ネットの海賊版に対策するには、ビジネスモデルを変えるしかない
今年の7月から経済産業省が主導して進めている海賊版対策キャンペーン、気になっていましたが、こちらの記事が分かりやすくまとめてくれています。
拡大し続けるオンライン海賊版被害対策サービス
「パイレシーテイクダウン」の実力
度々問題となるネット上のコンテンツのコピーやパクリや海賊版については、いずれも著作権の問題として語られますが、大きく2つに分かれると思います。
①リテラシーや倫理観の問題、グレー領域の話と、
②海賊版の話。
①については、例えばバイラルメディアやまとめにおける不正な引用だったり、ぱくり記事だったり、同人とかコミケのような話です。
こちらは、法的にもグレーなので立法論も盛り上がるし、著名人のブログで問題になったりと、話題としてはよく耳にします。
一方で、権利者の経済的損失として圧倒的に大きいのは②のほうでしょう。
今日はこちらの話を考えます。
海賊版に関しては、法的には完全に黒なので議論の余地はなく、いかに差し止めるかという純粋にエンフォースメントの話になります。
しかし実際には、ネット上の海賊版サイトやコンテンツの違法コピー・ダウンロードを止めるのは至難の業です。
これら海賊版対策に関して、いま自分が考えていることをメモしておきます。雑文ですし、これが正しいとも確信していません。
コンテンツはアーカイブされた瞬間に価値を損なう
残念ながら現状、海賊版を駆逐することは難しい。
技術的にどんな工夫を凝らしても、それは破られ、データは複製され流通してしまう。
おそらく、技術が進歩するほど、利用者のネットリテラシーが高まるほど、デジタルネイティブ世代が主流になるほど、海賊版の利用率は高まってしまうと思います。
そうすると、いかなるコンテンツも、それが複製可能な形でアーカイブされた瞬間に、どこかで不正に無料で入手する方法が出てきて、それにお金を払って購入する人は少なくなり、つまりコンテンツの金銭的・換価的な価値は損なわれてしまう。
どうも、これは避けられない流れのように感じてしまいます。
デジタル時代に対応したビジネスモデルに変えるしかない
そうすると、後はコンテンツによりマネタイズするモデルを変えるしかありません。
つまり、コピーされても問題ないような仕組みにするか、決してコピーされないもので稼ぐしかない。
海賊版サイトの大きな問題は、コンテンツが無料で手に入ることより、それが正規サイトよりも便利であることだと思います。
CDが売れないのであれば、ライブで稼ぐ、あるいはカラオケからの著作権収入で稼ぐなど、リアルタイムの場に価値を持たせることになります。
コンテンツ自体に価値を持たせるより、コンテンツを享受できる「場」に価値を持たせる。
川上さんのインタビューにあった、中国人でもネトゲにはお金を払うというコメントは非常に分かりやすかった。
ゲームも、パッケージとしてのゲームコンテンツに価値を持たせるよりも、そのゲームをユーザ同士でプレイできるネットワーク・サーバの場に価値を持たせて、そこから継続的なマネタイズを狙うのが筋が良い。
この「場」に価値を持たせるという考え方を、マンガ・アニメや音楽・小説・映画に適用するとどのようなビジネスモデルになるのか。
考えてみると面白いです。
サブスクリプションモデルだったり、会費モデルだったり、広告収入モデルだったり、コミュニケーション機能を持たせたり、生中継だったり、色々考えられそう。
ただ、そういうモデルに変わっていくと、長編大作よりも、簡単に流入が得られる簡易なコンテンツが主流になってしまいそうで(据え置きゲームからソシャゲに変遷したように、新聞からバイラルメディアに変遷したように)、それは非常に寂しい。
そうすると、何らか、そのようなコンテンツを守る手段が必要になるのですが。それは法的手段や技術的手段によるよりも、ビジネスモデルによって守るほうが筋が良いんだろうなと思います。
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