙しいときと暇なときの波が激しいので、暇なときに色々次のキャリアを考えていました。ちょうどそのとき、同い年くらいのベンチャー経営者を見て、起業は面白そうだし自分が成長しそうだなと。弁護士として独立するのと悩んだんですけど。どっちにせよ独立しようと思ったんです。

安高:自分でなにかやるんなら、弁護士としてやるほうが何かと、

鬼頭:一般論としてはリスクは少ないですよね。アップサイドもありますし。ただ、世の中の多くの人にインパクトを与えられるかというと、それは難しいかもなぁと思ったんですよね。勿論弁護士として何をやるか次第だし、そもそもの考え方次第なんですけども。

安高:なるほど。

鬼頭:事業のほうがボラティリティは高いですけど、うまくいったときに世の中に大きなインパクトを与えられるし、当然自分の実入りも大きいし。

 

起業までの試行錯誤

鬼頭:それで、色んな起業のアイデアを考えていて、最終的にたどり着いたのは、勝てるところでやらないと無理だなと。

安高:なるほど、私も将来何かやりたいなーとか言うと、諸先輩方からは、好きなことをやったほうがいいとアドバイスを貰うんですけど。でも、好きなところと勝てるところって違うじゃないですか。

鬼頭:例えば、私は旅が好きなんですよ。だから旅に関わるビジネスを考えたんですけど、それこそ、現地の日本人が案内してくれるサービスとか。でもそれって、僕らがそれをやる理由がないんですよね。勝てるところで、かつ世の中の役に立てるようなところを選ばないといけないと感じました。

安高:社会的にポジティブなインパクトを与えるものをやりたいという気持ちが強かったんですか?

鬼頭:世代的なところがあるのかもしれないけど、社会貢献意欲が強いんでしょうね。

安高:色々ビジネスアイデアを考えてて、弁護士として独立という選択肢は、早い段階で切ったんですか?

鬼頭:起業しながら弁護士としてやることも考えました。弁護士ドットコムの元榮先生もそうですよね。だから、今も切ったわけじゃないですけど。

安高:資格スクエア以外にも、色々アイデアは考えたんですか?

鬼頭:考えましたよ。職業教育とかも考えたんですがなかなかビジネスとしては難しいと思って。
いろいろ考えた結果、自分が勝てる領域って、勉強か士業のところだと思って、そこで何かやろうと考えたんですよ。それで、資格スクエアのモデルはいけそうかなと。
あとは、そのモデルをある人気講師の先生のところに持っていったんですよ。そうすると二つ返事でOKを貰って。それが一番大きいきっかけですかね。

安高:鬼頭さんが資格スクエアを起業したのは、教育がしたいという強い理念というよりは、勉強という分野なら勝てるという感じですか?

鬼頭:教育も勿論興味はありましたが、世の中にインパクトを与えたいという、もう少し抽象的な気持ちも強いんですよね。教育ありきではないんですよ。

安高:なるほど、しっくりきました。

鬼頭:変えることのほうが興味があるんですよ。今は勉強のやり方を変えるということを謳っているんですけど、それは教育じゃなくても、何かを変えればいいんですよ。

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資格スクエア

安高:資格スクエアは、最初は弁理士資格から始めたんですよね。何故ですか?

鬼頭:たまたまですよ。人気講師の先生が協力してくれたからです。

安高:なるほどw オンラインで勉強するということなら、弁理士って合ってるほうなのかなと思って、だから狙ってるのかと思ってました。

鬼頭:それは結構言われるんですけど、全然ないんです。考えずに飛び出しちゃうタイプなんでw

安高:ネットベンチャーの中でも、わりと初期投資が必要そうに見えるんですけど、講師との契約はどうしたんですか?

鬼頭:講師の先生によるんですが、はじめはご協力ベースで先行投資してください、という感じでお願いしていました。初期投資は、でもまあ、言ってもかかりますけどね。システムを作るのに。

安高:起業しようという時って、資金面の準備はどうしたんですか?

鬼頭:貯金と、知人、金融機関からの借り入れですね。

安高:友人から借りるのって勇気いりません?

鬼頭:いりますよ。でも人のお金を預かるのは気が引き締まるので、そのほうがいいと思っています。

安高:資格スクエアでは、どの資格がよく売れるんですか?

鬼頭:今は司法試験の予備試験が売れてますね。先生が有名なのもあって。

安高:ちょっと意外です。予備試験のような超難関試験って、こういうオンラインじゃない伝統的な予備校を使う人が多いのかなと思って。だから弁理士とか、簿記とかのほうが売れてるのかなと思いました。

鬼頭:まあ簿記も売れますけど。

安高:単価が違いますもんね。弁理士は月額4000円ですよね、えらい安いですよね。

鬼頭:最初、安すぎて不安になるとユーザーに言われましたw 教育は、高いものはいいものって概念があるんですよ。普通の予備校が40万のところ月4000円だと100分の1ですもんね。これで大丈夫なのかとなっちゃうんですよ。

安高:価格設定って、難しいですよね。4千円だろうが4万円だろうが設定次第ですもんね。

鬼頭:教育は、ブランドなんで。ブランドは合格実績に紐づくから、合格実績は1年じゃ作れないですからね。

安高:記事で読んだんですが、独学を重視しているんですよね。

鬼頭:そうですね。勉強って、出来れば出来るほど独学で出来るじゃないですか。それってスポーツと違うところで。スポーツ選手はどんなに出来る人でもコーチを必要とするけど、勉強って、一番出来るやつは勝手に本読んで勉強してるんで。

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勉強のコツ

安高:ちょっと話を変えて、一般的な勉強のコツって、自分の中に確固としたものがありますか?

鬼頭:あまり無かったんですけど、この1年で、だいぶ言語化できてきました。ユーザーインタビューをして。

安高:それは聞きたいですね。何がポイントになるんですか?

鬼頭:最小限のものを、効率的にやる。効率的というとちょっと抽象的ですけど。
まず対象物を絞るわけじゃないですか。絞ったらそれ以外やらない。で、締め切りに向けて、どういう風にやっていくかというのを決めて、それをひたすらやる、やりきる。
あと重要なのは、暗記を疎かにしないこと。暗記を怠る人が多いので、ついつい楽な、人の話を聞くとかやっちゃうんですよ。でも資格試験は暗記しないと話にならないので。暗記の時間を絶対取ることですよ。それをやってない人が多いですね。なんとなく聞いてわかった気になる、でも書けないみたいな人が多いんですよ。

安高:私は結構そうかもしれないw 暗記嫌いなので。
やること絞って、それをスケジュールに並べてやってくってのは、まさにその通りですよね。暗記の時間を取るというのと、あとは手を動かす時間をどう取るかも重要かなと思ってます。

鬼頭:そうですね、試験の種類にもよりますけどね。

安高:手を動かすのもしんどいじゃないですか。できるだけ手を動かしたくないじゃないですか。でもやらないといけないから、いかに手を動かす時間を決めるか。それも暗記の時間を取ることと近いかもしれない。やりたくないことをやる時間を確保する。

鬼頭:確かに、それも近いですね。

安高:勉強の種類の中で、楽な勉強としんどい勉強があるので。その種類分けをして、どの時間にどの種類をやるかみたいな。

鬼頭:そうですね。勉強の強度を意識して。

安高:それなら同感です。

鬼頭:ずっとジョギングしてるんですよ。ここでダッシュしないといけないのに、ここで筋トレしないといけないのに。

安高:なるほどー。他にあります?勉強のコツ。

鬼頭:あとは、記憶のボリュームをいかに減らすか、記憶のキャパシティってあるじゃないですか。丸暗記だと絶対に忘れるって分かっているから。いかに丸暗記を避けるか。

安高:まったく同感です。

鬼頭:理想的には、すべて理解すれば暗記しなくてもいいんだけど、でもそれは資格試験では無理だから。それを埋め合わせる手段が語呂合わせなんですよ。語呂合わせって何の意味もないんだけど、あれによって記憶の容量が圧縮される。

安高:なるほど、できるだけ理解によってインプットするけど、でもどうしても暗記しないといけない部分があって、そこは語呂合わせなんかも使って記憶量を圧縮すると。それは、その通りですね。

鬼頭:でも、みんなやらないんですよ。

安高:なんというか、やっぱり考えが近いですねw 他に何かあります?

鬼頭:あとは、モチベーションの維持とか。僕はどちらかというと、3大欲求みたいなものをぶらさげてやるほうなんで、これが終わったら何しようみたいな。
私は昼飯食べる時間帯が凄く遅いんですよ。昼飯食うと眠くなって集中力が落ちるのが分かってるんで。私は朝型なので、朝に強度が高い勉強を、それこそ暗記などをして、午後ぼおっとしたときに、強度が低いやつ、人の話を聞いたり読むとか。

安高:私は、元気な朝のうちに手を動かす系をして、夜に暗記系を回してました。暗記って読むだけで楽なので。

鬼頭:あとはベタですけど、どうしても覚えられないものは書いて、五感を使って覚えるとか。あとは、自分はヤマをはるのが得意なので、そういうことはすごい考えてました。

安高:ヤマを張ったり、勉強する論点を絞ったりというのも重要ですよね。やっぱり、なんだか考えてることが近くて面白いです。

 

鬼頭さん、ありがとうございました。
勉強のコツって、表層的な部分は人によって異なるけど、土台となる考え方は凄く近くて、面白かったです。
また独立なのか起業なのかという選択で、何をリターンと考えるか、世の中的なインパクトとか社会貢献的な視点というのも、深く考えさせられました。

資格スクエアは、自分で勉強のできる人が、最大効率を求めて勉強する手段としてとても有用そうに思いました。これから資格の勉強を始めようという人は、是非チェックしてみてください。

資格スクエア司法試験予備試験ページ

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