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知的財産価値評価 概説 ~特許売買を例に~

      2014/12/14

1.知財価値評価とは

企業価値に占める無体財産の割合が高まり、知財の活用や流通の必要性が叫ばれる中、知財価値評価の重要性はますます高まりつつある。

一言に知財の価値評価と言っても、そこには様々なものが含まれる。

まず知財の種別であるが、特許権や商標権といったいわゆる狭義の工業所有権から、著作権のような産業財産権、さらにはノウハウやソフトウェアといった権利として登録されていない知的財産まで様々である。その種別によって価値評価の考え方が全く異なるものではないが、ここでは分かりやすく「特許権」に焦点を絞る。

続いて価値評価の種別も様々である。整理の仕方にもいくつか考え方があろうが、大きくは定性評価と定量評価とに分別され、定量評価の中にも金銭的評価と非金銭的評価とに分かれる。

知財価値評価1

特許権の定性評価と言えば、例えばその権利が広い・狭い、無効になりやすい・なりにくいといった感覚的な評価や、製品技術が特許権の技術的範囲(権利範囲)に含まれるか否かといった評価も含まれる。

続いて特許権の非金銭的な定量評価と言えば、例えば特許権の広さや総合的な価値について、100点満点でスコアリングするような評価が考えられる。また、評価項目ごとに、権利の広さは5段階評価で3点、侵害探知容易性は2点などと評価することも企業内の知財実務ではよく目にすることである。ここで言う3点なり80点なりという点数自体に、絶対的な意味があることは少なく、あくまで相対評価としての定量評価であろう。

最後に、特許権の金銭的な定量評価は、特許権に金銭的な価値をつけることに他ならない。狭義の知財価値評価と言えば、この金銭的な評価を指す事が多いようである。特許権の売買のような知財の流通や、企業の経済活動における知財活用を考えるときには、他の活動とあわせて金銭評価をすることが重要である。この特許は良い特許ですと言われても経営者は判断ができず、この特許には何円の価値があると言って初めて合理的な意思決定が可能となる。

ここでは、特許権の金銭的な評価について、その概要を紹介していきたい。なお、金銭評価の材料として、特許権の定性評価は必須であり、その定性評価を何らかのスコアリングで定量評価し、それと事業活動が生み出す金銭との組み合わせによって初めて特許権の金銭評価ができるものであるため、定性評価を無視して金銭評価のみの話ができるわけではないことには留意されたい。

2.知財価値の性質

各論に入る前に、知財価値の持つ特殊性について言及をしておく必要があろう。無体財産の価値評価の特殊性と広く捉えてもよいが、ここでは特許権を念頭において説明する。

特許権の資産価値は、特許発明に係る事業を独占的に実施できることによる付加価値に起因すると考えるのが相当である。もちろん価値評価に際しては、特許権の使用価値とは別に市場価値、即ち売却価額を考える必要もあるが、売却価値についても、購入先が使用する上での価値から算出されるため、やはり特許権の使用である事業活動による価値に帰着する。

そうすると、特許権を有し、事業を実施する主体によって事業規模は変わりえるため、特許権の絶対的な価値を算出することは困難である。これを特許価値の「相対性」と表現する。特許の価値とは絶対的なものなり得ず、あくまで相対的なものなのである。
また特許を有する主体が決まっても、その使用の態様や事業計画によっても特許価値は大きく変動する。あくまで仮定の事業計画による仮の価値しか算出ができない。これも「相対的な」価値という表現の中に含めることにする。

さらには、特許はその有する者が使用して初めて現実的な付加価値を生み出すものであるため、特許単独での「換価性」に乏しいという性質を持つ。即ち、自社が保有する特許群に1億円の価値があると評価されたところで、それはその事業を実施している自社だからこそ発揮される価値であり、他にその特許を1億円で購入する企業が存在することを保証するものではない。
特許の流動を考える場合は、自社にとっての価値のみならず、購入する他社にとっての価値を評価することが重要となる。この換価性の低さが、特許の流動性を妨げる要因となる。また、特許権を担保とするいわゆる知財金融においても大きな問題となる。特許権を担保として取ったところで、投資企業が破産等した場合にその担保が1億円で換金される可能性は極めて低い。換価性の低さにより、特許権の担保物としての機能は制限される。

このように、知財の価値評価に際しては、あくまで相対的な価値しか算出ができず、その価値も換価性が低い仮の価額であることに留意が必要である。だからこそ、知財価値の算出手法には様々なアプローチがあり、その採用の仕方によって算出される額は大きく異なる。つまり、価値評価を行う場面や目的に照らして、適切な算出手法を選択する必要があるのである。

3.知財価値評価の目的

以上のように、知財の価値を算出するのに絶対的な算出手法は無く、まずは価値評価を行う目的を十分に整理することが重要となる。

広く定性評価まで含めると、企業の知財実務において最も多く登場する価値評価のニーズは、出願や審査請求、年金支払いの場面で登場する。つまり、この発明は特許出願をする価値があるのか、審査請求をする価値があるのか、米国にもファミリー出願する価値があるのか、維持する価値があるのか、といった判断である。通常これらの判断は、知財実務担当と技術担当との合議等により行われるが、そこで手間をかけて金銭的な価値評価まで行う必要性には乏しい。あくまで定性評価として、それが「良い」発明かどうか、事業実施に関係するかどうか等に基づいて判断される。

一方で弁理士会のアンケート調査によれば、金銭的な評価が必要となる最も多い場面は、職務発明規定に基づく報奨金の支払いである。登録時に3万円といった定額の報奨のみならず、事業への貢献に基づく実績報奨金の支払いが求められており、その算出の難しさや納得性の低さから、職務発明に関する訴訟も少なくない。
これに関しては、判決等によりある程度の考え方は開示されており、後述するインカムアプローチにより、事業利益に発明貢献度等のパラメータを乗じて算出される。

続いて、外部に価値評価を依頼することが多いであろう目的は、移転価格税制により要求されるものや、M&A後に行われるPPAである。これらの評価については、ある程度形式的に計算がされている実態があり、大きな問題が起こるまでには至っていないというのが筆者の感覚である。

おそらく、知財の価値評価が最も現実味を帯びて問題となる場面は、知財自体の売買の場面であろう。特許権を売却してマネタイズしたい、必要な特許権を他者から購入取得したい、このような場面において特許の客観的な価値評価が必要となり、そのようなニーズは今後高まっていくと考えられる。

なお、特許権売買においては、知財のバリュエーション(価値評価)とプライシング(値決め)とは分けて考えるのが望ましい。既述の通り、特許に絶対的な一つの評価価値を決めるのは困難である。あくまでも、ある考え方によってはいくら、別の考え方によってはいくら、という幅のある複数の価値評価がされるものであり、最終的なプライシングはこれらの客観評価と他の様々な要因に基づき、当事者間の協議のもと決定されるものである。
以後、特許価値評価の手法について各論で説明していくが、基本的にはこの特許売買の場面を想定した説明の仕方になる。

なお、その他にも財務諸表作成目的の価値評価もありえるが、以前にも説明したとおり、現在の会計基準においては資産計上できる特許権は非常に限られており、取得原価基準によるため、大きな問題とはならない。
また、知的財産報告書のような、財務諸表とは別の枠組みで、自社の知財価値を投資家等に向けて公表することも期待されるが、これについては若干の特殊性があるため、別の機会とする。

【関連記事】
知的財産報告書と知的資産経営報告書の違い
知的財産権のBS資産計上について

4.特許価値評価の手法 概要

特許の価値評価手法は、①インカムアプローチ、②マーケットアプローチ、③コストアプローチの3つに大別されることになる。これは無形資産全般における価値評価手法として古くから用いられる整理であるが、現在の特許価値評価においてもこの分類は有益である。

インカムアプローチとは、将来の利益(インカム)に基づきそれを現在価値に置き直した価額を資産価値とする考え方である。資産とは将来収益の源泉であるという基本的な会計定義に基づけば、この考え方が最も本来的な評価手法であろう。特許権を保有する者独自の都合を反映することができるため、相対的な価値であるという特許価値の性質に照らしても合理的な考え方である。しかし、事業計画に基づき計算するため、恣意性が入りやすい、保守性に欠くといったデメリットもある。また、一般的に、価値が大きく出すぎるという特徴がある。

マーケットアプローチとは、市場における類似の取引を参考にして価額を決める考え方である。十分な流動性があり市場が確立している商品であれば、最も適時で換価性の担保された価値を算出することができる。しかし、特許権の売買は公開されている事例も少なく、市場が確立しているとも言いがたいことから、参考に出来る売買事例は非常に少ない。

コストアプローチとは、その特許を取得するに要した対価に基づき価額を算出する考え方である。コストをどの範囲まで含めるかにもよるが、最も保守的な価値が算出される。

これら3種類のアプローチの中にも、複数の計算手法の派生がある。そして留意すべきは、これらの計算手法はどれか一つが正解というわけではないということである。一般的に、インカムアプローチが最も高い価値が算出され、コストアプローチが最も低く、マーケットアプローチがその間に位置される。これらの評価額はいずれも参考にすべき価値評価であり、仮に特許の売買を行うのであれば、これら複数の値を参考にしながら、時にはその加重平均によって、時にはレンジ内での協議によってプライシングがされることになる。

5.インカムアプローチ

インカムアプローチは、将来収益を現在価値に割り引くものであるが、将来収益の捉え方によっていくつかの派生がある。そのうち代表的なもののみ紹介したい。

5-1. DCF法

単純DCF法とも言う。あまり単純ではない。
Discount CashFlowの略であり、将来キャッシュフローを現在価値に割り引いて計算される。インカムアプローチにおける代表的な計算手法であり、単にインカムアプローチと言うとこのDCF法を指すことが多い。
キャッシュフローとして、営業活動によるキャッシュフローやフリーキャッシュフローを用いることがあるが、単に利益をそのまま使うこともあり、その場合もDCF法と表現されている。

簡易に表現すると、計算式は下記の通りである。

知財価値評価2

CFk:k年目のキャッシュフローである。合理的な事業計画に基づき算出される。事業の範囲は特許権がカバーする範囲が原則であるが、事業範囲が広くなれば当然CFも大きくなる一方、貢献度(α)によって調整され得る。
α:貢献度。寄与率とも言う。算出が最も難しいパラメータの一つ。
r:割引率。WACCを使うかWARAを使うかという論点があるが、詳しい話は割愛する。
n:n年目までCF計算するという期間範囲。通常は特許の存続期間を用いるが、合理的な事業計画が作成可能な範囲にすることも考えられる。

以上のように、比較的簡潔な計算式で表現されるものの、その実態は非常に複雑と言って良いだろう。まず合理的な事業計画に基づく将来キャッシュフローを算出する必要があるが、その事業の範囲を評価対象となる特許がカバーする範囲に限定することが困難な場合が多い。
また、貢献度αの算出は、具体的な根拠が乏しいことが多く、納得性に欠ける。
事業の将来リスクはキャッシュフローに反映させることもできるが、割引率にて反映させることも考えられる。

この方法で計算すると、通常は巨額の価値が算出されるが、その納得性が乏しいのは主には貢献度αの根拠が弱いことに起因する。例えば利益四分法に基づきαを25%にすると、利益の25%は特許の貢献であることを意味するが、果たして特許がそれだけの事業貢献をしているか、説明できる者は少ない。
合理的な額にするため、これに更なるパラメータを乗じて額を下げることもあるが、その理論的根拠も疑わしい。

仮に特許のライセンスアウトによるキャッシュインが実績としてあるのであれば、そのキャッシュを用いて計算することで、確からしい価値を算出することが出来る。逆にそのようなライセンスが無い場合、安易なパラメータで計算するのではなく、まずは特許権が本当に事業に貢献しているのか、その点を定性的に詰めることから始めなければDCF法の採用は難しいであろう。

とりあえず簡易に計算出来れば良いというのであれば、
CFは事業計画に基づく売上を用い、
αは利益四分法に基づき25%を用い、
rはCAPMでWACCを算出するか、面倒であれば6%程度を用い、
nは対象特許の平均残存期間を使えばよいだろう。

【関連記事】
特許の貢献度

5-2.免除ロイヤリティ法

DCF法における将来キャッシュと貢献度の困難性を克服すべく、近年よく見られる計算手法が免除ロイヤリティ法である。これは現実の将来キャッシュに基づくのではなく、仮にこの特許を持っていない場合、あるいは競合他社が保有した場合に当社が支払うべきロイヤリティがあるはずで、特許を保有することでそのロイヤリティが免除されると考え、免除される将来のロイヤリティを現在価値に割り引く計算手法である。

計算式は下記の通り。

知財価値評価3

売上kはk年目の売上で、aはロイヤリティ率である。

この計算手法のメリットは、パラメータがシンプルで、かつ算出の根拠が示しやすい点にある。つまり貢献度の算出は非常に困難であるが、ロイヤリティ率と言えば一応の統計公開情報があり、概ね数%前半であるという業界内の共通見解がある。また、売上の範囲についても、仮に競合に権利行使されてライセンスを払うとしたら、と考えれば比較的容易に算出できる。

デメリットは、算出される価額が大きくなりすぎることである。つまりこの考えは、特許権が他社に渡り、権利行使され、訴訟しても破れ、ライセンスを払わなければならないという最悪のシチュエーションに則った計算となる。
これを果たして客観的な評価価値と呼んでよいのか疑義があるが、バリュエーションの一つと考えれば、自社からみた最悪のケースに基づく最大額であり、価格交渉の際に覚悟すべき上限と捉えるのが適切であろう。

これも簡易に計算できれば良いだけなら、売上は事業計画に基づく売上を用い、ロイヤリティ率aは業界平均値を、探すのが煩雑なら3%程度を用いておけばよい。

なお、何らかの理由でロイヤリティを払うという仮定が考えにくければ、訴訟を起こされた場合に要する手続き費用など、特許を購入することで免除される費用に基づいて計算することも合理的である。これもアプローチとしては一つの免除ロイヤリティ法と呼んでよいだろう。


その他、インカム法には様々な派生があるが、ここでは割愛する。ほとんどの場合は、上記2つの手法で計算されるであろう。
なお、筆者が思うインカム法最大の欠点は、特許権の数や強さが反映しにくい点である。特に特許権の数だが、事業をカバーする特許権の数が1件だろうが10件だろうが1000件だろうが、算出の基となる売上なりキャッシュフローに変わりは無い。一応は貢献度αのパラメータで吸収することも可能だが、容易ではない。

ところで、DCF法と免除ロイヤリティ法が理論的に一致すると考えれば、売上×ロイヤリティ=利益×貢献度となり、事業の利益率が分かれば貢献度がロイヤリティからも導かれるのは興味深い。

6.マーケットアプローチ

マーケットアプローチは、市場の類似取引を参考にする原始的かつ分かりやすい考えであるため、多く語ることは無い。単純に、参考となる外部情報が得られるかどうかに拠っている。

言うまでもないが、特に日本で特許売買の公開情報は少なく、マーケットアプローチで確からしい価額を算出することは困難である。したがって、他の手法で根拠のある額を算出しながら、マーケットに照らして異常な額になっていないか確認する程度に使われることが多いだろう。

根拠を示すことはできないが、様々な情報に照らすと、日本特許では1件当たり数百万円前半、米国特許では数千万円前半で取引されることが多いであろう感覚を筆者は持っている。

なお、条件が異なる事例を用いる場合は、価格をそのまま採用することができるかの検討も必要となる。例えば米国で類似の取引が1000万円でされている場合に、日本での同取引も1000万円とすることは妥当ではなかろう。
日本と米国では市場規模が異なり、その特許による将来収益は同じではない。また、免除ロイヤリティ法のようなリスク軽減の観点から見ても、日本と米国の訴訟件数は大きく異なる。これらのパラメータでもって調整した額にすべきと考えられる。

7.コストアプローチ

コストには、歴史的(ヒストリカル)コストと再構築(リプレイスメント)コストとが考えられるが、現実に特許権の取得までに要した費用の積み上げを特許権価値とするのが分かりやすいであろう。
手続き費用であれば、1件当たり数十万円後半程度であり、非常に安い価額となってしまうのは想像に難くない。これはそのままコストアプローチのデメリットであり、また保守的で財務諸表にも使える数値となり得るというメリットにもなる。

一般には、どんなに安くともこの額を下回ることはないという交渉の下限として用いられることが多い。
一方で、コストの中に手続き費用のみならず開発費用まで含める考え方も存在する。そうすると安くなりすぎるというコストアプローチのデメリットを解消することになるが、開発費用のどの程度までを特許価値に含めるかという計算は容易ではない。

なお、非侵害代替技術の開発に要する費用に基づく評価もコストアプローチと呼ばれる。

8.プライシング・特許売買交渉

以上、典型的な価値評価手法を紹介してきたが、これを踏まえて特許権売買におけるプライシングの考え方を紹介する。

まず重要となるのが、繰り返しではあるが特許権の価値は相対的であるということ。つまり譲渡人と譲受人とによって、特許権の価値は異なることを理解する必要がある。
極端な話、譲渡人が大企業で特許発明に係る大きな事業を実施しており、譲受人である中小メーカーがそれに関する僅少な事業を実施したい場合。当然であるが、譲渡人である大企業はその特許を自社事業に基づき高く評価し、譲受人である中小メーカーはそれを低く評価する。それぞれの価値評価は何ら間違っていないが、当然の結果として取引は成立しない。

その逆のケースであれば、取引が成立するマージンは非常に広く、その間のどこかで、交渉の上手いほうに有利な額で、成立するであろう。
つまり、取引が成立するかを見極めるにも、自社に有利なプライシングをするためにも、自社と相手の双方の立場で価値評価をする必要がある。

そしてプライシングに向けた価格交渉で重要なのは、価格のレンジを用意しておくことである。例えば500万円だというピンポイントの価値評価のみがされている場合、交渉によってそれが上下するときに、どこまで許容できるのかが分からない。交渉のためには、少なくとも下限と上限を用意し、その上で落とし所となり得る額、また初期提示額などを戦略上用意する必要がある。

一般的には譲渡人は高い額を期待し、譲受人は価値を低く見積もる。したがって、譲渡人の立場に立ったコストアプローチが交渉の下限となり、譲受人の立場に立ったインカムアプローチが上限となるであろう。

9.まとめ

以上、知財の価値評価について、特許権の売買を例に挙げながら概要を説明してきた。特にインカムアプローチにおいては、まだまだ詰めるべき論点は多いが、それはまた別の記事にまとめていきたい。
知財の価値評価において重要なのは、納得性のある価額を算出することである。それは根拠ある理論と数値に基づいているという「過程」と、確からしい額になっているという「結論」の双方が重要となる。
数式に基づいてペンを舐めるだけであれば誰にでも出来るが、確からしい、意思決定に使える価値評価を行うには、特許と事業の関係性を十分に理解し、定性評価を十分に行った上で計算手法を選択し、各パラメータを決めていく必要がある。

DCF法よりも複雑な計算手法はいくつも提示されているが、思うに、いたずらに計算式を複雑にするよりも、特許が事業にどのように貢献しているか、どのようにキャッシュを生み出すかを現実的に分析し、そのパラメータをシンプルな計算式に当てはめるほうが本来的であろう。
また、全ての特許に機械的・客観的・自動的な価値を算出するようなシステムは、試みとして非常に興味深いが、現在のところ信用していない。

最後に、知財の価値評価手法は未だ確立されていないと10年以上前から言われ続けているが、期待されるような形で価値評価の手法が「確立」することはないだろうと思われる。ある意味では価値評価手法としての計算式はとうの昔に出来ており、ただその取引実績の少なさから評価結果の説得力が乏しいだけである。今後公開されるような知財取引が積み重なっていけば、価値評価手法としては現在と大きく変わることなく、世に認められていくだろう。
だがそれは、評価の手法が「確立」したとしても、やはり評価は困難で手間のかかる作業あることを否定できないことを意味する。
あるいは、特許の取引市場が活発化し、すべての特許に市場価値がつくようなことがあれば、それは一つの理想形なのかもしれない。

特許価値評価

 

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