システム開発紛争ハンドブック―発注から運用までの実務対応 レビュー
著者の一人である伊藤雅浩先生より、「システム開発紛争ハンドブック―発注から運用までの実務対応 」をご恵贈頂きました。
システム開発における「紛争」にフォーカスし、弁護士や法務担当者はもちろん、PM(プロジェクトマネージャ)のための実務上の解決指針を示した内容となっています。
以前の伊藤先生へのインタビュー記事でも書きましたが、伊藤先生がITコンサルから弁護士を目指したきっかけとなったのが、まさにシステム開発における紛争です。
自身がPMを担っていた案件が訴訟になり、弁護士への説明や紛争解決に苦労された経験から、システム開発の実体を知る弁護士が必ずしも多くない中、IT業界に詳しい弁護士としてその紛争を解決・予防できる人になろうと思ったと。
今回の著書は、そのような伊藤先生の思いとIT専門家としての経験が詰まった一冊となっています。
システム開発の各フェーズ(契約締結時、開発プロジェクト進行中、システム運用中、訴訟提起時)ごとに、起きやすい紛争の類型と、検討課題を整理し、裁判例もふんだんに掲載しています。
トラブルが発生した際に調べるのはもちろんですが、典型的な紛争類型とその解釈・課題を正しく知っておくことで、適切なプロジェクトマネジメントが行えるでしょう。
システム開発を受注する側、発注する側どちらにとっても参考になる内容ですが、やはりSierのPM/PLが読んでおくと有用な一冊だろうと思います。
目次情報
第1章 システム開発・運用に関する紛争の発生状況
Ⅰ はじめに
Ⅱ なぜ、システム開発・運用に関する紛争が発生するのか
Ⅲ システムの開発・運用時では、どのような紛争が発生し何が問題となるのか
第2章 システム開発委託契約の基礎知識
Ⅰ はじめに
Ⅱ システム開発委託契約の法的性質
Ⅲ 開発委託契約書のひな形
Ⅳ 契約の構成
第3章 契約交渉・締結段階におけるトラブル
Ⅰ はじめに
Ⅱ 契約交渉・締結段階におけるトラブルの実態
Ⅲ 契約の成立自体が争いとなる場合
Ⅳ 契約締結を拒絶したことによるユーザの損害賠償責任
Ⅴ 個別契約は書面による合意によって成立するとされている場合の契約の成否
Ⅵ 開発対象の範囲が争いとなる場合
Ⅶ 契約の法的性質・形態が争われる場合
Ⅷ 契約の法的拘束力が争われる場合
第4章 プロジェクト進行中におけるトラブル
Ⅰ はじめに
Ⅱ プロジェクト頓挫型の対応
Ⅲ 自己都合解約型の対応
Ⅳ 不完全履行型への対応
Ⅴ プロジェクトを運営する上で必要となる文書
第5章 システム運用中のトラブル
Ⅰ はじめに
Ⅱ システム障害
Ⅲ データ消失事故
Ⅳ 情報漏洩事故
第6章 知的財産権(プログラムの著作物)に関するトラブル
Ⅰ はじめに
Ⅱ システム開発における著作権の基本
Ⅲ プログラムの著作物に関わる紛争
Ⅳ 著作権以外の権利・法律上の利益
第7章 システム開発に関する訴訟手続
Ⅰ はじめに
Ⅱ システム開発時の紛争に関する主張・立証のポイント
Ⅲ 反訴の提起
Ⅳ 専門委員と鑑定人
Ⅴ 裁判所での技術説明会及び実機検証の実施
Ⅵ 調停制度の利用
Ⅶ 和解
Ⅷ 控訴
Ⅸ 債権法改正の影響
巻末資料 (用語集・裁判例一覧)
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