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特許庁のスタートアップ支援施策

   

最近の特許庁、やたらとスタートアップ推しです。
7月からベンチャー支援班という組織が出来たらしいので、ランチに行って話を聞いてきました。

これまでの特許庁は、どちらかというと「中小企業」の支援施策が多く、その中にたまにベンチャー支援も含まれる、という印象でした。中小企業の支援は普及支援課が担当です。

しかし、今回のベンチャー支援班は、普及支援課ではなく企画調査課の方が担当。これまでの中小企業支援とは異なる立場・切り口からのベンチャー支援です。動きとしては2年ほど前から始まっていて、それが形になりはじめています。

中小企業とベンチャー・スタートアップとでは、メカニズムが全く違うので、こういう施策を特許庁が推し進めるのは素晴らしいことだと思ってます。

応援の気持ちも込めて、これまでのアウトプットと、進行中の支援施策について紹介します。

これまでのアウトプット

国内外ベンチャー企業の知的財産戦略事例集

国内外のベンチャー企業の、事業方針と知財戦略、活用事例などをまとめたものです。

1社2ページほどの分量なので、これを見て参考にするには少し足りないですが、読み物として面白いです。

https://www.jpo.go.jp/sesaku/kigyo_chizai/files/startup/h29_01_1.pdf

 

オープンイノベーションのための知財ベストプラクティス集

オープンイノベーションの類型化や各プロセスの進め方、知財の取り扱い方など。

オープンイノベーションというものを説明するにはいい資料です。

https://www.jpo.go.jp/sesaku/kigyo_chizai/files/startup/h29_02_1.pdf

 

知的財産デュー・デリジェンスの標準手順書

知財DDの基本的なプロセスやポイントを紹介した手順書です。

DDをする側はもちろん、将来される側のスタートアップ、つまり会社売却によるExitを狙っている企業にとっても、どういう点が評価されるかを知っておく上で有用な資料。ですが、細かすぎて読むの大変かも。

https://www.jpo.go.jp/sesaku/kigyo_chizai/files/startup/h29_03_1.pdf

 

スタートアップが直面する知的財産の課題および支援策の在り方に関する調査研究

調査研究ものです。

後述する、今年度から始まる施策を進めるための前段階的な感じでしょうか。どちらかというと知財専門家側が読んでおくと勉強になります。

https://www.jpo.go.jp/sesaku/kigyo_chizai/files/startup/h29_04_1.pdf

 

その他

減免制度は、特に以前から大きくは変わってないですが、あります。

スーパー早期や、ベンチャー企業対応!面接活用早期審査、というものも今月からやってるそうです。効果はよく分からないですが、興味あるクライアントいましたら言ってください。

 

知財アクセラレーションプログラム(IPAS)

で、今年度の施策の目玉がこちらです。

ベンチャー企業を10社ほど公募して、選定された企業に対して、知財メンタリングチームを派遣し、知財戦略構築を支援するという取り組みです。
特許庁が個別の企業を支援するという点で、これまでにはあまり例を見ない取り組みですね。

メンタリングチームは、知財の専門家とビジネスの専門家がチームになるという事です。

公募説明会は終わっちゃってますが、応募の締め切りは7/23(月)と、まだ間に合います。
エクセルシート1枚に記入してメールするだけなので、興味ある企業さんは、ぜひ応募してみてください。

前述のものも含めて、全てこちらのページにまとまってます。

http://www.jpo.go.jp/sesaku/kigyo_chizai/startup.htm

 

この施策以外にも、調査研究ものもいくつか走るようです。スタートアップ企業の特許出願状況とその効果測定みたいな統計は、見てみたいですね。

繰り返しですが、特許庁がスタートアップ支援を打ち出すのは、産業政策として凄く有益だと考えています。

成功しているスタートアップが、知財もしっかり対応しているというのは何となく分かってきてますが、特許を取っていた「おかげで」成功した、と分かりやすく言えるような事例までは、まだ明確には無いと認識しています。
こういう知財支援施策の対象企業の中から、次のユニコーンが出てきたら面白いな、と期待して応援しています。

 

 - スタートアップ

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