知財部のプロフィットセンター化、本当に必要?
2014/08/21
知財部門のプロフィットセンター化、という話をよく聞きます。
聞こえはいいですが、ぼんやりとした定義で誤解も多いように思います。
「プロフィットセンター化」といった時に、言葉の誤解が多く、
いくつかの考え方が(同じ組織の中でも人によって)混在しています。
①ライセンス等による収益を上げて、利益を出す(黒字にする)
②実際の収益(キャッシュイン)は問わず、事業部への貢献を見える化する。
③ライセンス等による収益を上げる権限と責任を知財部門に与え、収益と費用の差分としての利益を評価指標とする。
よくあるのは、偉い人がぼんやりと②くらいの意味で発言したことを、
①の意味だと捉えててんやわんや。
そもそもプロフィットセンターとは、
利益を測定指標とする、独立した事業単位で、その採算について権限と責任を持つ管理単位のことです。
つまり、上記③の意味ですね。
理論的には、知財部門が本当の意味でのプロフィットセンターになり、黒字化することは可能ですが、
そのためには知財部門がライセンス等知財活用について独立した権限を持ち、
自社事業に必要な自社知財であってもライセンスアウトにより収益を得て、
自社事業に必要な他社知財であってもライセンスインを抑えて費用を下げ、
その差分の利益で評価を受ける、ということが必要になります。
一般の事業会社では、とても受け入れられないでしょう。
知財の本源的な価値は、事業の独占と保護であって、
ライセンスによる収益は、副次的な効果だと思っています。
そうした意味で、企業が知財権を保有する目的は、
事業の独占と保護であり、そのために必要な費用を知財部で責任を持って管理するのであり、
通常の事業会社の知財部門はコストセンターに他ならないと思います。
事業部と知財部をセットにしたプロフィットセンターなら可能ですが、
知財部門のみが独立したプロフィットセンターには、通常なり得ないでしょう。
上の人が「プロフィットセンター化しろ!」という真意は、(乱暴ですが)、
そのコストを払う意味・価値が本当にあるのか、数値で見える化しろ、という意味だと思います。
それを言葉通りにとらえて、ライセンスによるキャッシュインがなければ
知財や知財部門の価値がないかのように考えてしまったり。。
カッコいい言葉の弊害ですね。
仮想的な管理会計として捉えるならば、
知財コストの社内移転価格と、知財の事業への貢献度合い
をどう定量評価するか、というのが真のポイントです。
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