知的財産イノベーション研究の展望: 明日を創造する知財学
日本知財学会から、「知的財産イノベーション研究の展望: 明日を創造する知財学」と題して書籍が出版されました。
日本知財学会の10周年記念事業として出版されたものです。
知的財産、イノベーション、またそれらの交錯する領域に関する論文を募集し、そのうち独自性が高く学術研究の発展に貢献することが期待される14本を厳選し、収録された書籍となっています。
有り難いことに私が以前に共同で執筆した論文も収録されているので、宣伝させて頂きます。(本が売れても私に印税は入りませんが)
私の論文はともかく、他のものはなかなか興味深い内容が多いです。
特に気になったものをいくつか抜粋紹介します。
「特許制度のモデル化とソフトウェア特許の改善」 吉田哲・久保浩三
特許制度のバランスについて論じられています。
進歩性を政策レバーとして、特許制度の利益と不利益をモデル化した上で、特許制度のバランスが保たれていない分野として、ソフトウェアの例が挙げられています。
本稿では、ソフトウェア分野は他分野よりも進歩性を高く設定すべきと結論付けられています。
Google等もソフトウェア分野の進歩性レベルを上げるべきというロビイングをしており、その根拠となり得るか興味深いです。
「知識創造性を高めるモチベーション・マネジメントの研究」 金間大介
職務発明制度が改正される中、タイムリーな研究です。
内発的モチベーションと外発的モチベーションなど、いくつかの観点で研究者のモチベーションに与える影響を研究しています。
法改正により、金銭による対価請求権ではなく、様々な形での報奨が認められ得る可能性があるなか、どのような社内制度にすると研究開発のモチベーションが上がるのか、一助になります。
知的財産組織の発展モデル及びイノベーション効果の計測方法 -特許と標準の統一的マネジメント- 田村傑
知財戦略を実現するための組織イノベーションと、イノベーション活動全体に与える影響の検証について。
企業の戦略を考える上で、組織論は欠かせません。
知財組織である知的財産部は、どのような役割を担うべきなのか、興味深い内容でした。
などなど。
ちなみに私の論文は、安彦弁理士と共著で、
特許権の広さをテキストマイニングで自動解析し、スコアリングする手法についてです。
転職して私の手からは離れてしまいましたが、発展すれば面白い内容だと思います。
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