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弁理士ゆうすけ×IPFbiz ~弁理士とブログと監査役~

      2015/02/22

対談シリーズ第6回目は、弁理士で監査役でブロガーのゆうすけさんです。

弁理士でありながらブロガーも名乗って、積極的に情報発信をする姿には刺激を受けます。また上場企業の監査役も務めているという変わった方。弁理士の活躍の幅を広げる考え方について、お話を伺いたいと思います。

ゆうすけ

弁理士になるまで

安高:ゆうすけさんは、弁理士ブロガーの先輩として非常に参考にしています。私がブログを始めたきっかけも、実はゆうすけさんのブログを見たことが影響しているんですよ。まずは弁理士になるまでのキャリアと、弁理士を目指したきっかけを聞かせてください。

ゆうすけ:大学院では機械工学を専攻して、制御系の研究をしていました。それで就職の時期が来て、当時は弁理士なんて全く頭になく、大手電機メーカーに入りました。

安高:どういう職種だったんですか?

ゆうすけ:研究開発はキャラに合わないと思ったので、技術営業をやりたいなと思って希望したら、ソリューション部門に配属されたんですよ。自動車メーカーや家電メーカーの生産システムのプロジェクトマネジメントですね。

安高:管理システムの開発みたいな?

ゆうすけ:ええ、ソフトウェア開発なので、SEに近いかもしれません。私は開発ではなくて、プロジェクトの管理がメインでした。そこでいろんな経験を積めたんで、3年で退職して、弁理士を目指すことにしました。自分のキャラも活かせると思って。

安高:なるほど。でも何故また弁理士だったんですか?

ゆうすけ:会社の大切なアイデアを守るスペシャリストという強みがありつつ、経営戦略や商品企画のコンサルティングもできる弁理士に魅力を感じたからです。理系のバックボーンも活かせるし、グローバルに活躍できるチャンスもある。

安高:それで弁理士試験の勉強を始めたんですね。

ゆうすけ:ええ、4回目の受験で無事に最終合格することができました。正直いって、何度も心が折れそうになりましたね(笑)。でも弁理士になった後のことをいつも考えて勉強してたので、やり切ることができました。

 

現在の仕事

安高:仕事はどういうものが多いんですか?

ゆうすけ:特許がメインですが、商標も意匠もできます。

安高:特許がメインなんですね。ブログでは元々ネーミングとか商標のことをメインで書いていたので、仕事も商標メインかと思ってました。

ゆうすけ:それはよく言われます(笑)。でも会社によっては特許だけじゃなく意匠や商標の相談もあります。そんなときは、この商品なら特許だけじゃなくて意匠でデッドコピーを確実に防ぎましょうとか、商標でマーケティングしましょうとか提案しています。

 

ブログについて

安高:ブログはいつから書いているんですか?始めたきっかけは?

ゆうすけ:2012年10月にオープンしました。自分の知識や経験や思考を形にしたかったから。それに仕事以外のことも取り組まないと成長しないなって思って。おかげでインプットの量は増えたし、アウトプットのスピードも上がりました。

安高:自分の考えを見えるように整理して、残しておきたいということですね。

ゆうすけ:ええ、ネットも普及してきたので、何か情報発信しないといけないとも思って。2年前からはじめたブログはかなり後発でしたが、今やらないと駄目だなと。

安高:ブログを続けている人は、10年以上前からやっている人もざらですからね。

ゆうすけ:実は今のブログの前にも、無料ブログをちょっとやっていたんですが、デザインがいまいちだったんで辞めちゃいました。それで、Wordpressというのがあるんだなと知って、改めて始めたのが今のブログです。

安高:そうなんですね。そういう意味では、私も今のブログが3つ目です。
最初は私が大学生のときに、ちょうどこの頃ブログが、というか「Weblog」というものが流行りだした頃だと思うんですが、趣味のブログを書いてみて。でもその後すぐにGreeとかmixiが流行って辞めちゃいましたけど。それで弁理士受験生の頃にも試験関係のことを少し書いて、合格して辞めて。今が3つ目です。

ゆうすけ:そういう時代の流れでしたね。私が大学生のときは、自分のホームページを作ってましたよ。

安高:そうか、もっと前の「自分のホームページ」が流行ってた時代だ(笑

ゆうすけ:そう、ホームページビルダーを使ってね。そう考えたら結構色々やってて、メルマガをやってたころもありますね。最初はまぐまぐで。会社員のときでしたが、何か情報発信したいんだけど、何をしていいか分からなくて。日刊工業新聞っていうマイナーな新聞取って、そこから週1回発信するというのを1年間続けましたね。

安高:じゃあ昔から、ホームページにメルマガにブログに、何か書いて出したいという意識はあったんですね。

ゆうすけ:そういう性分というか、ぼんやりやりたい事っていうのは昔からあったんでしょうね。

 

ブログのビジョン

安高:仕事は特許がメインなのに、ブログでは商標を中心にしていたのは何故ですか?

ゆうすけ:最初は、ネーミングと商標登録というものをリンクさせたかったんです。「スタートアップ」をブログのキーワードにしてるんですが、成長途中の企業にとっては、知財って遠い存在のようです。そういう人たちに何がヒットするかといったら、まずは商標かなって思って。

安高:ブログの読者層は、やっぱりスタートアップですか?

ゆうすけ:そうですね。スタートアップの人たちのほとんどは、知財を管理するっていうところまで意識が回っていないと感じています。売れてナンボだし、その気持ちはよくわかります。でも売れてからじゃ知財対策は手遅れだし、それって知財で失敗する残念なパターンですよね。だからスタートアップをメインの読者層とイメージしています。

安高:なるほど、結構読者層がしっかりしてますね。だからゆうすけさんの記事は凄く分かりやすいですよね。知財を全然知らない経営者が見ても分かるように書かれていて、私が書いている記事とは同じ知財でも大分テイストが違う。私はまだ、かなりブレています。すごく専門的なことを書きたくなったり、すごく柔らかいことを書きたくなったり。

ゆうすけ:ブログを書くというのは、自分が誰を読者層にしたいか、どこに突っ込みたいかを模索する意味でも有効に働いていますね。アクセスだけを見ると、知財ってマイナーなネタなので伸びにくい。メジャーなネタを書いたらどーんと伸びたりする。ブログを育てるのか自分のキャリアを育てるのか。そこをリンクさせていかないといけないと思っています。でもあまりガチガチにするのもつまらないので、仕事術系、イベント系、自分の思想もちょいちょい書いてます。

 

ブログの発展

安高:でもゆうすけさんのブログはBLOGOSにも転載されてるし、アクセスも多いですよね。

ゆうすけ:ブロガーのイケダハヤトさんと会って話したことがあって、ブログを転載してくれたりして。その影響かもしれないけど、BLOGOSの編集の人からメールが来て転載させてもらえないかと。

安高:他にもブログを通じてのアクセスはありました?

ゆうすけ:後は、アップルのiWatchの記事を書いてたら、新聞社の人から動向についてコメントくださいと連絡があったり、ITに強い弁理士を探してるんだけど相談させてくださいと連絡があったり。本のコラムを書いたこともありますね。「地域発ヒット商品のデザイン」について、これもブログ経由での連絡でした。

 

監査役

安高:ゆうすけさんは上場企業の監査役もやっているんですよね。弁理士で監査役って珍しいと思うのですが、どういうきっかけですか?

ゆうすけ:きっかけは、友人の弁理士からの紹介です。知財の知見をメインに発揮してもらいつつ、他の業務の監査もお願いしますと。就任して半年が経ちました。

安高:弁理士で監査役って、他にご存知ですか? 普通は顧問みたいな形ですよね。

ゆうすけ:色々調べましたが、他には知らないですね。思うに、顧問だと担当するのは知財オンリーで、何か会社で困ったことがあったら顧問に聞きにいく感じですよね。監査役は会社の状況を把握して、こちらから発信していかないといけない。その点私はプロマネ時代に他社へ出向して業務カイゼンの経験もあるので、キャリアを活かせてると思います。

安高:出願件数も減って弁理士の業務範囲を広げないといけないと言われている中で、監査役というのは今後の弁理士の新しい業務として、あり得るものでしょうか?

ゆうすけ:可能性はあるんじゃないでしょうか。知財が重要視される時代にもなっていくだろうし。そういう意味でいえば、私は弁理士が監査役に適していることを伝えていきたいですね。もちろん知財以外の知識(IT、生産技術、法務、会計・財務など)も必要ですが、弁理士ならそれらを吸収するポテンシャルがあるはずです。

 

弁理士監査役の手ごたえ

安高:実際に監査役を半年やってみて、手ごたえはどうですか?

ゆうすけ:手ごたえは出てきましたね。やっぱり知財関係は手薄だったようです。特許権の維持管理しかり、営業秘密の管理規定しかり。コンプライアンスや内部統制を考えながら、知財の管理をいかに会社経営に組み込むかという点で、経営幹部や各部署の担当者の方々も理解しはじめてくれたようです。ちなみに私は監査役のため職務の執行はしないものの、コンサル的な立場で相談対応や提案も必要に応じてさせてもらっています。

 

将来ビジョン

安高:ゆうすけさんの、将来のビジョンや、目標というのは?

ゆうすけ:知財でこの国を元気にしたいですね。特許だったら営業計画を意識して権利範囲やタイミングを検討するとか、ノウハウだったらジョイントベンチャーを意識して可視化するとか、 “知”の財産をちゃんと管理して有効に活用してほしい。そういう文化が、この国の底力になると考えてます。個人的な活動としては、本を書いたり、今のブログを基盤としてしっかりオウンドメディア化していきたいです。

安高:顧客からの信用が重要な仕事ですもんね。

ゆうすけ:ええ、まだまだ弁理士は認知度が低いですよね。まずは会社に必要な人材だと感じてもらわないと、広がっていかないんじゃなでしょうか。待っていても駄目で、ニーズを芽生えさせないといけない。こっちのほうから、こういうことが出来ますよというものを提供して発信していかないと、弁理士の業務は変わっていかないと思っています。

安高:自分のほうから、情報と価値を発信していくことが重要だと。

ゆうすけ:その時に、それがいかに体系化できているかが重要だと考えています。今はブログでそれを整理しつつ、体系化している途中です。本を書きたいのも、体系化した知財の考え方を提供しやすいように形にしたいという想いです。知財の情報って、いっぱい転がっているんだけど、一つの、まずこれがあれば分かりますよというのが無いように思って。そういうものを作っていきたいですね。

 


ゆうすけさん、対談ありがとうございました。
ゆうすけさんは、その行動力や発信力も凄いですが、人的な魅力がある人で、そういうものが監査役の仕事を得たりということに繋がっているんだろうと思います。
真似できることはこれからも参考にしていきたいです。

 - 弁理士

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