知的財産権のBS資産計上について(特許権・会計処理編)
2014/12/14
無形資産の重要性
ここで言っている「企業価値に占める無形資産」というのは、
特許出願の会計処理
特許権がどのように取得されるかにかかわらず、その特許権の本質価値自体は変わらないはずですが、実際は取得ルートによって会計処理は大きく異なることとなります。
①企業結合により取得された特許権
合併や企業買収など、企業結合により取得した特許権には、企業結合の対価(取得原価)を分配した価額が割り当てられることになります。
企業会計基準第 21 号「企業結合に関する会計基準」「取得原価は、被取得企業から受け入れた資産及び引き受けた負債のうち企業結合日時点において識別可能なもの(識別可能資産及び負債)の企業結合日時点の時価を基礎として、当該資産及び負債に対して企業結合日以後 1 年以内に配分する。受け入れた資産に法律上の権利など分離して譲渡可能な無形資産が含まれる場合には、当該無形資産は識別可能なものとして取り扱う。」
しかし、実際にはわざわざ特許権の金銭評価をしっかり行ってから企業の取得価額を決めることは稀でしょうから、PPAの際にえいやで特許権の価値を割り振ったり、諸々の都合が良いように決めていたりするのではないかと思います。
②企業結合以外の手段により外部から購入された特許権
外部から特許権を購入した場合は、「購入価額+付随費用」で資産計上されることになります。
③自己創設の特許権
取得原価主義ですね。
まず最初の問題は、審査が終わって特許査定が出るまでは、権利化されることが確定しないということです。
よって、出願費用などは、その段階で「特許権」として資産計上することは、保守主義の原則から難しいでしょう。
そうすると、特許査定が出るまでは「仮払金」などで計上しておいて、権利化されれば「特許権」に置き換えて、拒絶されれば費用処理することも考えられますが、仮払金の状態で年度を跨ぐのはよろしくないし、あまり適正な会計処理とは言い難そう。
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Comment
ちは、先日Facebookで会った薬也です。
自己取得の特許が、なぜBSに記載しないのか分からなかったのですが、この説明でわかりました。ありがとうございます。
先生は、会計士、弁理士を取得(まるでこの上のない理想)し、この後、何を目指すのでしょうか?
私の察するところ…アメリカの資格でしょう?
Facebookでもコメントありがとうございます!
資格はもう十分かと思っていて(汗
仕事でしっかり活用していきたいと考えております。