特許公報への直リンクと、特許公報の著作権
2014/08/21
例えば、Googleがこんな特許を取りましたよー、とTwitterでつぶやきたい時。
話題になった訴訟で使われた特許はこんな内容ですよ、とブログに載せたい時。
特許公報への直リンクを張りたくなります。
しかし、無料での特許検索で最も有名なIPDL(特許電子図書館)は、
サイトの構造上、残念ながら特許公報の固定リンクはありません。
何か別のサービスを使う必要があります。
特許公報への固定リンク
■特許公報への固定リンクを張るなら、
例えば、PatentLibrary。
わりと幅広い国の特許公報が、シンプルなURL規則で用意されています。
・http://patentsearch.jp/ja/?no=JPA2003-23423
・http://patentsearch.jp/ja/?no=US6623422
ただし、日本の登録公報が用意されていないのが残念。
また検索機能とセットではないので、あらかじめ番号が分かっているときにのみ、
リンクを張る用ですね。
■日本の登録公報を見せたければ、
astamuseなど。
審決DBでよくお世話になってますが、
特許公報もシンプルな規則で、こちらは検索機能も面白くて使える。
・http://astamuse.com/ja/granted/JP/No/5508930
日本でフリーのサイトとしては、最も進んでるように感じます。
■外国特許の公報なら、
GooglePatentが一番便利でしょうか。
・http://www.google.com/patents/US7479949
■PCTなら、WIPOが運用しているPatentScopeも使えますね。
・http://patentscope.wipo.int/search/en/WO2013163296
特許明細書の著作権
直リンクで良いのがなければ、明細書の画像を張っちゃえーと。
その時にちょっとだけ気になるのが、特許明細書の著作権。
特許明細書が著作権法上の著作物に当たることには、争いがないでしょう。
13条2号の規定により、権利の目的とはならない、という主張もたまに目にしますが、
特許明細書は、国等が発する告示等には当たらない、というのが多数派解釈のようです。
中山先生の「著作権法」によると、
「特許明細書については、著作権の目的とならない著作物(13条)には列挙されていないが、特許庁は一種の法定利用権を有していると考えられ、特許庁が無断複製の責めを負うことはない。しかし第三者については規定がなく、無断で特許明細書を複製すると、形式的には著作権侵害となる可能性がある。
・・・特許制度の趣旨からは、なるべく多くの者が自由に特許明細書にアクセスし・・・が望ましいが、現行法ではそのような例外は認められていない。・・・最終的には立法的解決にならざるを得ないだろう。」
と述べています。
もちろん、引用する分には全く問題ないんですが、
その時にも、全文アップはまずいのか、とか出典を示すべきか、とか、
ちょっとだけ悩んじゃいますよね。
まあ、実際問題として気にすることではないんでしょうが。
特許データベースの著作権
ちなみに、以前は特許庁が、特許公報データベースの著作権を有している、
という主張でした。
特許明細書自体の著作権ではなく、データベースの著作権ですね。
特許公報データの販売においても、著作権料を含む高額だったものが、
平成10年から、著作権料を徴収せず、マージナルコストで廉価に提供されるようになったようです。
参考1、参考2
特許検索サービスの拡大による利用者便益の狙いですね。
今は削除されていますが、以前はIPDLに
「特許電子図書館で提供する公報等の情報は著作権の対象となっておりますが、原則、特許電子図書館から取得した情報であるとの出典を明記していただくことにより、改変しない限り引用及び複製を行うことができます。」
という記載があったようです。
これは、
特許DBとしての著作権は特許庁が保有しているから、出典を明示してくれれば、
特許庁が複製等を許可するよ(出願人への確認は不要で)、
という考え方だと思われます。
今は、
「特許電子図書館で提供する公報に掲載されている特許請求の範囲、明細書、要約書の文章等や図面に掲載されている文章や図面等は、通常、その創作者である出願人等が著作権を有していますので、転載する場合には許諾が必要になることがあります。」
という記載に変わっているようです。
出願人等が著作権を持っているから、気を付けてね、と。
・・とりとめなく、つらつらと書いてきましたが、
言いたいことは一つ。
#IPDLに固定リンクを
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