IPFbiz

知財・ 会計・ビジネスニュース

1-1.特許権侵害における金銭的請求

      2015/10/11

損害賠償額_目次へ

 

特許権侵害に対する民事的救済としては、差止請求(100条1項)と金銭的請求とがある。

金銭的請求として代表的なものは民法709条による損害賠償請求であるが、その他にも不当利得返還請求(民法703条、704条)、補償金請求(特許法65条)がある。


実際の訴訟では、民法709条による損害賠償請求がなされることが多いが、損害賠償請求は時効が短いため、古い期間において不当利得返還請求がされることがある。
また、要件を満たせば補償金請求を合わせて行うことも当然にある。


本稿は、訴訟における損害賠償額を考察するものであるため、原則として民法709条による損害賠償請求について焦点を当てていく。

ただし、特に102条3項の実施料相当額の認定の考察に当たっては、不当利得返還請求、損害賠償金請求の事件も参考になるため、そこでの裁判例としてはこれらも含めて抽出を行う。

不当利得返還請求と補償金請求については、ここで簡単に触れておきたい。損害賠償請求については後段で詳述する。

 

不当利得返還請求

特許発明を法律の原因なく実施し、実施者が特許権者の損失において利得すれば、特許権者には不当利得返還請求が認められる(民法703条、704条)。


民法709条による損害賠償請求権の消滅時効が、「加害者を知り、侵害を知ったときから3年」であるのに対し、不当利得変換請求権の時効は10年であるため、古い期間での特許訴訟において効果を発揮する。

不当利得の算定においては、特許法102条1項、2項の適用は無い。
実際の訴訟においては、特許権者が本来受けるべき実施料を損失した範囲で、侵害者がこれを利得したことは明らかであると考えられるため、実施料相当額の不当利得返還が請求されることが多い。

ここでの実施料相当額が、不法行為による損害賠償請求において推定される特許法102条3項での実施料相当額と同じか否かは、一応の論点として残ろう。
しかし、実施料相当額の認定の考察に当たっては、不当利得返還請求の事件も参考事例として含めて検討する。

 

補償金請求

特許出願人は、出願公開があった後に特許出願に係る発明の内容を記載した書面を提示して警告をしたときは、その警告後特許権の設定の登録前に業としてその発明を実施した者に対し、その発明が特許発明である場合にその実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の補償金の支払を請求することができる(特許法65条)。

出願公開から特許権の設定登録までの期間における侵害行為を救済するものである。


補償金請求に当たっては「その発明が特許発明である場合にその実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額」を請求することができる。

これは102条3項の「その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額」と語句を揃えている。
平成10年法改正においても、「通常」の文言の削除は同様に行われた。

したがって、不法行為による損害賠償請求における102条3項の「実施料相当額」と補償金請求による「実施料相当額」とは、算定根拠なども同じであろうと考える。

実施料率の認定の考察においても、補償金請求事件も併せて抽出を行う。

 

損害賠償額_目次へ

 

 - 知財会計

ad

ad

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

知財移転価格にDCF法の共通ルール グローバルタックスマネジメントに終止符か

OECDの合意により、多国籍企業の知財移転価格について、日米欧主要国での共通ルー …

パテントボックス制度とは? 目的と実体

パテントボックス制度について、諸外国で導入が続き、日本でもその導入が検討されてい …

小林誠×IPFbiz ~デロイト トーマツ 知的財産グループ 知財×会計ビジネスの最前線~

対談シリーズ第21回は、デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会 …

invention
職務発明規定改正「対価⇒報酬」による会計税務的影響・所得区分について

最近はTPPに押されてか報道が落ち着いていますが、職務発明規定の改正による税務的 …

海外ネット配信への消費税課税、反対意見が少ないけど大丈夫?

AmazonやGoogle等による、海外から日本へのデジタル商品のネット配信サー …

iPodクリックホイールの特許権侵害 3億円の損害賠償額は妥当か

iPodのクリックホイール特許権侵害で、日本の発明家がAppleを訴えていた件で …

特許価値評価
知的財産価値評価 概説 ~特許売買を例に~

1.知財価値評価とは 企業価値に占める無体財産の割合が高まり、知財の活用や流通の …

特許権侵害訴訟における損害賠償額算定についての考察 (目次)

知財権と金銭評価が関わる領域は多々あるが、訴訟における損害賠償額の算定、特にその …

OECD
移転価格税制と知的財産の論点整理・解説(OECD、BEPS)

移転価格税制と知的財産の問題について、情報をまとめます。 誤りや、不足点、新しい …

IP Valuation松本浩一郎 × IPFbiz ~知財価値評価の専門家~

対談シリーズ第9回は、IP Valuation特許事務所で知財の価値評価を専門に …