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諸外国の補償金制度

   

諸外国の著作権補償金制度について、自分の勉強を兼ねてまとめました。

不正確な点があったら突っ込んでください。

ベルヌ条約

まずは全ての基本となる著作権のベルヌ条約について。

「複製権」についてベルヌ条約の第9条に規定されている。

(1) Authors of literary and artistic works protected by this Convention shall have the exclusive right of authorizing the reproduction of these works, in any manner or form.
(2) It shall be a matter for legislation in the countries of the Union to permit the reproduction of such works in certain special cases, provided that such reproduction does not conflict with a normal exploitation of the work and does not unreasonably prejudice the legitimate interests of the author.
(3) Any sound or visual recording shall be considered as a reproduction for the purposes of this Convention.

第九条 〔複製権〕
(1) 文学的及び美術的著作物の著作者でこの条約によつて保護されるものは、それらの著作物の複製(その方法及び形式のいかんを問わない。)を許諾する排他的権利を享有する。
(2) 特別の場合について(1)の著作物の複製を認める権能は、同盟国の立法に留保される。ただし、そのような複製が当該著作物の通常の利用を妨げず、かつ、その著作者の正当な利益を不当に害しないことを条件とする。
(3) 録音及び録画は、この条約の適用上、複製とみなす。


第2項において、特定の場合に作品の複製を許可すること(私的複製のような権利制限規定を設けること)は、各国立法府の裁量であると定められている。

ただし、そのような立法を行うにあたっては、3つの要件が課されており、「特定の場合」であって、「権利者の通常の営利的な利用を妨げず」、「著作者の正当な利益を不当に害しないこと」。


このスリーステップテストの第三要件をクリアするために、一部の国においては私的複製の権利制限規定を設ける際に、補償金が課すという方策をとっている。

しかし、ベルヌ条約において、補償金制度が必要と定められているわけではなく、補償金制度がベルヌ条約から必然的に導かれる、あるいは要求されているわけではないと考えられる。

 

日本の私的録音録画補償金制度

1992年の著作権法改正にて導入。

私的複製の中でも、録音と録画に関する機器と記録媒体に賦課される。
対象となるのは、著作権法施行令に限定列挙されている、CD、MD、DVDなど。


該当機器の価格に上乗せされ、
録音については私的録音補償金管理協会(SARAH、サーラ)が、録画については私的録画補償金管理協会(SARVH、サーブ)がそれぞれ、販売事業者に請求する。

補償金の額は販売価格の1~3%程度

2012年の東芝最高裁判決により、HDDレコーダは補償金の対象から除外されることが確認され、補償金額は近年大幅に減少している。

 

米国


1992年にデジタル家庭内録音法(AHRA)が成立し、デジタル方式の録音機器・記録媒体が補償金の対象とされた。

機器に価格の2%, 記録媒体に3%の補償金を課す。


制定直前のベータマックス事件を受け、録画が排除され、デジタル録音のみが補償金の対象となっている点に特徴がある。

1990年代後半には、HDD内臓の音楽プレイヤーを補償金の対象とするか争い(Rio事件)があったが、訴訟では権利者側の請求が棄却され、HDDプレイヤーは「デジタル音声記録物」に含まれないと判事された。
したがって、iPod等の機器は、補償金対象外となっている。日本と同様、保証金額は近年減少している。

 

欧州指令

欧州各国に入る前に、EU全体に影響を与える指令について。

2001年の情報社会指令(情報社会における著作権および関連権の一定の側面のハーモナイゼーションに関する欧州議会及び理事会の指令)にて、公正な補償金(fair compensation)が権利者に支払われること、または複製に対する技術的手段の適用を条件として、私的複製の制限規定を導入することが認められている。

第5条(2)加盟国は、次の場合に、第2条に規定する複製権に例外または制限を規定することができる。
(b)第6条に掲げる著作物その他の目的物に対する技術的手段の適用または不適用を勘案して権利者が公正な補償を受けることを条件として、私的使用のために、および直接にも間接にも商業的でない目的のために、自然人により行われるいずれかの媒体への複製に関する場合

これに従い、各国ごとに、記録媒体や機器に賦課金(levies)が課されている。
具体的な補償金の対象・額・徴収方法等は各国の法制度に任されることになる。

 

英国

英国では、元々私的複製が認められる範囲が狭く、家庭内の複製も原則は違法と解釈されていたため、補償金は認められてこなかった。
2014年に私的複製を広く認める法改正がなされ、その際にも議論があったようだが、結局補償金制度は制定されなかった。
先進国では珍しい、補償金制度の無い国である。

 

ドイツ

1965年に、西ドイツにて世界で始めての補償金制度が制定された。
補償金の対象も広く、iPod等の機器も補償金が課される。


ドイツ著作権法では、私的使用のために著作物の複製物を作成することは許されることとされている(第53条(1))が、2003年の第一次包括草案の成立により、明らかに違法に作成された著作物からの複製は、許されないこととされた。

補償金の対象は、デジタル・アナログの区別無く、私的録音・録画・複写等の複製機器・記録媒体の製造業者に対して請求される。
対象は54条dの別表に定められており、そこではアナログ機器を念頭に置いて作成されていたが廃止となり、その後の関係者の合意によりデジタル機器についても補償金の対象とされている。

補償金というよりは、私的複製に対する広い報酬請求権のようなイメージ。
おそらく、最も幅広い範囲に補償金が課される国。

 

フランス

1985年に補償金制度が導入された。

著作者は、公表された著作物の私的使用を目的とした複写又は複製であって、集団的使用が意図されない場合、当該行為を禁止できないこととされている(第122-5条1項)。
なお、2006年改正により、著作物の通常の利用を妨げるものであってはならず、かつ、著作者の正当な利益を不当に害するものであってはならないとする、いわゆるスリー・ステップ・テストの要件が追加規定された。これは、違法なソースからの複製など、私的複製の範囲から除外すべきものを念頭に置いて規定されたものと考えられている。


対象行為は、デジタル・アナログの区別無く私的録音・録画の媒体である。

機器から取り外しが可能な記録媒体だけでなく、機器に内蔵された記録媒体も補償金の対象とされている。
ハードディスク内蔵型の携帯オーディオレコーダーについては、2002年に補償金の支払いが義務付けられた。外付けのハードディスク及びフラッシュメモリについては、私的複製委員会で補償金の対象とするかどうか検討がなされていたが、2007年9月に補償金の対象とすることが決定された。
なお、パソコンに内蔵されているハードディスクについては対象とされていない。

補償金額がおそらく最も高い国で、MP3プレイヤーで1台15ユーロ課される。

 

スペイン

1987年に補償金制度を導入。

スペインでは、複製物を集合的な使用又は営利目的の使用に供しないことを条件として私的使用のために複製する場合は、著作者の許諾を要しないこととされている(第31条3項)。

なお、2006年の改正において、インターネット上で明らかに違法な態様で提供されているものからの複製は、私的複製の範囲から除外することが明確化された。

対象は、デジタル・アナログの区別無く私的録音・録画の機器・記録媒体である。

 

オランダ

オランダでは、個人が商業目的でなく、かつ、個人での使用や研究のみを目的として著作物の複製を行う場合は、著作権の侵害とはみなされないこととされている。

対象行為は、デジタル・アナログの区別無く私的録音・録画である。請求権は著作権者等に与えられ、補償金の支払義務者は、記録媒体の製造業者と輸入業者とされている。

 

オーストリア

1980年に補償金制度を導入

デジタル・アナログの区別無く私的録音・録画の媒体である。

記録媒体には、一体型機器に内蔵されたハードディスクやMP3プレーヤー内蔵のメモリカードが含まれるが、パソコンのハードディスクは対象とされていない。

 

 

補償金

まとめと考察

以上のように、先進国の間であっても、補償金制度の有無や、対象、補償金額には大きな差異が見られる。

制度の有無については、英国を除いた先進国ではほとんどの国に補償金制度があるが、中国・韓国等の後進国に新しく補償金制度が制定されるのかは不明。

対象については、デジタルのみかアナログを含むのか、記録媒体のみか機器を含むのか、録音のみか録画その他の複製も含むのか、HDDレコーダを含むのか、といった差異が見られる。
また補償金の額についても、大きな差が見られる。

これらは、私的複製の権利制限範囲などの立法経緯や訴訟にも影響を受けているが、各団体(音楽や映像や出版社、メーカー等)の政治力の強さの違いも大きな要因となっていそうで興味深い。

グローバルな状況を大きく分けると、フランス・ドイツ等の欧州各国は非常に強い補償金制度を有しており、英国やその他の後進国では補償金制度自体有しておらず、日本や米国はその中間に位置づけられる。

一部の欧州の国を除いては、技術進歩による機器の変遷に対応しておらず、補償金の収入額は低減していっている。他の国での新しい制定も見られず、補償金という仕組み自体が若干古いものという扱いを受けているイメージがある。

 

日本では、音楽権利者団体を中心に補償金制度の立て直しが必要という声もあり、汎用PCやクラウドシステム等の複製機能に補償金を課すべきという意見があるが、当然反発も強い。

クリエイターへの利益還元という枠で考えると、大きく、補償金を立て直すべきという意見、補償金ではない仕組み(ビジネスモデルや新しいスキーム)で対応すべきという意見、補償金は崩壊しているままそっとしておいてほしいという意見に大別されるように思われる。

コンテンツ産業や文化の発展を考える際に、利益還元が不要と言い切ることは決してできない。しかし補償金制度には利益の分配など大きな問題が残ることも確かである。
そうすると、何らか新しい仕組みが求められるが、非常に難しい問題である。

諸外国の状況を見ても、PC等の汎用機器にまで補償金を課している国はなく、ましてや複製機能に補償金を課すという考えは見られない。いたずらに補償金の対象を広げると、二重取りの問題や内外企業のダブルスタンダードの問題もあり、産業への影響を慎重に検討する必要がある。
ビジネスモデルによる解決がスマートなように思われるが、まだまだ検討が必要。

 

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 - 著作権

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