弁護士ドットコム 成功の要因
弁護士でありながら独立起業をし、マザーズ上場にまで「弁護士ドットコム」を成長させた元榮太一郎さん。
最近は弁護士ドットコムニュースのメディアとしての成長も目覚しく、注目を集めています。
そんな弁護士ドットコムがどのように設立され、成長してきたのか。元榮さんの書籍が非常に興味深かったです。
今では様々なサービスを提供している弁護士ドットコムですが、リリース当初の事業企画は、価格ドットコムを参考にして、弁護士の相見積もりを取れ、気軽に弁護士を利用できるようにしようという単純なものでした。
弁護士とITという相容れないものの組み合わせであって、当時は類似のサービスもなく先見の明のある考えですが、
弁護士法の制限もあり紹介手数料を得ることもできず、収入はバナー広告のみで、正直そんなに儲かりそうには思えないものです。
しかし、この事業アイデアを思いついてからの元榮さんの行動が素晴らしい。
アイデアを考えてすぐに所属事務所を辞め、収益化の見込みもないまま独立起業。
そして、協力してくれる弁護士やITエンジニアを周りで見つけ、段々とサービスを拡大していきます。
大きな進展としては、
・ヤフー知恵袋のような無料相談を弁護士が答えてくれるという「みんなの法律相談」で、ページとアクセス数の拡大を図り
・弁護士ドットコムニュースにより、発信力とアクセス数を拡大する
そして、サービスを拡大し、登録弁護士の数を拡大しながら、
・みんなの法律相談の過去ログを閲覧できる有料会員サービスや、
・有償による弁護士広告
といったマネタイズの仕組みを考え出していきます。
今出来上がっている「弁護士ドットコム」を見ると、
サービスのアイデアもマネタイズの仕組みも仕上がっていて、もはや他の追随を許さないポジションにあるように見えます。
しかしリリース当初は、全くそんな状態には無かったし、少なくとも客観的に見て、大きく成功しそうには見えないものでした。
そう考えると、弁護士ドットコムが成功した大きな要因は、事業アイデアだとか、元榮さんが弁護士であること、というよりは、
元榮さん自体の行動力と人的魅力であろうと思います。
自分のアイデアと理念を信じて、即行動を起こし、周りの協力者を得て、サービスとアイデアを拡大していく。
書籍中の他のエピソードを見ても同じ感想を持ちましたが、やれば出来る・なんとかなる、を地で行っている人だと思いました。
ただ、ちょっと真面目な話をすると、弁護士ドットコムが無事成長できた要因は、
元榮さんが弁護士としての自分の事務所も構え、そこからの安定収入と弁護士事務所経営のノウハウと人脈を得ていたことにあろうかと思います。
つまり、他に収入のない人が同じことをやろうとしても、赤字が数年続いた時点で、将来の見込みもなければ資金も集められず、頓挫していそうです。
また、弁護士としての経験・知見がない人が同じことをやろうとしても、そもそも登録弁護士の数を集めることがまず難しく、業界知識がなければサービスを上手く回すことも難しいでしょう。
肝心なのは、
自分の専門性に関係するんだけど、ちょっと違う分野か違うやり方で、
他の収入源と知見・経験を積む場を持ちながら、
人脈を活かして起業をする。
これって、先日対談をしたIP Forceの成田弁理士と同じですね。
色々と考えさせられます。
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