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岩下卓司×IPFbiz ~弁理士×税理士、特許会計事務所という形~

      2015/06/22

対談シリーズ第18回目は、弁理士・税理士の岩下卓司さんです。

全国的にも非常に珍しい「特許会計事務所」という形で、岩下特許会計事務所を熊本で開業されています。

特許庁出身なので、私の大先輩に当たるのですが、突然のお願いにも関わらず上京されるタイミングでお会いさせて頂きました。
弁理士と税理士というダブルライセンスをどのように活かして業務をされているか、お話を伺いました。

岩下卓司

安高:岩下さん、よろしくお願いします。特許会計事務所という業務形態はとても珍しく、ずっと話を聞いてみたいと思っていました。岩下さんも元々特許庁にいらっしゃったんですよね。

岩下:特許庁には5年間勤めていました。特許庁での仕事は、審査というデスクワーク中心でちょっと自分には向いていないところもあって。

安高:向き不向きの出る仕事ですよね。私は4年間で辞めたので、岩下さんは私より1年長く辛抱したことになりますね(笑
税理士の勉強はいつ頃から始めたんですか?

岩下:入庁して4年目くらいから、簿記の勉強を始めたんですよ。父が税理士だったということもあって。

安高:なるほど、お父様が税理士だったんですね。それで実家の税理士事務所を継がれた形ですか?

岩下:そうですね。税理士試験は途中まで頑張ったけど厳しいなと思って、最終的には税法免除の地元の大学院に行って、税理士資格を取得しました。

安高:特許庁を辞めた後に大学院に行かれたんですか?

岩下:夜間のですけどね。実は妻が意匠課の同期で、一時期は妻の収入に頼りながら。

安高:お、庁内結婚ですね。

岩下:後に妻も辞めるんですけど。実は妻もダブルライセンスなんですよ。登録はしていないですけど。

安高:夫婦で弁理士・税理士ですか!?すごい夫婦ですね。

 

特許会計事務所とは

岩下:地元の熊本に帰ってからは、父の税理士事務所を継いで業務をしています。

安高:元々は税理士事務所だったものを、岩下さんが継いで、特許会計事務所として拡大されたんですね。

岩下:拡大したと言っても実際のところ、収入面でいうと、税務関係と知財の割合は7:3~8:2くらいで税のほうが大きいですよ。

安高:税務業務が中心なんですね。

岩下:ええ、税務をベースとしながら、自分のテーマでもあるけど、知財と税・会計を融合したビジネスモデルを模索しつつあるところです。明確な答えはまだないですけどね。
一つは、ベンチャー支援ということで、税務主体で面倒をみながら、必要に応じて知財の方もサポートする。知財部を持たないような中小企業の知財部的役割として活用してください、という感じですね。

安高:税務業務だと、顧問契約という形で継続的なサポートになりますもんね。それをベースとしながら、同じクライアントさんに、知財のほうでも何かありますか?というのを包括的にサポートされていると。

岩下:そんな形に落ち着いてきていますね。
突発的に知財のトラブルがあって、税務のほうは別の税理士にお願いしているけど、駆け込み寺的に知財だけコンサルしてくれという話も何件かありましたけど。ほとぼりが冷めると、今月までで大丈夫ですと、長続きしないですよ。
基盤として、税務・会計がベースにあって、+αで知財ということが、一番長続きしますね。

 

知財価値評価

安高:なるほど、中小企業やベンチャー企業に対して、税務で継続的にサポートしながら、+αで知財のフォローもするという形が、岩下さんの見出した知財と税務の連携ということですね。

岩下:例えば知財の価値評価も、何かあるんじゃないかと思って、以前は知財価値評価推進センターに入っていましたけどね。

安高:私は今年度から、知財価値評価推進センターの運営委員に入りましたけど、多分、岩下さんがいらした頃と大勢は変わっていないですね。面白いテーマで、何かあるんじゃないかなーと検討しているけど、なかなか難しいと。そんな状況が続いているように思います。
世間的には昨年度からは特許庁の事業で、知財の評価に基づく融資ということで知財評価書なんかも進められていますけど。

岩下:知財融資とか、知財信託なんかも、数年前に盛り上がりましたよね。
私が経緯を見てきて感じたのは、確かに知財の価値評価が必要となる場面というのはあって、そして実際のところ知財の経済的価値というのは必ずあるんだけど、結局その測定ということになると、神のみぞ知るという状況になっていて。
評価精度を上げようとして、金融工学的な仕組みを取り入れたり、色んな人が様々な手法を提唱していますけど、最終的には寄与率というアバウトなものをドンと掛けて計算してしまうので、ちょっとなあと、当時は思いましたね。

安高:残念ながら、基本的なところは今も変わっていないですね。

岩下:だから、価値評価というのは大手の会計ファームがやって、中身よりも、あそこが出した評価だったら間違いないだろうということかなと。私のような個人の事務所が目指す方向じゃないのかなと思って、途中から興味が薄れていきましたね。

知財と会計・税務の連携

安高:話は変わりますけど、岩下さんは特許庁出身で、勉強して税理士資格を取って税理士事務所を継がれたわけですが、税の業務は経験が必要ですよね。私ももうすぐ公認会計士を登録する予定で、税理士の登録も一応できるわけで、岩下さんのような業務形態には興味があるんですが。税理士としての仕事が出来るようになるのは、なかなか大変そうだなと思って。

岩下:税の世界というのは、肝心なところが物の本に書いてないんですよ。というのは、肝心なところは怖くて誰も書けないんですね。教科書どおりの解釈論はあるけど、際どいケーススタディ的な事は、本に書いちゃうとリスキーなので。
そういう情報を収集するのは、やっぱりOJTで経験を積むのと、あとは同業からの伝聞でしか収集できない。どこかで修行をするしかないから、時間はかかりますよ。

安高:でも、面白そうですよね。

岩下:税理士の仕事は何でも屋的なところがあるから。ベンチャー支援というと聞こえはいいけど、日本ではベンチャー支援といっても米国みたいな花形のイメージとは少し違うかもしれないですよ。
私の場合は特許庁を出ていきなり税理士事務所だから、特許庁の頃に周りにいた人とは大分違いますから、なんというか、親心的な感じで接しているところはありますね。
それでも、一国一城というか、自分で自由な仕事を選択できるから、今のほうが楽しいと思っていますけど。

安高:そういうのは羨ましいなと思います。岩下さんの今の仕事は、税務がメインなんですよね?

岩下:そうですね、両方ともきっちりやろうと思うと、時間的に厳しいですから、特許に関しては積極的な営業はしていなくて、既存のクライアントさんとか、舞い込んでくる紹介をこなしています。

安高:出願業務はそんなにはしていないんですね。

岩下:弁理士としての出願でお金を稼ぐというのなら、ダブルライセンスである必要はなくって、税理士と弁理士が一人ずついればいいだけの話ですよね。
自分の強みを生かす、目指す方向性としては、出願がメインではなくて、取った後のマネジメントというか、活用の部分で他の弁理士にはできない強みを打ち出していくことが大切です。

安高:とはいえ、出願業務のほうがはっきりとした形があって、受けやすいですよね。

岩下:そうですね、出願のほうが、料金の相場もあるし、納品物としての形もあるし、稼ぎやすい仕事でしょうね。活用のコンサルというと、形の見えにくい仕事で、いくら請求していいかも分からないし。だから、弁理士全体としても、そういう方向を目指していかないといけないと言いながらも、出願のマンパワーを減らしてまでもそれをやろうとしている弁理士は少ないと思います。
でもニッチな需要かもしれないけど、特に中小企業においては、そこが必要とされている部分かなと思いますよ。

安高:なかなか難しいところですね。

岩下:知財のコンサルといっても、継続的に毎月クライアント先に訪問して料金を貰うのは難しいですからね。ただ、一回でも深く懐に入って、信頼関係ができたら強いと思います。

安高:岩下さんの場合は、税理士業務ということで顧問契約で毎月継続的に訪問して、+αで知財の話もできると。そこが岩下さんなりのダブルライセンスの強みということですね。

岩下:収益としては税理士の金額が大きいけど、付加価値としては、もしかしたら特許の部分に価値を見出して払ってくれているお客さんが多いのかもしれない。
オーナー企業の社長さんと深い信頼関係ができると嬉しいですよ。そういう人にサポートをして喜んでもらえる、そういう仕事が私にとっては楽しいですね。

安高:ちなみに、岩下さんは税務の業務をベースとしながら、+αで知財のサポートもされている形ですけど、逆の場合、つまり弁理士業務をメインとしながら、税務会計のサポートもできますよという業務形態はどう思いますか?

岩下:逆の場合は、、ちょっと想像しにくいですね。というのは、弁理士と税理士の仕事を比べると、弁理士のほうが密度が濃いんですよ。だから弁理士の片手間に税理士業務をするのは難しいんじゃないでしょうか。

安高:密度が濃いというのは、業務に自分の時間を多く必要とするといことですね。確かに弁理士の出願業務のほうが、自分の時間を切り売りしているという側面が強いかもしれませんね。

岩下:ええ、変な話、税理士のほうが時間のやりくりがしやすいんですよ。だから、税理士の仕事をベースにしながら、中小企業やベンチャー企業に対して特許のアドバイスもできるというのが、ダブルライセンスを生かせる方向性かなと考えています。

 

 

岩下さん、ありがとうございました。

特許会計事務所という形は、ベンチャー・中小企業支援の一つの理想的なモデルケースのように感じます。地方にいるのがもったいない。
企業の経営者と深い信頼関係を築いて、頼られるような存在になるということを重要な価値観としている岩下さんでした。考えさせられます。

 - 知財会計

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