IPFbiz

知財・ 会計・ビジネスニュース

知財金融のあれこれ(知財担保融資とか価値評価とかコーポレートガバナンスコードとか)

   

先日、「知財×会計の専門家3人で、知財金融とか語ろう。」という配信をしました。

日本で(たぶん)3人しかいない弁理士公認会計士のダブルライセンス二人と、元PwCの弁理士という知財と会計両方の専門家で、知財金融系のテーマで雑談するという企画です。

結構いい内容になったと思うので、メモレベルですがテキストでも残しておこうと思います。

イントロ

・知財金融は古くて新しいテーマ。20年前から話題としてはあったけど、今でも進歩せずに変わってない部分もあれば、昔の常識が今の非常識のように変わったところもある。

・3人がそれぞれどう考えているかみたいな雑談が、意識合わせにいいと思う。

 

知財金融ってなに?

・知財金融というと、知財担保融資のことを考えがちだが、より広く、金融に知財を結びつけることと捉えるべき。

・昔は確かに知財金融=知財担保融資だった。それが、知財担保融資は成立しないという認識が広まったというのがここ10年で進歩した点。

・知財を担保にするのではなく、知財を含めた事業性評価をして、評価に基づく融資をしようというのが今の知財金融の考え方。

 

知財担保融資ってどうなん?

・担保融資というのは資産を担保にして融資をすることで、返済できなかったときのリスクを軽減するもの。知財担保融資は、知財しか資産が無いスタートアップなどに、それを担保として融資をするという一見聞こえがよいスキームだが、知財は簡単に売れるものではないため担保価値がない点が問題。

・事業と担保資産である特許との分離ができていない点も問題。

・特許庁の知財金融事業も、スタート当初は知財担保融資を想定した特許の金銭的価値評価をメインとしていたが、金融庁との共同セミナーあたりから考え方を事業性評価に変え、知財担保融資を明確に否定していた。

・中国では知財担保融資が流行しているのが疑問。中国では特許の流通市場があるため換金性があり成立するのか。

・どちらが進んでいるという話ではなく、文化の違い、特許というものの捉え方の違い。

・ただ、知財担保融資も融資をする理由となる点で意義はある。それでも本当はそれを担保にするのではなく知財を評価したうえでの融資の方が合理的。

・知財評価融資という言葉がいい。

 

知財価値評価のあれこれ

・知財の金銭的な価値評価は、特許の売買、グループ企業内の移動、M&A後のPPAなどの場面で発生している。現物出資の場面なども。

・そういう具体的なシチュエーションでなく、保有している特許を評価したいというふんわりした場面では価値評価が難しい。

・インカムアプローチでの評価が基本。今は免除ロイヤリティ法が主に使われている。

・昔は利益に貢献度というパラメータをかける利益分割法(当時はこれを単にDCF法と知財業界では呼んでいた)が主流だった。それが免除ロイヤリティ法に変わったのもここ10年の変化の一つ。

・免除ロイヤリティ法は、実際に特許の売買等によってロイヤリティが免除されるという場面ではしっくりくるが、それ以外の例えばPPAの場面で用いることはどこまで合理性があるのかは正直疑問。

・評価の仕方から考えると、事業価値の中の何割かが知財価値という考え方。M&Aを検討するときに特許権だけ分離して評価するのは意味がないが、説明のために必要なこともあるのかも。

 

知財会計について

・自己創設の特許権は、研究開発の部分はすべて費用処理され、付随費用である事務所費用などは資産計上もできるが普通は費用処理している。

・一方で購入した特許はその対価で資産計上されるので、比較可能性を損ねている。財務諸表の特許権の欄の数字をみても意味のないものになっている。

・自己創設の特許権も自己評価をしてBSに資産計上できるか。注記が限界なのではないか。費用と収益の対応という理論的にはあり得るのではないか。

・財務諸表で特許情報を開示することの限界。だからこそ非財務情報である知財をどう開示するかという次のコーポレートガバナンスコードの論点。

 

コーポレートガバナンスコードについて

・ここで言っている知財投資って何?研究開発などを広く指しているなら無形資産投資という言葉の方がいいのでは。だとすると狭義の知財はあまり関係ないような。

・差別化のために何をやっているか、そのストーリーを説明しろということ。その中身が無形資産投資。

・それでも狭義の知財についても情報開示することは大事。

・コーポレートガバナンスコード報告書という、知財専門家でなく通常の投資家が見るドキュメントの中に知財の項目が入る点がこれまでとの違い。難しい指標ではなく、知財予算のような分かりやすくて比較可能性のある開示がいいのでは。

・ガイドラインができるそうなので、どういうものになるのか楽しみ。

 

※具体的に誰の発言ということではなく、僕の記憶で丸めてメモしてるものです。

ゲスト:
瀧田 証 
瀧田証知的財産事務所
弁理士/公認会計士/税理士
グランドグリーン株式会社 取締役CFO

松本 浩一郎
IP Valuation特許事務所 代表弁理士

 - 知財会計

ad

ad

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

OECD
知財脱税対策 OECD

以前からOECDが知財取引価格に新ルールの適用を検討していましたが、これらの検討 …

海外ネット配信への消費税課税、反対意見が少ないけど大丈夫?

AmazonやGoogle等による、海外から日本へのデジタル商品のネット配信サー …

岩下卓司×IPFbiz ~弁理士×税理士、特許会計事務所という形~

対談シリーズ第18回目は、弁理士・税理士の岩下卓司さんです。全国的にも非常に珍し …

4-1-3.寄与率の考え方

損害賠償額_目次へ 102条3項における寄与率は、1項・2項とは多少話 …

IP Valuation松本浩一郎 × IPFbiz ~知財価値評価の専門家~

対談シリーズ第9回は、IP Valuation特許事務所で知財の価値評価を専門に …

日本版IFRSの是非

日本版IFRSの草案が公開されました。 日本版IFRS、正式名称は「修 …

特許権侵害訴訟における損害賠償額算定についての考察 (目次)

知財権と金銭評価が関わる領域は多々あるが、訴訟における損害賠償額の算定、特にその …

1-2.民法709条に基づく損害賠償請求(特許権侵害による逸失利益とは、損害額と知財価値との関係)

損害賠償額_目次へ 故意又は過失によって特許権侵害がなされた場合は、特 …

4-1-2.実施料率認定の考慮要素

損害賠償額_目次へ 実施料率の認定に当たっては、様々な要素が考慮される …

iPodクリックホイールの特許権侵害 3億円の損害賠償額は妥当か

iPodのクリックホイール特許権侵害で、日本の発明家がAppleを訴えていた件で …