STAP細胞、特許審査へ 登録の可能性は
STAP細胞の特許出願、いずれ取り下げられるか、少なくとも国内移行はされないだろうというのが、これまで聞いていた情報でしたが、どうやら国内移行は進めたようですね。
以前に取り下げるらしいと聞いたときは、ちょっともったいないなと思っていたので、存在の真偽はさておき、STAP細胞的なものの存在が否定出来ない現状では、合理的な判断だと個人的には思います。
とは言え、世論は厳しく、過ちを認めないのかという指摘も出てくるでしょう。
論文が不適切だったことと、STAP細胞が再現できるかどうかと、本件特許出願に価値があるかどうか/登録可能性があるかは、それぞれ別のことです。
過去の過ちは認めて反省しながら、再現の可能性はしっかりと検討しつつ、特許についてはぎりぎりまで粘ってみるというのが、きっと合理的な行動ですよね。
報道によると、共同出願人だった東京女子医大は、国内移行手続きには加わらなかったとされています。
批判をおそれた、ある意味冷静な判断ですが、どちらが正解だったか分かるのは、もう少し先のことになりそうですね。
STAP細胞特許、登録の可能性は?
以前にも、STAP細胞の特許が審査されるとしたら、という記事を書きましたが、実際に日本にも国内移行されて特許審査をするとなれば、審査に当たった審査官にとっては、たまったものじゃないでしょうね。
理研でもまだ「存在否定できぬ」と判断が出来ていないものを、どのように判断して審査すればよいのか。
以前にも書きましたが、
本来的には、①未完成発明(29条柱書)として切るかを判断すべきですが、それは非常に難しいため、実体的な判断を避けて形式的に拒絶するために、
②実施可能要件(36条4項1号)、③サポート要件(36条6項1号)の合わせ打ちで様子を見てみる、ということになるのではと予想します。
STAP細胞が本当に存在するのか、発明として完成しているのか、という観点ではなく、
少なくとも、明細書に記載の方法で当業者が実施することができない、記載が不十分だ、という観点ですね。
周りの注目を浴びる、責任のある仕事となりますが、FA期間が短縮している今こそ、他国に先駆けて参考となる審査結果を出して、日本特許庁のプレゼンスを発揮してほしいと思います。
正直、拒絶される可能性のほうが高いだろうとは思いますが、理研の一応粘ってみる姿勢は、私は好意的に見ています。
関連記事
-
-
齋藤憲彦 × IPFbiz ~Appleに特許で勝った個人発明家~ (前編)クリックホイール発明秘話
対談シリーズ第19回目は、iPodのクリックホールに関する特許訴訟で、Apple …
-
-
特許はイノベーションの指標となるか? イノベーション企業ランキング
少し前に、世界の革新企業トップ100に、日本企業が多く選ばれ、米国を抜いて日本が …
-
基本特許とは何か。基本特許の例/リスト[弁理士の日記念]
本日7/1は、弁理士の日らしいです。弁理士だけど知らなかった。ということで、ドク …
-
-
勉強会の紹介 ~ドイツ特許制度の変革と産業競争力の関係 インダストリー4.0、IoT、オープン・クローズ戦略~
面白そうな勉強会があったので紹介します。以前に対談させて頂いた湯浅さん(Tech …
-
-
”若者×知財” 「TOKYO IP COLLECTION 2015」の開催
日本の特許制度(専売特許条例)の制定130周年を記念して、特許庁主催のイベントが …
-
-
カプコン対コーエーテクモ 戦国無双シリーズ特許訴訟 特許の内容
ゲームソフト「戦国無双」シリーズのシステムが特許を侵害しているとして、カプコンが …
-
-
知財黒字が1兆円超え!その実体は?
貿易赤字が続いている中、「知財収支」の黒字額が2013年度に初めて1兆円を超える …
-
-
特許情報フェアの歩き方
さて、来週はいよいよ特許フェアですね。特許フェア初心者の方のために、特許フェアの …
-
-
IPXI(知的財産国際取引所) 取引クローズ
IPXI(知的財産国際取引所)から久しぶりの動きが。 IPXI® …
-
-
島野製作所-アップル 特許権侵害訴訟 判決解説(平成26(ワ)20422)
アップルと島野製作所の特許権侵害訴訟の判決文が公開されましたので、久しぶりに判決 …