プライバシー権・肖像権・パブリシティ権の違いと関係
2014/12/14
・パブリシティ権と肖像権は、何が違うのか?
・パブリシティ権とは別に、肖像権の侵害とかプライバシー権の侵害の検討も必要では?
という問いに頭が混乱したので、権利の関係性について整理してみました。
まずは関係する権利の定義を、Wikipediaから。
人格権
人格権とは、個人の人格的利益を保護するための権利のこと。憲法13条後段の幸福追求権から導かれる基本的人権の一つとも理解されているが、人格権は本来私法上の権利であり私人間に適用される。
プライバシー権
プライバシーの権利は、私生活上の事柄をみだりに公開されない法的な保障と権利である。
肖像権
肖像権とは、肖像が持ちうる人権のこと。大きく分けると人格権と財産権に分けられる。プライバシー権の一部として位置づけられるものであるが、マスメディアとの関係から肖像権に関する議論のみが独立して発展した経緯がある。
パブリシティ権
パブリシティ権は、人に備わっている、顧客吸引力を中核とする経済的な価値(パブリシティ価値)を保護する権利を言う。プライバシー権、肖像権と同様に、人格権に根ざした権利である。
以上、いずれの権利も、根拠条文を問われると憲法13条ということになろうかと思います。
日本国憲法第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
関係整理1
まず、これらの権利の関係について、一番シンプルに考えると、各権利の関係は下図ような包含関係にあるかと思います。
一番広義の権利は人格権。上記の権利は、いずれも基本的には憲法13条を根拠とする人格権的な権利と言えるでしょう。
次に広いのはプライバシー権で、これは人格権に基づくもの。
その次に肖像権と氏名権が来ます。肖像権と氏名権は表現の違いによるもので、横並びに捉えて問題ないかと。
肖像権・氏名権は、基本的にはプライバシー権の一部だと考えられるので、概念的にはプライバシー権に含まれる。プライバシー権のひとつの態様としての肖像権。
そして、この肖像権侵害には、3つの態様があり、
①肖像の作成(撮影)、②肖像の公表、③肖像の営利目的利用の3つ。
3つ目がいわゆるパブリシティ権に当たるため、
パブリシティ件は肖像権・氏名権に包含されるもの。
こう整理されると、非常にすっきりします。
関係整理2
上記整理でちょっとひっかかるのは、
パブリシティ権って、プライバシー権の一部でいいんだっけ?という点。
そもそも、肖像権には、プライバシー権的な側面とパブリシティ権的な側面があるといわれています。
氏名権・肖像権は、プライバシー権からはみ出す部分もあり、そこがパブリシティ権という整理になるでしょうか。
そう整理すると、下図のようになります。

関係整理3
さらに気になるのは、パブリシティ権って、財産権的な側面もあるんじゃないっけ?という点。
その上位の肖像権にも、人格権としての側面と財産権としての側面があるように思います。
これらを踏まえると、最終的には下図のように整理されると思います。
さて、冒頭の問いですが、
パブリシティ権は、肖像権の下位概念であり、別の権利というよりは肖像権に含まれるという考え方が自然。
肖像権には、①肖像の作成、②肖像の公表、③肖像の営利目的利用
の3つの保護態様がありますが、
典型的な(狭義の)肖像権は前者の2つであり、これはプライバシー権の中に含まれる権利ですね。
そして、③肖像の営利利用目的は、プライバシーという観点からは外れる部分もあるため、プライバシー権とは別の観点から、顧客吸引力を中核とする経済的な価値を保護する権利として、パブリシティ権という整理がされた、という感じです。
いずれも、肖像権であることに間違いはないのですが、趣旨や要件が異なってくるため、分かりやすいように場面に応じてプライバシー権など具体的に明示区別しているだけですね。
ちなみに、プライバシー権は上記の趣旨から言うと、財産権的側面が強いように感じますが、財産権では差し止めが出来ないため、判例では人格権に由来するものと整理されています。
その判決(ピンク・レディー事件)では、パブリシティ権の意義に関し、(i)個人は、人格権に由来する権利として、その氏名、肖像等をみだりに利用されない権利を有し、(ii)肖像等が、商品の販売等を促進する顧客吸引力を有する場合、かかる顧客吸引力を排他的に利用する権利たる「パブリシティ権」も、上記の人格権に由来する権利に含まれると判示しました。
そして、顧客吸引力を有する者の肖像等の無断使用であっても、正当な表現行為等として受忍されるべき場合もあると判示した上で、具体的には「専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合に」違法なパブリシティ権侵害となるとの判断基準を判示し、
「専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合」として、以下の三類型が挙げられています。
①肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用する場合
②商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付す場合
③肖像等を商品等の広告として使用する場合
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