IPFbiz

知財・ 会計・ビジネスニュース

日本版IFRSの是非

      2015/10/03


IFRS
日本版IFRSの草案
が公開されました。

 

日本版IFRS、
正式名称は「修正国際基準(国際会計基準と企業会計基準委員会による修正会計基準によって構成される会計基準)」で、英語表記の英語表記は「Japan’s Modified International Standards」から、「JMIS」と略されることになりそうです。

 

ピュアIFRSからエンドースメントされたものですが、IFRSの関係者からは、JMISはIFRSではないと明言されています。
IFRSとの違い・修正された点は、のれんと当期純損益の2つで、その箇所についてはASBJが策定した修正会計基準を適用するということです。

 

具体的には、
のれんについては、IFRSは「非償却」であるのに対して、修正会計基準では「償却」とする、
当期純損益(IFRSでは純損益)については、IFRSは「ノンリサイクリング」であるのに対し、修正会計基準は「リサイクリング」とする。
ということです。

 

M&A等の活動を活発にしていくには、のれんは非償却にすべき、という論調がありましたが、やはり日本の考え方には合わないのでしょうか。

 

元々、IFRSの趣旨は世界共通の会計の物差しを提供すること。

 

現在、世界では120か国以上がIFRSを採用しており、2008年のG20では単一で高品質な国際会計基準を作ることが提唱され、日本もそれに賛同しています。

 

日本ではすでに27社がIFRSを導入しており、16社が使う予定を発表しています。
水面下で検討している企業を合わせると、50~60社がIFRSに移行する可能性があるそうです。

大分導入が進んでいるのですが、大きな思惑としては、日本企業全体にIFRSを適用して欲しい。 

 

しかし、IFRSは日本基準と大きく異なる点も多く、これを日本企業に強制適用するには反対意見が多い。それでもIFRS導入に前向きな姿勢を示す必要もある、という葛藤の中で、エンドースメントされた日本企業向けのIFRSを作ろう、という流れだったと思います。

 

ところが、最終的にできた日本版IFRSであるJMISは、明確にIFRSではないと。

 

結局、日本企業が採用できる会計基準は、
日本基準、米国基準、ピュアIFRSと、日本版IFRSであるJMISの4つということになります。
共通の物差しどころか、かなり混乱してしまいそうです。

また、JMISを適用する企業が増えるほど、IFRSの導入はある意味遅れていくことになる矛盾もはらみます。

日本版IFRSの成立という「ニュース」をきっかけに、ピュアIFRSの適用が進むことが期待されているらしいですが、それだけだとすると、なんとも中途半端で無駄なものが出来てしまった、という感想が拭えません。

これから、JMISを適用する企業が出てくるのか、
あるいはこれをきっかけにIFRS適用企業が増えていくのか、
日本版IFRS作成の成果に注目します。 

 - 知財会計

ad

ad

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

  関連記事

特許価値評価
知的財産価値評価 概説 ~特許売買を例に~

1.知財価値評価とは 企業価値に占める無体財産の割合が高まり、知財の活用や流通の …

OECD
移転価格税制と知的財産の論点整理・解説(OECD、BEPS)

移転価格税制と知的財産の問題について、情報をまとめます。 誤りや、不足点、新しい …

工藤一郎
工藤一郎×IPFbiz ~YK値と特許価値評価~

対談シリーズ第11回目は、工藤一郎国際特許事務所、所長弁理士の工藤先生です。 工 …

IP Valuation松本浩一郎 × IPFbiz ~知財価値評価の専門家~

対談シリーズ第9回は、IP Valuation特許事務所で知財の価値評価を専門に …

評価人候補者制度とは? 知的財産価値評価推進センター

弁理士会の知的財産価値評価推進センターが取りまとめている、評価人候補者に登録申請 …

知的財産権のBS資産計上について(特許権・会計処理編)

  無形資産の重要性 知的財産の重要性が増している根拠として、 企業価値に占める …

知財価値評価
財務情報と非財務情報の相関(特許の事業利益への貢献度合い)

また雑文です。知財と会計について検討していると、大体いつも同じような壁にぶつかり …

知財会計と知財価値評価(法律会計勉強会)

昨日は、弁護士と公認会計士が主に集まる、法律会計士業交流セミナーで「知財会計と知 …

小林誠×IPFbiz ~デロイト トーマツ 知的財産グループ 知財×会計ビジネスの最前線~

対談シリーズ第21回は、デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会 …

知財移転価格にDCF法の共通ルール グローバルタックスマネジメントに終止符か

OECDの合意により、多国籍企業の知財移転価格について、日米欧主要国での共通ルー …