IPFbiz

知財・ 会計・ビジネスニュース

「Magical Stone」は「ぷよぷよ」の著作権を侵害しないのか?

      2016/06/29

盛り上がったぷよぷよS級リーグ統一王座戦も終わり、その後に衝撃の発表がありました。

ぷよぷよの超上級プレイヤーを中心とする集まりが、ぷよぷよに類似し、競技性の高さを追求したゲーム「Magical Stone」をローンチし、これでeスポーツを盛り上げようというものです。

私も弁理士ぷよらーの端くれとして、このプロジェクトには応援をさせて頂いています。

Magical_Stone_logo

ところで、この発表を見られた方は、少し疑問を持つのではないでしょうか。
「Magical Stoneって、ゲームのルールとしては結局ぷよぷよと同じだけど、これ大丈夫なの?ぷよぷよの著作権を侵害するんじゃないの?」と。

私は、Magical Stoneはぷよぷよの著作権を侵害するものではないと考えています。

ごく簡単に結論だけを書くと、以下のようになります。
「Magical Stoneがぷよぷよと共通するのは、アイデア自体や、ありふれた表現に過ぎず、著作権法の保護対象である創作的な表現(本質的特徴)を維持しないため、著作権を侵害しない。」

これを、もう少し分かりやすく説明していきます。
ちょっと長くなりますが、お付き合いください。

 

著作権法の基本的な考え方

まずは、著作権法という法律が何を保護しているかという基本的な考えから整理をします。

著作権法が保護するのは、「著作物」です。
著作物は「思想又は感情を創作的に表現したもの」として定義されています。
ここには、2つの要件が含まれます。つまり、「表現」であることと、「創作性」があること。

まず、著作権法の保護対象は、「アイデア」ではなく「表現」です。
アイデアは、特許法の守備範囲であり、出願・審査・登録という手続きを経て初めて保護されるものです。保護期間も出願から20年間に限られます。

また、表現であれば何でも保護されるというわけではなく、「創作性」のある表現となってはじめて、著作権法による保護が得られます。ありふれた表現に著作権という独占権を与えることは適当ではないからです。

このアイデア-表現二分論と、創作性のある表現かありふれた表現かという整理は、著作権法におけるとても基本的で重要な考えです。

 

ゲームの著作権侵害の考え方

それでは続いて、ゲームにおける著作権侵害の考え方について、有名なGREE対DeNAの釣りゲーの著作権侵害訴訟の判決をベースに説明します。

左がGREEの画面で、右がDeNAの画面、これらが類似するとしてGREEが著作権侵害でDeNAを訴えた事件です。

ncn_228479http://getnews.jp/archives/182209

ここでは、著作権の中でも翻案権侵害が争われています。

翻案権とは、著作権の支分権の一つであり、著作物を独占排他的に翻案(既存の著作物に依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的な表現形式を変更して新たな著作物を創作)する権利のことです。

翻案権侵害か否かは、対象となる著作物が、元の著作物の「本質的特徴」を維持しているかどうかで判断されます。
この「本質的特徴」は、すなわち元の著作物における「創作性のある表現」のことです。


実は地方裁判所では、釣りの画面における「三重の同心円」などがGreeの画面の本質的特徴であり、それがDeNAの画面にも維持されているとして、著作権を侵害すると判断しました。

しかしそれは知財高裁において覆され、最高裁も知財高裁の判断を維持しています。

知財高裁ではなぜ非侵害と判断したのか。知財高裁では、釣りの画面において三重の同心円を書くことは、表現ではなくアイデアに過ぎないと判断したのです。

また、その他の共通点についても、釣りゲームにおいて水中のみを描くこと等は他の釣りゲームにも存在するもので、これらはありふれた表現といわざるを得ないと判断しています。

そして、「アイデアなど表現それ自体でない部分または表現上の創作性がない部分において既存の著作物と同一性を有するにすぎない著作物を創作する行為は、既存の著作物の翻案に当たらない」と結論付けています。

 

中間まとめ

一旦まとめます。

ゲームにおける著作権(翻案権)侵害のポイントは、

元の著作物との対比において共通する部分があるとき、
・共通する部分が「表現」なのか「アイデア」なのか。
・表現だとすると、それが「創作性のある表現」なのか「ありふれた表現」なのか。
という2点です。

そして、「創作性のある表現」が共通し維持されている場合は、著作権侵害と判断される可能性があります。

しかし、共通点が「アイデア」や「ありふれた表現」のみであれば、著作権は侵害しないといことになります。

 

ぷよぷよの特徴

それでは、本件、Magical Stoneがぷよぷよの著作権を侵害するかを検討しましょう。

まずは、ぷよぷよの持つ特徴を整理します。
便宜的に3つのカテゴリーに分けて列挙していきます。

puyopuyo1http://vc.sega.jp/vc_puyo2/

特徴①

・複数色の組み合わせからなる2つの連なる物体が降ってくる。
・4つ同じ色の物体が隣接すると消える。物体が消えると、消えた物体の上に乗っている物体は下に落ちる。
・連続して消すことで、高得点を上げ、得点に応じて、相手に妨害する物体を降らせることができる。
・妨害する物体は、相手からの攻撃があれば相殺される。


特徴②

・6マス×13マスのフィールドが2つ並んでいる。
・真ん中の領域に、次に降ってくる物体や、キャラクター、点数が表示される。

特徴③

・物体には目が付いている。
・物体はぷよぷよしていて、フィールド設置時にぷよっと震える。
・同じ色の物体同士が隣接すると、くっつく。
・消える時には、目が大きくなり、はじけるように消える。(魔法でぷよを消しているという設定のため)
・キャラクターのデザイン(アルルなど)
・背景のデザイン
・BGM、キャラクターの発声

 

Magical Stoneの特徴

続いて、Magical Stoneの特徴を検討します。

プリント

Magical Stoneは、ぷよぷよというゲームの持つ競技性の高さに着目し、eスポーツの競技足り得るよう、その競技性を追求したゲームです。したがって、ルールは「ぷよぷよ通」をほぼ再現しています。フィールドの大きさなども当然一致します。

逆に、グラフィックや世界観は、eスポーツとしてグローバルに普及するように、海外でも受け入れやすいものに変えています。

また、操作性は通に比べると若干の改善がされています。さらには、運の要素を低減するため、次に降ってくるオーブを3つ目まで表示する変更される予定のようです。
降ってくる物体はオーブであり、同じ色のオーブが隣接してもくっ付く表現はなく、そして消える際には、例えば赤オーブの場合は燃えるように、オーブごとの消える描写がされます。

赤オーブ緑オーブ

ms10

キャラクターは、海外でも受け入れやすい、ちょっとゴツイ感じのものを中心に、萌え系のものも用意されています。

また、競技性の高さを追求したものであるため、マッチングやレートに注力しており、
さらに、どこにオーブを置くのが最適かという理論値を追求できるよう、「ターン制」というモードも追加されています。
この「ターン制」は、落ちものゲーの新しいモードとして非常に面白いのですが、話がそれるので、これはまた今度詳しく紹介します。

 

ぷよぷよとMagical Stoneとの対比検討

それでは、以上のような特徴を持つぷよぷよとMagical Stoneとを比較検討します。

特徴①について

まず、ぷよぷよの持つ特徴①は、ほとんどMagical Stoneに共通します。

しかし、特徴①は、ぷよぷよというゲームのルールそのものです。これは、「アイデア」であって、「表現」ではないと言うべきでしょう。
したがって、著作権の保護対象ではありません。

なお、それではせっかくのゲームのアイデアはどうやっても保護されないのかというと、そんなことはありません。
素晴らしいゲームのアイデアは、「特許」により保護することができます。実際に、ゲーム会社は、新しいゲームの開発に際して多数の特許を出願しています。

しかし、ぷよぷよを開発したコンパイル社は、ぷよぷよの特許を出願していません。仮に出願していたとしても、初代ぷよぷよのリリースは1991年ですから、とっくに特許権は切れていて、ぷよぷよというゲームアイデア自体はパブリックドメインになっているはずです。

 

特徴②について

続いて特徴②について。
この、フィールドの大きさや領域の設定は、アイデアとも表現とも捉えられ得る、難しいところです。

仮にこれが表現だとすれば、それが創作的な表現なのかありふれた表現なのか、という点が重要になります。

それでは、初代ぷよぷよのリリースが1991年ですが、その当時に他にどのようなゲーム(表現)があったのかを見てみましょう。

 

まず、初代落ちものゲーといえば「テトリス」。
テトリスは、1981年に発売されたゲームで、落ちものゲーというジャンルを作り出し、後のタイトルに大きな影響を与えたゲームです。
既存の落ちものゲーは、ぷよぷよも含めて、このテトリスを部分的に真似して作られたと言っても過言ではないでしょう。

3794ss1http://www.gamespark.jp/article/2007/10/02/13794.html

 

続いて、1990年にセガから発売された「コラムス」。
フィールドの大きさや雰囲気はぷよぷよとも似ていますね。

コラムスhttp://vc.sega.jp/vc_columns/

日本で有名なのは、「ドクターマリオ」でしょうか。ドクターマリオも1990年の発売です。
ぷよぷよは、ドクターマリオに大きく影響を与えられたという話もあります。

ドクターマリオhttp://www.amazon.co.jp/任天堂-ファミコンミニ-ドクターマリオ/dp/B00022FI2Q

他にも、1990年には、
「coloeris」colorishttps://fi.wikipedia.org/wiki/Coloris

「Magic Juelry」Magic Juelryhttp://www.gamefaqs.com/nes/935394-magic-jewelry/images/23

「TEKIPAKI」TEKI PAKIhttp://allyourbase.toaplan.org/tekipaki/index.html

など、多くの落ちものパズルゲームのタイトルが発売されています。

ぷよぷよは、これらのゲームの発売の影響を受け、コンパイルにより1991年に発売されたゲームです。

なお、ぷよぷよ発売後も、様々な同じような落ちものゲーは発売されています。

「対戦ぱずるだま」
対戦ぱずるだまhttp://blog.livedoor.jp/world_xxi/archives/2009-08-21.html

「パニックボンバー」パニックボンバーhttp://newfami.com/atoz/super/superbombermanpanicbomber.html

 

こうして見れば、フィールドの大きさや構成が、表現だとしても、
ぷよぷよが創作される以前から他ゲームでも様々なフィールドが使われており、6マス×13マスのフィールドというものは、ありふれた表現と言わざるを得ないでしょう。

また、ぷよぷよ発売後の落ちものゲーム(対戦ぱずるだまやパニックボンバー)を見ても、落ちものゲームにおいてフィールドの大きさなどは、いくつかの組み合わせから選択される、創作性の幅が非常に限られたものであると言えます。

したがって、特徴②が共通していても、それは「ありふれた表現」に過ぎないと言うことができます。

 

特徴③について

それでは、著作権的なぷよぷよの「本質的特徴」は何かというと、特徴③に他なりません。

ぷよという可愛らしくぷよぷよした物体が降ってきて、隣接するとくっ付き、アルル(キャラクター)らの魔法によってビックリした顔になって消えていく。

そういったキャラクターデザインが、著作権的に言う、ぷよぷよの特徴です。

そして、言うまでもなく、これらの特徴③は、Magical Stoneにおいて維持されていません。Magical Stoneはまた異なる世界観を持ち、異なるグラフィックを有します。
デザインなどはしっかり独自に作りこまれたものなので、その辺も楽しんでもらえればと思います。

 

まとめ

以上、大変長くなりましたが、ここまで見て頂ければ、冒頭に述べた結論
「Magical Stoneがぷよぷよと共通するのは、アイデア自体や、ありふれた表現に過ぎず、著作権法の保護対象である創作的な表現(本質的特徴)を維持しないため、著作権を侵害しない。」
を理解頂けるのではないでしょうか。

 

所感

最後に、Magical Stoneについての、私の個人的な思いを。

ぷよぷよは1991年に発売され、その後ぷよぷよ通が1994年に発売されてから、様々なゲームタイトルがリリースされてきましたが、コアなファン達は、ずっと古いゲームである「ぷよぷよ通」を愛して、通の筐体を用いて大会なども開かれてきました。

これはまさに、ぷよぷよというゲームの競技性の高さを表すものではないかと思います。

eスポーツは、格闘ゲームなどを中心にグローバルな盛り上がりを続けています。そして、ぷよぷよ・Magical Stoneは、そうしたeスポーツ以上に、例えば囲碁や将棋、チェスのような、長く愛されるゲームとして普及していくのではないかと思います。そうした頭脳ゲームとしての側面も十分に有していると思われます。

 

私も小さいころからぷよぷよというゲームを楽しみ、大学の頃にはぷよぷよフィーバーにはまり、そして会社でもぷよぷよ同好会に入り、様々な友人との繋がりを得ました。

ぷよぷよというゲームを開発してくれたコンパイル社にも、それを引き継いだセガ社にも感謝をしています。

しかし、ぷよぷよのコアなファンである超上級プレイヤー達は、期待する新作が作られないことから、独自にeスポーツに耐えられる新しいゲームとしてMagical Stoneをリリースするに至りました。

私は、ぷよぷよの販売をしているセガ以上に、ぷよぷよの大会を独自に企画運営し、ためになる動画コンテンツを多数提供し、ぷよぷよ界を盛り上げ続けている超上級プレイヤーの皆さまの方を応援したいです。

 

ぷよぷよは、そのキャラクターを活かして、また初心者でも楽しめるゲーム、ぷよクエなどのアプリとして、ますます人気を博していき、
そしてMagical Stoneは、eスポーツとして、コアなファン・上級プレイヤーを中心に、グローバルに普及していくことを、切に願います。

 - 著作権

ad

ad

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

著作権本
フェアユースについてもう一度考える (日本におけるフェアユースの必要性)

前編の続きから 日本でのフェアユースの必要性 日本版フェアユースの議論がされ、一 …

インターネット
「フリー素材・フリー画像」 著作権フリーに注意

宮古市が作成したWebページと冊子において、イラストの無断使用による著作権侵害が …

クラウドと著作権

英国の著作権法改正について、 先日の記事で、パロディが認められたことに触れました …

monkey
サルの自撮り著作権問題 続報と解決方法

先日、当ブログでも触れた「サルの自撮り著作権問題」について、議論に大きな進捗があ …

著作権本
著作物等の利用円滑化のためのニーズの募集 文化庁

文化庁が本日、「著作物等の利用円滑化のためのニーズの募集について」をリリースしま …

イギリス
イギリス著作権法改正

以前にも、パロディについてやクラウド上の私的複製についてなど、ばらばらと紹介しま …

本
自炊代行 知財高裁判決 解説と感想

自炊代行の知財高裁判決が出ました。 淡い期待は叶わず、やはり事業者の著作権侵害と …

特許公報への直リンクと、特許公報の著作権

例えば、Googleがこんな特許を取りましたよー、とTwitterでつぶやきたい …

10300018_10206021857646248_5668216005441996795_n
香月啓佑×IPFbiz ~インターネットユーザー協会(MIAU)の活動~

対談シリーズ第23回目、今年の締めは、一般社団法人インターネットユーザー協会(M …

パブリシティ権3
プライバシー権・肖像権・パブリシティ権の違いと関係

・パブリシティ権と肖像権は、何が違うのか?・パブリシティ権とは別に、肖像権の侵害 …