税理士会と公認会計士協会は仲悪いのに、弁理士会と弁護士会は仲悪くない理由
2015/12/14
ふと疑問に思ったので。
何書いても、どちら側からか怒られそうですが、空気読まずに書いてみました。
税理士会と公認会計士協会の不仲
公認会計士に登録して、改めて感じたのですが、税理士会と公認会計士協会って、仲が悪いです。
個人個人はそんなことないのでしょうけど、会としては不仲。
公認会計士側は税理士よりも会計士の方が優れた資格だと思っているし、税理士側は税に関しては税理士がスペシャリストだと思って、お互いに張り合っています。
不仲の原因はシンプルで、公認会計士は税理士となる資格を有し、税理士登録することにより税務業務を行うことが出来るけど、税理士は会計士業務を行えない。
つまり、資格制度としては会計士の方が格上の仕組みになっていて、会計士試験に合格して会計士になれば、追加の試験などを受けることなく税理士になることができますが、
税理士試験に合格して税理士になっても、公認会計士になろうと思ったら改めて会計士試験を受けなくてはいけません。
それは税理士側としては不満ですよね。
税理士会としては、公認会計士が税理士になるための追加のハードルを何らか設けるべきだという意見を持っています。
2013年には、税理士会が9/28に税理士法改正についての意見広告を日経新聞に出しました。
それに対抗して公認会計士協会が10/25に意見広告を日経新聞に出しています。
会計士側の逆襲としては、公認会計士の資格で税務業務が出来ない国なんて存在しないし、税務能力は会計士試験で確認済み。
逆に、公認会計士は税理士登録をしなくても税務業務を行えるようにすべきだ、というものです。
強い対立がありますが、資格制度上、対立が生じるのは仕方ないかなとも思います。
弁理士会と日弁連
でも実は、同じような構図は弁理士と弁護士の間でも生じています。
(弁護士と税理士もそうですが、ここでは割愛!)
弁護士は弁理士登録できますが、弁理士は弁理士になった後弁護士になるには改めて司法試験を受けなくてはいけません。
公認会計士試験を合格した後、会計士・税理士となる人が多いように、弁護士になった後、弁護士・弁理士となる人もいます。
ただ、私のなんとなくの感覚ですが、弁理士会と日弁連って、別に張り合ってないし、仲悪くもないと思うんですよね。
この違いってなんでしょう?
理由①:業務の奪い合いの有無
会計士の専権業務は基本的には監査で、税理士は税務です。
しかし会計士は監査法人から独立する場合、そのタイミングで税理士登録をして、税務を中心に独立することが多いようです。
つまり、税理士からすると専権業務が奪われて競争が生じます。
一方、弁理士の専権業務は基本的には出願で、弁護士は訴訟・法務など。
弁護士で弁護士・弁理士の肩書きを持つ人はいますが、かれらが出願業務をやっているかというと、それはほとんどありません。
弁護士・弁理士は、知財の訴訟がメインであって、出願・権利化業務はやはり弁理士が独占的に行っています。
つまり、特許の出願業務は技術的な知見が必要とされるので、弁護士も資格制度としては出来るけど、実質的には出来ないことが多い(弁護士は出願なんて面倒な業務やらないよって意見もあるだろうけど)。したがって、業務の奪い合いは起こらない。
逆に、税務業務は(こういう言い方は怒られるかもしれませんが)慣れれば出来る面があるので、会計士でも出来る。そして会計士が独立するときには税務業務を奪っていく。
しかも会計士・税理士の方が、レベルが高そうな感じを受ける人がいるので、税理士側は余計に腹が立つ。
こんな違いがありそうです。
理由②:試験の難易度の違い
これも、あんまりこういうことを言うと怒られそうだけど、試験の難易度の差にも違いがあるように感じます。
弁理士試験と司法試験には、はっきり言ってそれなりの難易度と大変さの差があります。
弁理士試験も当然、超難関試験ですが、最近は1年合格する人も少なくなく、試験に合格すれば、数ヶ月の研修の上、登録できます。
司法試験は、試験の前にロースクールや予備試験という壁があり、試験範囲も広く、合格後も司法修習がある。
弁理士からすると、まあ弁護士さんって大変な試験を乗り越えてきたよね、という尊敬の念があります。
だから、弁護士が弁理士登録できると言っても、同じ法律の試験だし、そんなに業務が食われるわけでもないし、別にいいかなという感覚です。
一方で、税理士試験と公認会計士試験。
合格までの大変さという意味では、実はそんなに差がないような気もします。
たぶん、会計士試験のほうが難関なのですが(というか資格制度上そうなっていないとおかしいのですが)、合格までの大変さとか時間のかかり具合でいうと、そこまで差はないのかもしれない。
その辺も、税理士側が会計士が税理士になれることに不満を持つ理由のひとつかもしれません。
理由③:出身の違い
これも多分に偏見があるかもしれませんが、
弁理士はほとんどが理系出身です。技術が好きな人が法律も勉強したという集まりです。
弁護士はほとんどが文系・法律系出身です。
だから、理由1にも繋がるのですが、なんとなくの棲み分けがあって、お互いがお互いのことを尊重している面があるように感じます。
技術的なところ、特に出願は弁理士がやるし、純法律的なところ、訴訟とかは弁護士がやるし。連携することもよくあります。
一方で税理士と公認会計士は、多分大体同じような学部出身比率じゃないかと思います。
ベースで必要となる知見も、そんなには(弁護士と弁理士ほどは)変わらないと思われます。
だからこそ、張り合いが生じるのかなと思います。
理由④:弁理士⇒弁護士はいるけど、税理士⇒会計士は少ない
これは統計を取っていないので、私の感覚値です。間違っているかもしれませんが、
私の周りには弁理士試験に合格して弁理士になった後、さらに司法試験に合格して弁護士になった人がそれなりにいます。
一方で、税理士になった後に公認会計士になった人は、あまり聞きません。
弁理士で、弁護士いーなーと思った人は弁護士になるけど、税理士で、会計士いーなーと思ってもわざわざ会計士試験をまた受けようとは思わない(年取ると監査法人に入りにくいからかな)。
なんとなくこの辺も、不仲の違いの理由のような気がします。因果関係が逆かもしれませんが。
以上、だから何だってわけじゃないのですが、ふと疑問に思ったので不仲の根本的な理由を考えてみました。
やっぱり一番の理由は業務の奪い合いですよね。
異なる国家資格なのだから、もう少し棲み分けができたらいいですね。
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Comment
まったくの素人考えですが、
「税理士:公認会計士」の関係に近いのは、
「弁理士:弁護士」よりも、
「司法書士:弁護士」とか「行政書士:弁護士」なのではないかと思いました。
お書きの内容についてはもっともだと思います。