シリーズものの商標は、全部商標取得すべき?
主要なブランドを一つ決めた後に、それに言葉を付加してシリーズものとして展開していくブランディングがあります。
例えば、
・Google Adwords、Google Chrome、Google play、Google GLASS
・Yahoo!ニュース、Yahoo!ショッピング、Yahoo!ウィジェット、
・MoneyForwardクラウド会計、MoneyForward請求書、MoneyForwardクラウド給与
・iPhone6、iPhone6Plus、iPhone6s、iPhone6sPlus、iPhoneSE
・俺のイタリアン、俺のフレンチ
のように、「ブランド名〇〇」という形ですね。この〇〇が変わる度に商標を取得すべきかどうか?
前提知識
まず基本的な前提知識として、商標権は、登録商標に「類似」する範囲に権利が及びます。
したがって、ブランド名がある程度特徴的な場合には、それに○○を付加したものも類似範囲に入ることが多いでしょう。
ただし、微妙にブランド名の部分や○○の部分を変えていったときに、どこまで類似と言えるかという類似の範囲を考えたときには、「ブランド名」だけでなく「ブランド名〇〇」の商標権も有していたほうが、権利行使ができる範囲が少し広くなることもあるでしょう。
具体的には、実際に使おうとしている「ブランド名〇〇」に権利が及ぶか、〇〇の部分を少し変えられた「ブランド名〇’〇’」に権利が及ぶか、ブランド名の部分を少し変えられた「ブランド名’〇〇」に権利が及ぶか、は、必要な類似の範囲が微妙に変わってくるということですね。
考え方
じゃあ実際はどう考えたらいいかというと、
・まず、「ブランド名」の部分が特徴的であれば、シリーズものは不要な方向に働く
全体で見たときに共通するブランド名の部分の識別力が強ければ、全体として類似と判断される可能性が高いからです。
MoneyForwardくらい長くて造語なら識別力強いですね。逆に「俺の」とかはかなり弱いと言っていいでしょう。
・「〇〇」の部分が特徴的であれば、シリーズものが必要な方向に働く
ブランド名の部分が共通しているとしても、〇〇の部分の識別力の方が強ければ、全体として非類似と判断されるケースが多くなる可能性があります。
またそれ以上に、「〇〇」単体で他社が商標登録する可能性があり、それを防ぐためという意味合いも強いです。
あとは、
・その「ブランド名○○」がサービスとしてすごく重要で、お金があるなら出してもいい
というのも考え方としてあるでしょう。
実際の登録例
上にあげた例でいうと、
Googleのシリーズものは、日本でもほとんどが出願されています。
一方でYahooのシリーズものは出願されていないもののほうが多いです(これは当時の米国Yahoo,incとの関係もあったと思いますが)。
MoneyForwardはシリーズものは出していないです。
iPhoneもシリーズとしては出していないです。(これもアイホン株式会社との関係もあると思うけど、でも普通に考えても不要でしょう。)
「俺の」シリーズは、色んな人が出していますね。これは俺のの識別力が弱いが故です。
まとめ
ということで、ざっくりまとめると、
「ブランド名」の部分がしっかり特徴的で、「〇〇」の部分がそんなに特徴的でないなら、シリーズものの商標は出さなくてもいい。
そうじゃないケースや、凄く重要なサービスでお金があるなら、出したほうが手厚いよね。
ということです。
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