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2014年に億単位調達をした100社の特許出願状況と成果

      2018/07/23

THE STARTUPに、「2014年に億単位調達をした100社の2018年時点での検証」という記事が出ていました。

2014年に億単位の資金調達をした企業の、今時点の結果の検証です。IPO/MAなどの明確な結果が出ている企業以外にも、梅木さんの予想・推測で、IPO見込み、MA見込みなどのカテゴリー分けをしてくれているという点で、めちゃくちゃ有益な記事です。

有望なスタートアップ企業のリストというのはよく見ますが、その数年後の検証を網羅的に行っているものはあまり見たことが無かったです。

 

せっかくこんな有益なデータがあるので、それぞれの企業について、特許出願状況を調べてみました。
目的としては、IPOなど成果を出している企業と、成果が出し切れていない企業とで、特許出願状況に明確な違いがあるのかを可視化したいというものです。

手元には、各企業の出願件数データが出来ましたが、それを出すと生々しすぎる気がしたので、梅木さんが分けてくれた企業のカテゴリーごとに、何社中何社が特許出願をしているかという「割合」を紹介します。

 

IPO済み案件 13社: 62%

4年たった時点でIPOに成功したのは13社。これらの企業の特許出願割合は62%でした。

会社の事業内容によっては、そもそも特許出願が不要な会社もありますので、何かしらテクノロジーが関係しそうな会社という意味では、ほとんどの企業が特許出願しています。

思ったよりも高い数値でした。ただし、それぞれの出願件数をみると、大体は数件ベースで、特許を出しまくっている企業というのはこの中にはありませんでした。

 

メルカリ(2018/6):5,968億
ユーザベース(2016/10):1,162億
マネーフォワード(2017/9):1,073億
ラクスル(2018/5):784億
アカツキ(2016/3):551億
グノシー(2015/4):400億
uuum(2017/8):304億
gumi(2014/12):205億
Zuu(2018/6):141億
ロコンド(2017/3):118億
うるる(2017/3):69億
ログリー(2018/6):65億
イード(2015/3):45億

 

M&A済み案件 13件: 23%

同じく結果を出している企業のカテゴリーですが、こちらは23%と、数値は大きく下がりました。

MAにおいても知財の状態は評価対象になるもので、特許を出しておくことで企業価値にも良い影響を与えるとは思うのですが、
経営者の考えとしては、IPOして拡大しようとする会社よりも、MAによるExitを狙う会社は特許意識が低いのかもしれません。

 

フリル(2016/9):予想80億
Loco Partners(2017/2):予想60億(過半数)
Quipper(2015/7):実績47.7億
ペロリ(2014/10):実績35億
VASILY(2017/10):予想20億
カオナビ(2017/3):予想20億(持分適用)
カブク(2017/8):実績15億(90%)
Webpay(2015/2):予想13億
セカイエ(2014/12):実績13億
サムライト(2016/4):実績10億
マナボ(2018/6):予想10億
CuRazy(2016/9):予想7億
アオイゼミ(2017/12):予想6億

 

IPO予想企業 17社: 47%

梅木さんの予測により、IPOが手堅そうと予想されるという企業17社。これは、上記のMAによるExit済み企業よりも数値が高く、47%でした。

やはりIPOを意識すると特許出願も考えるのでしょうか。これらの企業の中には、かなりの件数の特許を出願している企業もありました。

 

☆公募500億以上:3社
Sansan
スマートニュース
freee

☆公募100億以上:10社
KAIZEN Platform
ランサーズ
あきっぱ
FiNC
ココン
Karte
トレタ
anypark
BASE
ワンダープラネット

☆公募100億以下:4社
スマイルワークス
ユビレジ
XICA
Viibar

 

IPO路線と思われるが 8社: 13%

IPO路線と思われるが、上記よりもすんなりは行かないかもしれない、と予測されるという企業8社。

特許出願割合は大きく下がって13%となりました。

 

トライフォート
ナイル
ごちクル
ビットフライヤー
A-SaaS
Paidy
Nagisa
Or:der

 

M&A予想 11社: 27%

単独でのIPOは難しいが、どこかにMAされることで活きると判断したという11社。

つまり、事業としては価値があって悪くないが、業種的・マーケット的に、IPOしても値が付きにくい会社という事でしょうか。特許出願割合は27%と、そこそこ高めです。

 

リクロ:C2B2C
レピカ(アララ):AR
ストリートアカデミー:EdTech
ライフイズテック::EdTech
スタディプラス:EdTech
ツイキャス:動画
オーマイグラシーズ:EC
Creema:EC
トランスリミット:ゲーム
スペースマーケット:シェア
シナモン:写真→AIにピボット?

 

予想保留 15社 :20%

情報不足で判断保留という15社。

特許出願割合は20%と、今回のカテゴリーの中では普通~ちょい低めくらい。

 

メディバン
リノべる
Drivemode
forkwell
IzumoBASE
インタラクティブソリューションズ
LOCUS
ietty
イベントレジスト
百戦錬磨
WHILL
リサーチアンドイノベーション
八面六臂
アイキューブドシステムズ
YOYO HOLDINGS

 

回収不能予想 18社 :28%

厳しい状況にあると判断された企業群。

特許出願割合は28%と、必ずしも低くはないです。

 

GYAZO
unda
チケットストリート
PORT
キャッシュバック賃貸
Beatrobo
AdFlow
Tokyo Otaku Mode
あそびゅー
SUVACO
スマートエデュケーション
Filmarks
ワンオブゼム
papelook
Pathee
ウェルノート
イノーバ
Between

 

倒産済み? 5社 :0%

倒産済みっぽい会社5社。

なんと特許出願割合は0%でした。

 

クーロン
okPanda
Snapeee
10sec
tab

 

総括

とりあえずのラフな統計でしたが(名寄せの問題での検索漏れもあるかも)、思ったよりも明確な特許出願状況の差が出ました。

IPO済み、あるいはIPO見込みの会社は、多くの割合で特許を出願しています。
倒産済み、あるいは厳しそうな会社は、特許出願割合は低いです。

もちろんこの結果から、特許を出せばIPOが成功する/特許出さないと倒産するという結論を導き出すのは早計で、明確な因果関係を示すには他の視点からの考察が必要ですが、統計的な相関関係はそれなりに見えたような気がします。

IPOの具体的なスケジュールを組んでいるテック系のスタートアップには、IPOまでに10件くらいの特許出願は目標にしたいですね、くらいでよく話すのですが、データとしてはそんなに間違ってなさそうです。

 

本当は、件数についてはもちろん、出願した時期(資金調達~Exitに至るまでのどの時点で出願しているか)も解析すると、より有益な考察が得られるでしょう。機会をみてやってみます。あるいは特許庁とかで調査してもらえると嬉しい。

 - スタートアップ

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