知的財産統計会合 トピックス
知的財産統計会合に出席してきました。
知的財産統計会合は、政府関係者、学識経験者等を中心に知的財産と経済・統計に関する情報交換や議論を行う場として2003年から毎年各国で開催されており、今回で12回目を迎えます。
本年は、日本のOECD加盟50周年記念の一環として、初めて日本で開催されました。
ホテルオークラで開催され、5極特許庁の技監レベルが集まり、想像していたよりも豪華な場でした。
知財と経済がテーマで、アカデミックな論文等が発表される場ですが、最初に5極特許庁の代表によるパネルディスカッションがありましたので、興味深かったトピックだけ紹介します。
KIPO ポジティブ審査
KIPOの審査取り組みの一環として、ポジティブ審査という制度があるそうです。
審査官から出願人へのコミュニケーションを積極的に行い、適切な権利範囲やクレームについてアドバイスを行うというもの。
日本でも、補正の示唆という形で拒絶理由通知に付記されることがあり、また面接審査の場においてアドバイスのようなものをくれる審査官もいます。
しかし、これは審査官による個人差が大きく、補正の示唆もどこまで踏み込んで書いてよいのか審査官側の悩みもあるでしょう。
KIPOのように制度化してしまうと、中小企業にとっては有意義だと思います。
KIPO IP Financing(知財金融)
主に中小企業の資金調達のために、IPを担保にした資金の調達を積極的に進め、そのための知財評価レポートを国の負担で行っているそうです。
知財金融のための取り組みは、日本でも特許庁や地方銀行が主体となって進められています。
ちなみに、本サイト名の「IPF」はIP Financeから来ていて、知財金融は非常に興味があるところです。それぞれの国での成果がどう評価されていくのか、気になります。
知財金融の一番の課題は、知財の価値評価だと考えています。知財の価値は相対的なもので、また換価性も低い。
知財を担保にされても、いくらの価値が妥当するのか判断が難しいものです。
定型的な評価レポート作成の費用を国が負担するだけではなく、価値評価のスキームをオーソライズしたり、流動性を高める仕組みを用意するなりの制度設計が必要かなと思います。
各国の直面する課題
モデレータから、各特許庁が直面している一番の課題は何か?という質問がありました。各国の動向を端的に知る上で非常に良い質問だったと思います。
それぞれの国の回答がこちら。
・EPO:増加する出願件数と言語問題への対応
・JPO:審査の品質 -人とITシステム-
・KIPO:R&Dの質と特許情報の活用、特許の質的管理
・CIPO:審査の質と量の問題、イノベーションと特許制度
・USPTO:皆さんと同様
なんとなく、韓国特許庁が知財の事業への活用に対して一番真剣に考えているように感じました。
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