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「知的財産推進計画2015」の骨子案について

      2015/04/15

日経新聞から、「知的財産推進計画2015」の骨子案について報道されていましたので、これをきっかけに、今見えている範囲で思うことを少し。

骨子としては、
(1)地方における知財活用の推進
(2)知財紛争処理システムの活性化
(3)コンテンツの海外展開の推進
の大きく3つの柱を掲げる内容となっています。

知的財産推進計画2015

(1)地方における知財活用の推進

「地方における知財活用の推進」については、知財戦略本部の中に「地方における知財活用促進タスクフォース」が立ち上がって議論されています。

大きく、大企業の知財、大学の知財、中小企業の知財をそれぞれどう活用するかという検討がされています。


中小企業による大企業の知財の活用促進【大企業の知財】

テーマの一つは、大企業が保有する「休眠特許」を中小企業に開放し、中小企業に効果的に活用してもらい事業化を目指すというもの。

休眠特許の活用という言い方には、ちょっと懐疑的だったりします。つまり、わざわざお願いして眠っている特許のライセンスを貰うメリットは、中小企業にとってあまり無いような。

結局は、休眠特許の活用というよりは、技術の提供であって、アライアンスであると。その時に、大企業にとってメリットを感じさせるスキームなり制度を作ることが重要だと思います。
共同開発による税制優遇なんてものが、その一つですよね。

「休眠特許」という隠れた財産があるから、それを活用出来るはずだという考え方は、しっくりきていません。

休眠特許の活用というよりは、単に大企業と中小企業との技術連携・マッチングという切り口で考えたほうが、進みやすいように思います。


産学連携における大学の知財の活用促進【大学の知財】

もう一つのテーマが、大学発の知財をどのように事業化に結びつけるかということ。

大学側の体制や研究開発の方向性、学生のマインドに尽きるように思っています。


地方中小企業による知財の活用促進【中小企業の知財】

地方の中小企業の知財を活用して事業を発展させるという課題で、大きなテーマとして知財を活用した金融機関による融資があります。

いわゆる知財融資や知財の信託化といった動きは、昔盛り上がった後、中身がついていかずに盛り下がり、今また盛り上がってきています。

千葉銀に続き山口銀行でも、知財の評価に基づく融資の制度が出来ました。また特許庁主導のもと、知財評価レポートを作り知財融資に使ってもらうという動きも進んでいます。

要するに、知財・技術の目利きや知財の価値評価という課題、知財に担保価値があるのかという問題に帰着すると思うのですが、
このテーマに関しては、わりと有望なんではないかと思っていますので、期待します。

 

(2)知財紛争処理システムの活性化

この点についても、「知財紛争処理タスクフォース」にて議論が進んでいます。


背景にある課題(?)は、諸外国と比べて日本では知財の訴訟件数が少なく、原告である特許権者側が勝ちにくく、また損害賠償額も低いということ。

日本企業は特許保有件数は多いのですが、活用が上手くいっていないと言われ、その理由・背景の一つが訴訟が少ないから、あるいは訴訟が起こしにくいからだと言われます。
制度的に、あるいは文化的・雰囲気的に、知財訴訟が起きやすくなるようになれば、知財意識が高まり、知財の活用が進むのではないかと。

非常にシンプルなロジックですが、一理あるようには思います。

また、訴訟が起きにくく損害賠償額も低いことにより、諸外国と比べて日本の知財自体のプレゼンスが低下しているという問題もあります。
そうすると何が起きるのか。「日本で特許を取ってもしょうがない」ということで、特にグローバル企業が日本以外の国で優先的に特許を出願するようになり、日本の知財の空洞化が進んでしまうと。

これは日本の知財人として、とても寂しい。


だからといって、特許訴訟がバンバン起こるような風土に変えてしまうのが良い方向性なのかも疑問はあります。

米国では、アンチトロール≒アンチパテントの方向に進んでいると思います。その中で、日本がプロパテントの方向に大きく舵を切ってしまって大丈夫なのか。

企業内で働く立場からしても、心配はあります。

でも、これに関しては、思い切ってプロパテント寄りに動かしてしまってみて欲しい、というのが、今の個人的な感覚です。正しい方向性か自信はないですが。

では、具体的に何をどうするのか。

一つ具体的に進むであろうのは、証拠収集手続きについて。
つまり、被告側の証拠提出義務をより強化しようということ。

現状でも、105条に文書提出命令の特則があり、いわゆるインカメラ手続き導入の改正もされています。104条の2には被告側の具体的態様の明示義務も課されています。

しかしこれらは十分に機能していないということで、もう少し改善しましょうと。

これはきっと、何かしら具体的に変わると思うのですが、ちょっとインパクトとしては小さいかも。


もっとインパクトの大きい論点としては、損害賠償額の増額化や、権利の安定性など。

しかし、損害賠償を増額しようといっても、制度的に三倍賠償や法定賠償額を入れるのはきっと難しく、後は裁判所側の判断の問題なので、外からそれを変えるのも難しそう。
例えば、損害賠償額の計算という専門的な点については、所定の専門機関による評価を義務付け、そちらの機関に働きかけるとかはありそう。


権利の安定性については、具体的には104条の3をいじって、あるいは廃止して、シングルトラック化しましょうという話がメインだと理解しています。特許庁で有効と判断したものを、裁判所で簡単に無効判断してくれるなと。

とは言っても、無効審判も最終的には司法の場で判断されることになるのだし、制度により抜本的に解決するのは難しそうに感じています。
権原の奪い合いというよりは、特許庁と裁判所との歩み寄りという実体的な解決のほうが望ましいのかなと、浅い考えですが思っています。

 

(3)コンテンツの海外展開の推進

「コンテンツの海外展開の推進」については、検証・評価・企画委員会のほうで検討が進められています。


クールジャパンに代表される日本コンテンツの海外展開。
世界のコンテンツ市場は拡大しているのに対し、日本のコンテンツ市場は横ばい・縮小傾向です。また海外から関心の高いと言われるアニメやゲーム等についても、輸出規模は増えていません。

特にアニメに関しては、海賊版の撲滅、ではなく、正規コンテンツの流通を促進してもらいたいです。

 

以上、とりあえず、3本柱についての感想です。

 - 特許

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