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知財業界の就職・転職事情 文系出身者の悩み

   

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前回の知財業界の就職・転職事情の続きです。

採用担当なりOB訪問なりをやっていて、学生さんからよく聞く悩みが、
「文系出身で、技術や理系科目は苦手なんですけど、知財業界でやっていけますか?」というものです。

今回は、文系出身者の知財業界の活躍をテーマに、考えていこうと思います。


さて、知財といってもそれなりに幅は広く、特許はもちろん、意匠・商標や、著作権もあり、法域としては不競法なども絡んできます。
また同じ法域であっても、出願・権利化フェーズだけでなく、侵害・活用フェーズや、事業における法務相談、訴訟対応、企画まで幅広い業務があります。

したがって、「文系が知財業界でやっていけるか?」という問いに端的に答えると、「業務内容によるし、人によるし、頑張り次第」ということになります。


とはいえ、それでは満足のいく答えにはなっていないので、もう少し掘り下げていきましょう。

まずはデータを見ていきましょうか。

 

弁理士の理系・文系割合

知財人材を代表する弁理士ですが、
ここ10年ほどの弁理士試験合格者の理系・文系割合がこちら。

弁理士文理割合

あまり時系列の変動はなく、理系:文系=87:13くらいでしょうか。
やはり理系のほうが圧倒的に多いことが分かります。


ちなみに、弁理士試験「受験生」の文理割合はこちら。

弁理士文理割合

受験生のほうが少し文系割合が高いため、相対的に、
理系のほうが弁理士試験の合格率が高いことが分かります。

弁理士試験は基本的に法律科目なので、試験自体は文系有利だと言われることが多いのですが、結果は逆ですね。
1つには、選択科目が理系修士で免除になることが理由になりそうですし、また文系のほうが試験への本気度(執着心)が低いのかもしれません。


さらに、登録弁理士の文理割合は、ほぼ80:20となっています。
近年の試験合格者傾向とはまた異なりますね。

理系の合格者があまり登録していない可能性も考えられますし、
昔の試験は最近よりも文系が受かりやすい内容だったのかもしれません。

 

特許・意匠・商標の出願市場

もうひとつ別の観点のデータとして、
特許・意匠・商標それぞれの出願件数から市場規模を見てみましょう。

2013年の出願件数をざっくり見ると、
特許:33万件
意匠:3万件
商標:12万件
といったところです。

次に、事務所に依頼する場合の各出願料金は、
特許:30万円
意匠:10万円
商標:5万円
くらいだと思います。


ここから、すごく単純に出願料金だけで市場を計算すると、
特許:900億円
意匠:30億円
商標:60億円
くらい。

もちろんその他に関連する業務は多数ありますが、大体はこの比率に基づき、特許が90%くらいでしょう。
企業の知財部門も、もちろん業種によりますが、これをもう少しマイルドにしたくらいの比率でしょう。


ここから、
「文系でも意匠や商標など、技術に関係なく担当できる分野はあるよ」
という主張のみでは、結構に狭き門、少ない市場になってしまうことになります。

弁理士の8割程度は理系で、その他の事務所勤務者や企業知財部門の文理割合も、これに近い感じかなと思います。

所感

最初の問いに戻ります。
「文系出身者は知財業界でやっていけるのか?」

現実問題として、文系出身者の割合は少ないですし、技術(特許)を避けていくとなれば、どうしても狭き門になってしまいます。

しかし、文系出身で知財業界でバリバリ活躍している人も多いですし、一緒に働いていて、全然気づかなかったけど実は文系出身でしたという人も周りに多数います。


結局元の話に戻るのですが、
「人によるし、頑張りによる」という所が大きいのですね。


相談内容などを聞いていて、若干しんどいかなと思うのは、
「理系科目は苦手で、難しい技術は避けていきたいのだけど、知財戦略を立てたり知財の活用などをやっていきたいです」という人。


割り切っていて、特に悩んでいないし、大丈夫だろうと思うのは、
「法学系出身で、商標を専門にやっていきたい。経験が積めれば事務所でも企業でも構わない。」とか
「デザイン系出身で、意匠を専門に転向したい。」
とかいう人。


頑張り次第なのは、
「文系出身だが、理系科目の抵抗はないし、これから勉強をしながら、知財業務の経験を積んでいきたい。」という人。

 

最後の頑張り次第の人が苦労するであろうのは、おそらく最初の1社、最初の1歩だけだと思います。
一度どこかで経験を積めれば、あとは文系であることの問題はほとんど感じなくなるのではないかと思いますし、実際に経験者と一緒に働いてほとんど差は感じません。
ただし、最初の一歩、新卒であれば最初の就活、転職であれば最初の転職活動においては、どうしても若干不利に働くことはあろうかと思います。そこは頑張るしかないし、頑張ると言うしかないでしょう。


個人的な所感ですが、
冒頭のような悩みが増えているのは、大学の構造によるところが大きいように思います。

大学で知財を教えるところが増えてきていて、
もちろんそれは非常に良いことです。
ただ、知財とか知財経営を専門とする学科では、技術の専門知識を持たない人が輩出され、その人たちが実際の活躍の場を求めて就職活動をしても、知財コンサルをやっている企業などでは、専門的な技術バックグラウンドのほうを重視していたりして、そこでギャップが生じます。

知財経営は学問としても非常に興味深いところですし、大学でも大いに研究して頂きたい分野ですが、それのみを専攻した学生さんの活躍の場は非常に限られてしまう。

ではどうしたら良いのかと問われても難しいのですが、
なかなかに悩ましい問題が存在するように思います。

 - 弁理士

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