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財務情報と非財務情報の相関(特許の事業利益への貢献度合い)

      2015/12/28

また雑文です。

知財と会計について検討していると、大体いつも同じような壁にぶつかります。

それが、「特許権の事業利益への貢献度合いの合理的な定量化」です。会計的に言うと、「財務情報と非財務情報の相関」。

例えば以下のような場面で。

知財価値評価

知財価値評価(貢献度)

典型的には、いわゆる知財の価値評価。

一番代表的な評価手法であるDCF法を用いる際に、「貢献度」というパラメータを決める必要があります。
元になるのは事業計画による将来収益から割り引かれた事業価値、その事業価値の何割が特許権による貢献かということですが、この「貢献度」を決めるのは非常に難しいことです。

古典的には利益三分法や25%ルール(利益四分法)などが使われてきましたが、この数値はあまり合理性があるものではありません。

特許権は何かしら事業へ貢献しているもののはずですが、それを定量的に決定するのは困難です。

結局、事業計画を立てる際には特許権などの存在は無視されるので、経営者に、特許権は事業にどの程度貢献していますか?と聞いても、さしたる回答が返ってこないことが多いです。

本来的には、事業計画を立てる際に、自社が保有する知的財産を棚卸し、こういう権利があるから、シェアはこの程度保たれ、価格はこの額で競争できるはずだから、この程度の売上・利益が予測される、というのがあるべき姿なのかもしれません。
事業計画の中に特許権の存在が組み込まれていれば、特許権の事業への貢献も合理的に算出できるのですが、なかなかそのようには出来ていません。

そうすると、本当に納得のできる合理的な価値評価は出来ず、”一般的な”パラメータが使えるロイヤリティ免除法などが使われることになります。

 

統合報告書

知財の世界でも、統合報告書がにわかに注目されつつあります。

非財務情報についても総合的に開示をする統合報告書、その中の一つの重要な項目が知的財産です。

しかし、知的財産について十分な開示をしている統合報告書の例はあまりありません。
なぜか。

おそらく、知的財産という観点で、財務情報と非財務情報の相関が分かりにくいからではないかと思います。
いまいちどう開示をすればいいか分からないし、開示をしたときに投資家向けに効果があるのかもよく分からない。

 

移転価格税制

移転価格税制と知財の問題は、数年前から非常に話題になっています。

しかし、ビジネスとして盛り上がっているのは主に大手の税理士法人であって、弁理士など純粋な知財の世界には、なかなか話が回ってきません。

何故かというと、移転価格税制における価値評価(移転価格の決定)は、特定の知的財産権の評価というよりは、取引全体の中で総合的に評価されており、それは税理士の仕事であって、弁理士など知財の専門家へのニーズが現状無いからです。

なぜニーズが無いかというと、結局数字をなめるだけの評価であれば、税理士だけで出来てしまうから。

知財がどのように事業に貢献しているかということを、より合理的・定量的に示すことが出来れば、知財の移転価格の算出は知財の専門家の仕事になり得ると思うのですが、なかなかそうはならず。

 

知財戦略(出願予算)

企業における知財戦略の一つが、知財予算の策定です。
知財予算には色々な内訳がありますが、やはり基本となるのは出願費用。年に何件くらい、どこに出願するか。これが決まれば、後はそれに付随するような形で概ねの予算が決まると思います。

おそらく、ほとんどの企業での知財予算の決め方は、「昨年度ベース」。昨年度にどのくらい予算を使ったか、昨年度に何件くらい出願したかをベースに、翌年度の活動への増減を加味して検討する。

加味する要素の一つとして、翌年度に何件くらい発明が生まれそうかという、「シーズベース」の要素もあるでしょう。

しかし、本来的には、会社の規模や業態や競合企業とのあり方などから、何件くらいの特許保有件数が理想であり、来年度は何件の特許を出願すべきという、「ニーズベース」で決定されるべきものではないかと思います。

しかし、それは非常に難しい、なぜならば、何件の特許を保有することが維持コストと特許権の保有効果とのバランスから最適かということを決めるのが難しいから、突き詰めれば、特許権の事業への貢献を定量化することが難しいから。

なんとなく、競合企業に負けない規模の特許件数を保有しておいた方が良さそう、ということは言えますが、じゃあ2倍の件数を持っていると2倍良いのかというと、そうでもない。

明確な目標件数というものを打ち出すのは困難です。

 


知的財産権という非財務情報と、売上・利益という財務情報との相関が統計的にでも有意なデータが取れれば、色々解決の手立てがあるような気がします。

PatVMとかスコアリング型DCF法に対しては、ちょっと懐疑的だったのですが、統計的にパラメータの決め方を決めるのが現状の最適のような気もしてきています。

えっと、まとまり無い文章でした。

 - 知財会計

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