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フリー素材アイドル MIKA☆RIKAの利用規約と注意点

   

多くの有名人が写真の勝手な使用に悩まされ、また多くのブロガーがブログのイメージ画像を探すのに悩んでいるところ、画期的なアイドルの売り出し方がされました。

 「私たち、無料です」
双子のHIPHOPユニット「MIKA☆RIKA」が、自分たちの写真などをフリー素材として公開する“フリー素材アイドル”を宣言し、専用Webサイトを公開したのです。


著作権について扱っている弁理士ブロガー(?)としては、興味津々です。


この取り組みは、クラウドファンディングサイト「GREEN FUNDING」での資金調達を経て始まったもの。MIKA☆RIKAの2人は、フリー素材化が自分たちの認知拡大につながることを期待しているそうです。

「肖像権にサヨナラをし、フリー素材アイドルになることを決めました」「企業の方も、個人の方も、ここにある素材を自由に使っちゃってください! 広告でも、カタログでも、同人誌でも、MAD動画でも、何でもOKです!」と大胆に宣言しています。


写真に関する権利には、大きく著作権と肖像権が存在します。
著作権は写真を撮影した人が有し、肖像権は写真に写っている人が有します。

肖像権にはプライバシー権的な権利とパブリシティ権的な権利が含まれます。肖像権を放棄しているということは、パブリシティ権も合わせて放棄していると考えてよいでしょう。
肖像権とパブリシティ権の関係はこちら


メディアによると、ゆるーい規約になっているということで、ダウンロードできる写真はいかようにも使ってOKな感じ。
実際に使ってみましょう。

こちらのサイトに、カテゴリーごとに写真がまとめられています。
気になる写真をクリックして、利用規約に同意にチェックを入れてダウンロード。簡単ですね。
ここにも貼っておきます。

outdoor_1_mikarika

利用規約の注意事項

・・さて、使うのは非常に簡単ですが、「利用規約」はちゃんと皆読んでいるでしょうか?

ゆるーい規約という評判とは逆に、結構厳しいことが書いています。
よく読んで利用しないとマズイです。

著作権や肖像権の放棄ではない

まず1条を見てみましょう。
フリー素材として、肖像権とサヨナラなんて言っていますが、これらの権利を放棄したわけでは全くありません。あくまで、条件を限定した利用許諾に過ぎません。

第1条(コンテンツの利用許諾範囲)
1)利用者は、一度購入されたコンテンツを、第2条「禁止事項」に該当する場合を除き、決められた期間(2015年12月31日まで)において回数や媒体の制限なく広告宣伝や販売促進を目的とした利用を含め、利用地域の制限なく何度でも利用することができます。
2)当社は利用者に対し、決められた期間(2015年12月31日まで)全世界的に利用できる、譲渡不能かつ非独占的な利用権を許諾するものとします。また、利用者は、同一のコンテンツまたは類似のコンテンツを第三者が利用し、また、利用した可能性があることをあらかじめ承諾するものとします。

禁止事項に該当する使い方をしたり、利用規約を守らなければ、利用許諾が取り消されてしまうわけです。


利用時期が限定されている

これ、非常に重要ですが、利用許諾の時期が2015年12月31日までに限定されています。
この期間が過ぎた後にどうなるかは分かりませんが、このままだと、2016年以降は一切許諾を受けられず、無許可の掲載継続は著作権・肖像権の侵害となってしまいます。

その場合は、利用した全ての画像を差し替える必要があるので、どこに利用したかはしっかり情報として残しておく必要があります。企業の商用サイトなどに使うにはリスクが大きいですね。


トリミングや加工編集は禁止?

2条の禁止事項として、下記条項が挙がっています。

3)各種コンテンツおよび各種サービス上のコンテンツの利用に関する諸注意に従わず、または、特定の被写体の切り抜きやトリミング、または加工・編集することなどにより、被写体の肖像権、パブリシティ権、商標権、著作権その他の権利を侵害するような利用をすること。

まず、利用権を許諾すると言いながら、肖像権や著作権を侵害する利用を禁止するという意味からよく分かりませんが、この条項によると、トリミングや加工・編集は著作権等の侵害により禁止されていると読めます。
もちろんこれら行為は同一性保持権の侵害であって、許諾なく行うことはできませんが、「MAD動画でもOKです!」なんて言ってるんだから、当然に許諾の範囲に含めてよいものでは??


MIKA☆RIKAのイメージを損ねたり不快にさせてはダメ。

これも2条の禁止事項に挙がっていますが、被写体のイメージを損なうような利用をすることや、被写体が不快と感じる可能性がある利用なども禁じられています。
他の条項にあるような、公序良俗に反する利用を禁じるのは分かるけど、これはちょっと厳しいのでは。
同人やMADに使うのは難しそう。


コンテンツ利用規約全文は、下記に掲載しておきます。

アイドルの売り出し方としては興味深く、利用が広がれば認知拡大に繋がると思うのですが、
ちょっと今の厳しい利用規約では、企業が商用利用するのは少しためらわれるし、一時の話題にはなっても、あまり広まっていかないように思います。

どうぜなら、HPにアップする写真に関しては著作権・肖像権等の権利を一切放棄するくらいの、本当にゆるーい規約にしてしまえばいいのに。


コンテンツ利用規約

株式会社スタッフ・プラス(以下「当社」といいます)が提供するMIKA★RIKAコンテンツ(以下「コンテンツ」といいます)をご利用頂くには、以下のコンテンツ利用規約(以下「本規約」といいます)にご同意頂くことが必要です。コンテンツを利用された方(以下「利用者」といいます)は、本規約の内容にご同意いただいたものとみなしますのでご注意ください。

第1条(コンテンツの利用許諾範囲)
1)利用者は、一度購入されたコンテンツを、第2条「禁止事項」に該当する場合を除き、決められた期間(2015年12月31日まで)において回数や媒体の制限なく広告宣伝や販売促進を目的とした利用を含め、利用地域の制限なく何度でも利用することができます。
2)当社は利用者に対し、決められた期間(2015年12月31日まで)全世界的に利用できる、譲渡不能かつ非独占的な利用権を許諾するものとします。また、利用者は、同一のコンテンツまたは類似のコンテンツを第三者が利用し、また、利用した可能性があることをあらかじめ承諾するものとします。

第2条(禁止事項)
利用者は、コンテンツを以下の用途に利用することができないものとします。
1)コンテンツを営利・非営利の目的を問わず、第三者に転売、配布、譲渡、貸与、送信すること、その他第三者に使用権を譲渡し、貸与し、また担保設定すること。ただし利用者が制作した広告等の成果物を広告主に納品し、ご利用いただくことはこの限りではありません。
2)コンテンツを流用して本サービスと類似のサービス、コンテンツと類似の製品の制作・販売を行うこと。
3)各種コンテンツおよび各種サービス上のコンテンツの利用に関する諸注意に従わず、または、特定の被写体の切り抜きやトリミング、または加工・編集することなどにより、被写体の肖像権、パブリシティ権、商標権、著作権その他の権利を侵害するような利用をすること。
4)コンテンツの全部または一部を商標、商号、サービスマークその他商品等表示等の全部または一部に利用し、登記、登録すること。
5)コンテンツの被写体の名誉や信用を毀損する利用、誹謗中傷目的、その他不法な用途のためにコンテンツを利用すること。被写体が人物である場合、当該被写体が特定の宗教的、政治的信条を有するかのような誤解を与える方法で利用をすること。または特定の病気の患者であるかのような誤解を与える方法で利用すること。被写体のイメージを損なうような利用をすることや、被写体が不快と感じる可能性がある利用、またはそれに付随する広告・チラシなどに利用すること。
6)コンテンツの被写体となんらかの提携、協力関係にあるものと誤認を生じ、また被写体が利用者または第三者の営利活動、サービスを認知もしくは支持していると誤認を生じさせる可能性のある利用をすること。
7)コンテンツを公序良俗に反する目的で利用することや、公序良俗に反するか否かを問わず、ポルノや風俗産業、悪徳商法、アダルトサイト、出会い系サイト、暴力団関係などのために利用すること。
8)別途コンテンツごとに設定される特別な制限に反して利用すること。

第3条(免責事項)
当社は、コンテンツに関する品質管理には、十分留意しておりますが、以下のいずれも保証せず、かつ以下のいずれかの事由に起因して利用者その他第三者に発生した紛争および損害について、一切の責任を負わないものとします。
1)利用者は、コンテンツを利用する前にコンテンツの内容(画像の向き、色調、コントラスト等を含みます)およびコンテンツに付されたキャプション、キーワード、説明等およびその正確性については自己の責任において確認するものとし、利用者がこれを怠ったことにより生じた損害、または、第三者との間に発生した紛争。
2)利用者は、コンテンツの被写体に関する著作権、肖像権、商標権および意匠権などの権利処理(利用者が購入したコンテンツを改変、変形した場合に必要となる被写体の権利処理を含みます)に関し、自己の責任において確認するものとし、利用者がこれを怠ったことにより生じた損害、または、第三者との間に発生した紛争。
3)当社は利用者に対し、コンテンツに関して、特定目的への利用に関する商品性、合目的性および適合性を有することを保証しないものとし、それに関する第三者との間に発生した紛争。
4)コンテンツ利用の結果完成した各種成果物を通じて、利用者が発信または提供する情報の内容について、またそれに関して第三者との間で紛争が生じた場合や第三者に対して損害を与えた場合などにかかる損害、不利益および債務。
5)利用者が本規約に違反する目的や方法でコンテンツを利用したり、当社が事前に利用停止を通知したコンテンツを利用したことから発生する損害、不利益および債務。
6)当社のコンテンツを利用することにより発生しまたは発生しうる利用者の端末機器、通信機器、記録媒体およびソフトウェア等に対するウィルス等の影響およびデータの破損。

第4条(著作権およびその他の権利)
1)利用者に利用許諾されたコンテンツ(画像、同画像に付された説明およびキーワードほか関連する情報を含みます)についての著作権、その他の知的財産権は、利用者に譲渡される。
2)利用者は、コンテンツの被写体に含まれる人物、物品、場所に関する肖像権、商標権、著作権、意匠権、利用権その他の諸権利を有しておりません。

第5条(コンテンツ利用許諾の終了)
当社は、利用者が以下の事項に当てはまる場合、何らの催告・通知等を要することなくコンテンツの利用許諾を取り消すことができるものとし、以後、利用者はコンテンツを一切利用することができません。 この場合、利用者は当社の指示に従ってコンテンツおよびその複製物の一切を破棄すると共に、かかる利用者の行為により当社または第三者に生じた損害があれば、その一切の損害(訴訟費用および弁護士費用を含みます)を、利用者、または利用者が業務上コンテンツを利用された場合にはその雇用者や所属団体が賠償することに同意するものとします。また、万一利用許諾の制限、停止、中止または終了によって利用者および第三者に生じた損害または利用者と第三者との間で生じた紛争については、理由を問わず当社は一切責任を負わないものとします。
① 本規約に違反した場合。
② 当社への申告、届出内容に虚偽があった場合。
⑧ その他当社との信頼関係が失われるような行為があった場合。
⑨ 反社会的勢力またはこれに準ずるもの(以下「反社会的勢力等」といいます)であること、または違法献金、脅迫的行為、信用毀損行為、業務妨害行為、詐欺行為、組織的犯罪行為、法的責任を超えた不当な要求行為に関与したことが判明した場合。

第6条(その他)
1)本規約の成立、効力履行および解釈に関しては日本国法が適用されるものとします。
2)本規約の条項の一部が、法令上無効であるとされた場合であっても、かかる無効とされた条項以外の本規約の各規定は、引き続き有効なものとして当社および利用者に適用されるものとします。
3)当社が提供する各種コンテンツおよび各種サービスのご利用に関連して、利用者と当社の間において問題が生じた場合には、双方誠意を持って協議するものとします。協議しても解決しない場合、東京地方裁判所を専属管轄裁判所とします。

第7条(規約の改正)
利用者は、当社の予告なく規約の変更があることを了承するものとします。変更後の本規約は本サイトに掲載されたときから利用者に適用されるものとします。
以上

フリー素材・画像全般の注意

他にも多くのフリー画像サイトなどがありますが、やはり色々と注意が必要で、利用規約はしっかり読んでおくべきです。

「フリー」という言葉自体がふんわりとしているので、
利用は自由(フリー)だけど使い方によっては料金が発生しますよ、というものだったり、
料金は無料(フリー)だけど、利用場面や方法は制約がありますよ、というものだったり。

特に商用利用を禁止しているものはよくあるので、注意が必要です。

また、上のほうで述べた通り、人物が映っている写真には、著作権と肖像権(パブリシティ権含む)の両方の権利が存在します。

著作権の許諾は取れていても肖像者の許諾が取れてなかったり、
逆に肖像者がOKと言っていても撮影者の許諾が取れてなかったり、
また使い方に微妙な制限がかかっていたり。

特に人物が映っている写真には注意が必要です。

また、写真に写りこむ建築物の著作権については、権利制限がされていますが、商慣行的に文句を言われたり、また美術の著作権には権利制限が及ばなかったりと、写真の客体にも注意が必要なことがあります。

Web制作に関わる人は、このあたりの知識は入れておいたほうがいいですね。

ちなみに、画像は他サイトからの埋込(エンベッド)ならOKという説もあります。リンクと同じだという主張です。
動画像のエンベッドと著作権

 

MIKA☆RIKAに関しては、本公開のタイミングに合わせて利用規約も緩く改正されたらいいな。そしたら応援します。

 - 著作権

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