Googleは商標「Glass」を取得できるのか?
2014/08/21
そんな中、
というニュースが出たので、とうとう商標「Glass」が取れたのかと驚いてニュース原文も当たってみましたが、
ちょっと誤解を生む内容だったので、調べた範囲で整理をしておきます。
まず、Googleは
商標①「Google Glass」と
商標②「Glass」について、
出願をしています。
商標①「Google Glass」と
商標②「Glass」について、
出願をしています。
ニュースで話題になっているのは、主に商標②「Glass」のほうですね。
以前のニュースで明らかになっていたのが、
商標②「Glass」についてUSPTOから拒絶理由が通知され、1900ページに及ぶ意見書を提出した、ということ。
その裏で、商標①「Google Glass」については既に登録になっています。
「Google Glass」ということであれば、十分に識別力がありますし、類似する先行商標がなければ、登録になるのは何の疑問もありません。
そして今回のニュースは、
既に権利化された商標①「Google Glass」について、異議申立がされたが、それが商標権譲渡により回避できそう、という趣旨です。
異議申立をしていたのは、
「Write on Glass」と称するブラウザー拡張機能の開発会社Border Styloと、モバイル機器向けソフトウエア・プラットフォームを手がけるスペインの持ち株会社ファクトリー・ホールディングです。
それぞれ、「Write on Glass」と「glass」という商標を有しています。
これらの商標による拒絶理由を解消するために、2社から関連する商標を譲受けたようです。
取引内容は秘密となっていますが、恐らく巨額の譲渡金を支払っているはずです。
これによって、商標①「Google Glass」は取り消されることもなく、安定した権利になりそう。
一方で、商標②「Glass」については、それをもって重大な障壁を克服したとは言いがたい。
商標「Glass」は、2つの理由で拒絶理由が通知されていて、
1つは、先行商標と類似していること、
もうひとつは、 “merely descriptive”であること。
1つめの理由のうち、いくつかについては、今回の商標譲渡により解決できます。
日本の商標法でも同じですが、他人の登録商標と類似していると登録できないのであって、それが自己の商標となってしまえば、拒絶理由が解消されるからです。
ただし、1つ目の理由で提示されている先行商標は、今回の2社だけのものではないため、全ての拒絶理由が回避されたわけではありません。
ましてや2つ目の理由については、一般的な話なので、今回の商標譲渡とは何の関係もしていない。
Googleは1900ページに及ぶ意見書の中で、GoogleGlassの材料にはガラスは用いられていない、等の反論をしていますが、実際の材料にガラスを用いてないことは反論の理由にはならなそう。
ネイティブのニュアンスはよく分かりませんが、この場合の「Glass」は材料としてのガラスの説明というよりは、商品としての「眼鏡」そのものの説明というほうが強いのでは。
商品「眼鏡」に商標「眼鏡」は、やはり取得できないと考えるのが自然。
商標「Glass」は標準文字ではなく、特殊なフォントで出願されているようですが、
それでもちょっと厳しいかな、という心証です。
日本の通常の感覚で考えれば、今回の件をもってしても、商標「Glass」の登録は難しいでしょう。
しかし、個人的な予想ですが、最終的には商標「Glass」は米国で登録になるような気がしています。
いや、今回の冒頭のニュースを見た最初の私の感想が、
「そうか、Glassで商標取れるのか、やっぱり米国はすごいなー。」でした。
そんなに凄い違和感まではなかったんですよね。
日本に同じ商標出願がされているかは不明ですが、
米国では権利化できるけど、日本では権利化できない、
というのが個人的な予想です。
さて、今後どうなるでしょうか。
私の勘はよく外れます。
私の勘はよく外れます。
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