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稲森謙太郎×IPFbiz ~すばらしき特殊特許の世界~

   

対談シリーズ第15回目は、科学技術ジャーナリストであり、弁理士であり、米国公認会計士であり、東北大学特任准教授でもある、「いなぽん」こと稲森謙太郎(稲穂健市)さんです。

女子大生マイの特許ファイル」や「すばらしき特殊特許の世界」の作者だと言うと、ピンと来る人もいるかもしれません。
ユニークな特許本を出版し、やたらとマルチタレントな稲森さんに、現在の活動内容や出版のきっかけ、今後の展望などについてお話を伺いました。

inaho

現在の活動 東北大准教授

安高:稲森さん、よろしくお願いします。稲森さんは多くの特許本を出版され、また肩書きも多様で面白そうな方だとずっと思っていました。現在の活動内容から教えていただけますか?

稲森:今のメインの活動は東北大学ですね。

安高:東北大学ではどのようなことをされているんですか?

稲森:研究推進本部のURAセンターというところに所属しています。東北大学の研究戦略のオペレーションを目的に設立された組織で、まだ立ち上がって間もないのですが、私は弁理士で米国公認会計士ということで、産学連携や出資事業(大学傘下のベンチャーキャピタルがビジネスになりそうな案件に投資する)に関わっています。一例として、文部科学省の推進する革新的イノベーション創出プログラムCOI(センターオブイノベーション)の産学連携のプロジェクトを進めたりしています。

安高:なるほど。大学内の組織のことをよく分かっていないのですが、主に大学のマネジメントをやられているんですね。

稲森:はい。今のところ運営をメインでやっています。

安高:執筆活動は続けられているんですか?

稲森:はい。企画もいくつか進行中です。

出版のきっかけ

安高:どういうきっかけで出版に至ったんですか?

稲森:当時は大手電機メーカーで発明の権利化などを担当していて、そのひとつとしてネット分野もやっていたんです。そのとき仕事の参考になると思って、「いなぽんのホームページ」という自分のホームページを作ったんですよ。で、何かコンテンツがいるなと思ったので、変な特許を「いなぽんの特許大図鑑」として公開していました。

安高:変な特許というのは、たくさんありますよね。その中でもどのような特許を集めていたんですか?

稲森:電波系というか、本当に意味の分からない特許を集めている人はいますが、私の場合は、意味は分かるけど、内容のおかしな特許というのを主に集めていました。すると99年に、出版社の方から、これを本にしたいとメールを頂いたんですよ。

安高:なるほど、出版社のほうから連絡があったんですね。

稲森: それで、原稿を書くかネタを売るかみたいな話になって、自分で書けるから頑張ると言ったら、出版が決まったんですよ。

安高:実際に本にするのは、結構大変だったんじゃないですか?

稲森:最初は変な特許にコメントを入れただけの原稿を作ったのですが、「こんなのは本じゃない」と言われて、自分の文章をメインに書き直しました。やっとできあがったと思ったら、今度は「やっぱり発明者へのインタビューが必要ですね」と言われてしまいました(笑)そこで、本当に製品化したかなどを確認するために、色々な会社や発明者に電話したりメールを送ったりしました。また、国会図書館に調査に行って、欄外の説明書きを追加するなど、かなり時間をかけました。結局1年半くらいをかけたでしょうか。

安高:結構時間をかけてリサーチしたんですね。

稲森:それで出版に至ったのですが、当時は、ビジネスモデル特許ブームもあって、結構売れたんですよ。あっという間に1万部を超えて。それで出版っていいなと思いました。

安高:それが「知られざる特殊特許の世界」ですね。その最初の出版の時に、「稲森謙太郎」というペンネームで出されたんですよね。

稲森:ある意味ではふざけている本なので、本名で出すと何かしら支障があるかもしれないと思って、微妙に名前を変えたペンネームで出すことにしました。その時、出版社から何か肩書きを載せたいと言われました。当時は何も資格を持っていなかったので、色々考えました。出版に向けてかなり取材をしたので。これはもうジャーナリストだろうと。で、科学技術ジャーナリストという肩書きにしたんですよ。

米国へ

安高:これがきっかけで、執筆を続けられたんですね。

稲森:そうですね。雑誌の連載なども持ちました。その後、訳あって米国に転居したんですよ。

安高:そうなんですね。米国ではどのような仕事をされたんですか?

稲森:カリフォルニアにある研究開発拠点のマネジメントに関わりました。バブルが崩壊して日本経済が悪化する中、やっぱりシリコンバレーに学ぶべきだと盛り上がって、多くの日本企業が米国に拠点を作っていた頃ですね。2冊目の本「勝手に使うな!知的所有権のトンデモ話 」は米国で書きました。Amazonでは一部厳しいコメントもされているのですが、それは事実で、内容が充実しなかった最大の理由は、米国で書いたからなんですよ(笑)あとは出版社の方針で小難しいことを書かずに軽く読めるようにしようというのもありました。

米国公認会計士、弁理士

安高:米国在住中に、米国公認会計士を取られたんですか?

稲森:最初から資格に興味があったわけではないんですよ。ただ仕事の関係で、会計の知識が必要になりました。米国で日本語の助けを借りながら勉強できる手段として一番良かったのが、米国公認会計士(USCPA)試験の日本語の教材だったんですよ。

安高:確かに資格試験の教材は、勉強の手段としても普通に有用ですよね。

稲森:ええ、色々調べてみると、無理なく資格が取れますよみたいな営業がされていて、取れそうかなと思って。4科目あるのですが、科目ごとの合格が積み立てられたり、科目合格のステータスを1年半ためることができたり、1年に4回受けられたり、資格試験としては挑戦しやすかったと思います。ただ、試験勉強は想像していた以上にハードでした。財務会計はたいしたことないのですが、監査論が難しかったですね。

安高:米国公認会計士のほうが日本より簡単と言われますが、言語の壁はありますよね。弁理士試験は日本に戻ってからですか?

稲森:受験を決めたのは米国にいた頃です。米国公認会計士という難関試験に受かったばかりでハイになっていたのと、弁理士試験も受かりやすくなっているということでしたので、これも取れるんじゃないかと(笑)米国で勉強をはじめて、日本に帰国してすぐに弁理士試験を受けました。

安高:その気持ちは少し分かります。

稲森:米国にいるとき、日本国内での講演を依頼されることが何度かありました。本のすごいところは、出版から何年経っても読まれ続けることです。ただ、ある地方自治体から一度講演の依頼があって話が進んだ後に、結局断られたことがあったんです。税金を使ってやる企画ということで、主催者側に弁護士や弁理士を呼んだほうがいいという判断が働いたようでした。当時は何の資格も持っていなかったので、資格があるかないかで、信用度の点でも随分違いがあるなと思いました。弁理士試験を目指した動機のひとつですね。

日本に戻って

安高:日本に戻ってきてからは、どのような仕事をされたんですか?

稲森:大学との産学連携を通じて事業化を目指す橋渡しのような仕事をしました。ここで、うまく進まないことがあったので、大学側のオペレーションをなんとかしたいという思いが出てきました。

安高:それで大学に入ろうと思われたんですね。

稲森:そうですね。東北大学を選んだ理由は、日本で三番目に設立された旧帝国大学で、社会実装できる埋もれた研究が色々あるんじゃないかと思ったことと、米国生活と同じ期間を東京で過ごしたので、一度東京から出てみようと思ったことが大きいですね。また、震災の被災地復興のために自分で何か役に立てることがないかとも考えました。

 

出版への思い

安高:今後も、執筆に力を入れていきたいという考えですか?

稲森:そうですね。執筆だけではなく、社会との繋がりも維持していきたいです。日本は、知財立国を目指すべきと言われながら、国民全体としては知財に関する意識が低いじゃないですか。日本が生き残っていくためには、価値創造型の社会に変えていかないといけない。そのためにも、一般の人とか学生さんとかが読みたくなるような、分かりやすくて面白い知財の本って、もっと必要だと思うんですよ。私が本を書いている大きな理由の一つがそれですね。だから、面白くふざけたテイストにしながらも、役に立つ内容を入れて、読者の方が読んで賢くなったと感じるような本にしたい、といつも考えています。

安高:次回作の予定はあるのですか?

稲森:色々とネタはたまっていますし、ある程度書きためた文章もあります。商業出版に耐えられるレベルに企画が練り上がった段階で、世に出ることになると思います。

安高:楽しみにしています!

 

稲森さん、ありがとうございました。
稲森さんの本は、読みやすくて面白いので、知財に興味を持ち始めている方などにお勧めです。
本を出すっていいなと思いました。

 - 書評

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