サルの自撮り著作権問題 続報と解決方法
先日、当ブログでも触れた「サルの自撮り著作権問題」について、議論に大きな進捗がありました。
米国著作権局が、著作権の成立要件について報告書を公開したのです。
『Compendium of U.S. Copyright Office Practices, Third Edition』(米国著作権局実務 第3版)という報告書草案には、以下のように書かれています。
「著作権局は、自然、動物、または植物によって制作された作品を登録することはない。」
そして、一例として「ゾウによって描かれた絵画」や「海流の作用によって表面が滑らかに形成された流木」などと並ぶ形で「サルによって撮影された写真」が明記されています。
今回の事案そのままの例が挙がっているため、米国における判断では、今回の写真はパブリックドメインとして決着がつきそうです。
可哀想なサル、じゃない写真家さん。
考察
先日の記事でも書きましたが、著作者となるためには、創作行為に実質的に関与していなければならない。
今回の報告書では、「自然、動物、または植物によって制作された作品を登録することはない。」という規範が示されたのですが、
人間が、自然、動物、または植物を「利用」して制作された作品であれば、その者が創作行為に実質的に関与していれば、著作権が認められることを否定していません。
つまり、今回の報告書に関わらず、結構なグレーゾーンがあるはずです。
例えば、アサガオの花にピンカメラを付けて、太陽を追いかけるような長時間露光写真を撮影した場合、その制作に当たってセッティングをした人には十分な思想的な創作のもと、創作に実質的な関与があり、著作者として認められると思われます。
それは、植物によって制作されたというよりは、写真家が植物によって制作させた、あるいは写真家が植物を利用して制作したと言えるから。
それでは、水に浮かぶ木片にカメラを置いてユラユラした映像を撮った場合はどうか、猫にカメラを付けて猫視点映像を撮影した場合はどうか、とか、結構難しい。
今回の事案も、直接的にシャッターを押したのがサルであっても、写真家が狙って行ったもので、サルが道具の1つとして使われたようなものであれば、写真家が著作者であると認定してもおかしくはないというのが私見です。
解決方法
それでは、自然や動物や植物を利用した創作活動をするクリエイターには、ずっとこのような著作権問題がつきまとうのか。
一つ、簡単な解決方法があります。
まず、一次著作物である作品(今回で言うとサルが自撮りした写真)に、何らかの編集を加えます。
そして、一次著作物は一切公表せずに、編集後の作品(二次的著作物)のみを公表するのです。
そうすると、クリエイターは、一次著作物の著作者と認められるか否かを問わず、編集後の著作物の著作権者であることは認められるはず。
つまり、二次的著作物の著作権を保有することを主張すれば良い。
もちろん、一次著作物は著作権法上パブリックドメインかもしれませんが、それは公表されなければ現実的に誰も使うことはできない。
一般に利用可能なものは、編集が加えられて公表された写真のみで、それを利用するには二次的著作権者(今回のケースを二次的著作権者と呼ぶかは微妙ですが)の許諾が必要となる。
凄く簡単な解決方法ですが、これでどうでしょうか?
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