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職務発明規定改正「対価⇒報酬」による会計税務的影響・所得区分について

      2015/02/24

invention

最近はTPPに押されてか報道が落ち着いていますが、職務発明規定の改正による税務的影響についての疑問。


復習ですが、現状の職務発明規定では、
・従業者による発明の特許を受ける権利は従業者に帰属するが、
・それが職務発明であれば企業への予約承継が有効であり、
・その場合は相当の対価を従業者に支払う義務がある。
となっています。

法改正によれば、
・社内規定により選択的に、従業者による職務発明の特許を受ける権利を原始的に企業に帰属させることができ(条件は不明)、
・その場合は、報酬なり経済的利益なりを企業が従業者に支払う(法定の権利義務になるかや算定法等は不明)
となると思われます。

 

この法改正でどのような影響が出るか。
従業者の不利益がよく言われますが、個人的にはそんなに大きな影響はないように思っています。

既に職務発明規定をしっかり敷いている企業であれば、原始的な帰属がどちらであれ結局企業に権利を承継させて出願しているし、
今決まっている所与の報奨金等の支払額が減るとも考えにくいし。

ただ、額に争いがある場合に、「相当の対価」に比べると、争いにくく、飛びぬけた高額にはなりにくい可能性はあります。

恐らく、この対価なり報酬の計算方法や、報酬支払い義務の条文上の書き方、職務発明規定のガイドラインなりが今後の争点となるでしょうが、
今回はもっと細かく実務的な話。

法改正により、会計税務的な処理が変わるのかどうかについてです。

 

職務発明報奨金の会計税務処理

所得区分

まず現状の話から。
職務発明による報償は、多くの企業で、出願報奨金、登録報奨金、実施報奨金の3段階に分かれて支払われます。

まず出願報奨金は、特許を受ける権利を譲渡する対価としての支払いなので、従業者にとっては「譲渡所得」となります。細かく言うと長期譲渡所得。企業にとっては譲渡対価。

そして登録報奨金や実施報奨金は、法的な整理は様々な議論がされていますが、権利の移転によって一時に実現したものではないため税務上は譲渡所得には該当せず、「雑所得」となります。


これが法改正されるとどうなるか。
まだ具体的な条文が分からないので予測ですが、権利の予約承継でもなく、原始的に法人に帰属するので、「譲渡」という法的構成はありません。
報酬などが義務付けられるとしても、これは発明という行為に対する報酬であり、それは即ち職務・業務に対する支払いであるため、「給与所得」になると考えられます。

実施報奨金についても、やはり雑所得というよりは給与所得になるのではないでしょうか。

 

所得税(源泉徴収)、消費税への影響

そうするとどうなるか。

これまで従業者が得ている報奨金は、年間20万円以下であれば(ほとんどの人はそうでしょう)確定申告も不要で、丸々貰えていたものが、
給与所得となれば源泉徴収がされ、手取りが間引きされてしまいます。住民税とか社会保険額の算定にも影響がありそう。企業にとっても手間。

さらに企業側にしてみれば、これまでは消費税法においても課税仕入れに含められていたものが、課税仕入れにならなくなるため、消費税の支払いも増えます。

 

・・そう考えると、あまり嬉しくないかな。

この手の検討についてはあまり情報が見当たらなかったので、まだ本当にどういう扱いになるかは分からないのですが、実際どうなるんでしょうね。

 - 知財会計 ,

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Comment

  1. higenabe より:

    職務発明報奨金の所得区分については私は解りませんが、少なくとも裁判で勝ち取った「職務発明の相当対価」は雑所得に区分されると最高裁で決定されました。

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