知財脱税対策 OECD
2014/09/26
以前からOECDが知財取引価格に新ルールの適用を検討していましたが、
これらの検討を受けて、先日、OECDが多国籍企業の節税を防ぐための対応策について、報告書を公表しました。
GoogleやAmazonなどの、知財を利用した行き過ぎたグローバルタックスマネジメントが問題となっていますが、それに対する対応策や、海外ネット配信への消費税課税などが検討されています。
実際の報告書はこちらから。
報告書には課税逃れを防ぐための対応策について、7項目がまとめられています。強制力があるものではないですが、日本でも今回の対応策を受けて、27年度税制改正に反映される運びになるそうです。
・Address the tax challenges of the digital economy (Action 1);
・Ensure the coherence of corporate income taxation at the international level, through new model tax and treaty provisions to neutralise hybrid mismatch arrangements (Action 2);
・Counter harmful tax practices (Action 5);
・Realign taxation and relevant substance to restore the intended benefits of international standards and to prevent the abuse of tax treaties (Action 6);
・Assure that transfer pricing outcomes are in line with value creation, through actions to address transfer pricing issues in the key area of intangibles (Action 8);
・Improve transparency for tax administrations and increase certainty and predictability for taxpayers through improved transfer pricing documentation and a template for country-by-country reporting (Action 13);
・Facilitate swift implementation of the BEPS actions through a report on the feasibility of developing a multilateral instrument to amend bilateral tax treaties (Action 15).
まだ読み込めていませんが、以下のような内容が提示されているようです。
- 海外ネット配信されるデジタルコンテンツについては、消費税のかけ方など4つの選択肢を提示
(1)金融機関を通じた源泉徴収の手法
(2)課税の根拠となる「恒久的な事業拠点」の定義の拡大
(3)サービスの消費地での消費課税
(4)サービスから得たデータによって生まれる価値に課税 - 知財の移転価格については、将来予測利益に基づく算定手法を導入(これは以前のブログで紹介した内容ですね)
- 2国間の税制の違いからいずれの国でも課税されない問題には、どちらかで課税するよう法律改正すべき
- 企業グループ内の国境を越えた取引について、税務当局へ年1回報告することを義務付ける
- 課税対象となる事業拠点を置かずに事業を行うことを可能にする現行ルールを変更する。国際的な電子商取引を展開する企業も、売り上げが発生した国で計上を求める
海外ネット配信への消費税課税については、以前から日本でも議論されていて、ほぼ既定路線だったはずなので、本報告書はその後押しになるのでしょう。
2国間の税制の違いを利用した脱税については、これがOECDの立場から最も対策を打ち出すべきところですが、具体的にどのような形になるのか、注目です。
知財の移転価格を将来利益に基づいて算定するという点は、以前のニュースでもあったように、知財移転価格にDCF法を共通ルールにするということ。さらにグループ内取引の税務当局への報告義務が発生するとすれば、実務は複雑化しますが、移転価格税制の仕事は儲かりそう。
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