巨人アップルに特許で立ち向かう島野製作所
日本の中小企業である島野製作所がにわかに話題になっています。
時価総額が1兆ドルを超えようとする世界最大企業のアップルに対して、サプライヤーの立場である中小企業の島野製作所が、特許侵害で訴訟を起こしているのです。
中小企業でもAppleと戦える。 そう、特許ならね。
事件の背景は他のニュースに詳しいですが、ざっくり言うと、
技術力に優れた島野製作所が納品する部品を、アップルが他の企業に流して安く作らせ、島野製作所との契約を打ち切ろうと不当な圧力をかけたということ。
サプライヤーはどうしてもパッケージメーカーに対して弱い力関係になり、値下げを要求されたり、他のサプライヤーとの競争に晒されたりするものです。
しかし、技術を盗まれ他のサプライヤーに流されたとあっては、黙っているわけにはいかない。
と言っても、技術流出の明確な根拠を出すのは難しく、何か他の武器が無ければ泣き寝入りになってしまいます。
そこで強力な武器になるのが特許ですね。
中小企業が持つ特許の威力
島野製作所は日本では3件しか特許を持っていません。
米国で取れている権利は1件だけだそうです。
一方のアップルは、2013年だけで1715件の特許出願をしており、非常に特許に強い企業です。
しかし今回の事件で争いになるのは、アップルが他のサプライヤーに作らせているピンが、あるいはそれを使ってアップルが作っているコネクタが、島野製作所の特許を侵害しているかどうかという点だけ。
1件の米国特許でも十分な効果を発揮します。
少し前には、日本の個人発明家がアップルを訴えたという事件もありました。こちらも、個人発明家が持ち込んだ技術をアップルが勝手に採用したというものです。
こうした事件を見ると、特許の持つ威力を、シンプルに実感させられます。
大企業同士の争いになると、パテントポートフォリオだ、クロスライセンスだ、オープンクローズ戦略だ、と話が複雑になり、特許を取る意味は何だろうとか、特許制度は産業発達に寄与しているのかとか、哲学的な考えに悶々としてしまうのですが、やはり自社の技術を守る上で、特許は非常に強い武器になります。
目の前に一つの優れた発明があって、「これは特許を取ったほうがいいですか?」と聞かれたら、「是非取りましょう!」と答える。
これは中小企業だとシンプルに当てはまるし、やっぱり大企業でも基本的にはこの通りなんだと思います。
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