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宝くじの賢い買い方は? ~期待値と標準偏差から考察~

      2015/10/03

宝くじ
「宝くじを買うのは馬鹿のすることだ。胴元が儲かるだけで、購入者は平均すれば損をしているからだ。」

 

一見すると、もっともな意見に見えます。

 

間違いの無い事実として、宝くじを購入した全ての人を合わせると、あるいは全ての宝くじを買い占めると、確実に損をします。胴元である国が、半分以上のお金を抜いているからです。

 

例えばサマージャンボ。
連番10枚の宝くじの購入金額は3,000円ですが、平均の払い戻し額は、1,430円ほど。
払い戻し率の期待値は約43.7%で、
言い換えれば、連番10枚を買うと、収益の期待値は1,570円の損となります。

 

他のギャンブルと比較すると、競馬やカジノは胴元の利益をもう少し抑えていて、
70%ほどの払い戻し率が期待されます。

 

宝くじの魅力は?

では、ギャンブル商品としての宝くじの魅力は何か?
おそらく2つで、
損失の額が購入金額に限定され、300円からと小額であること
・非常に高いボラティリティ

 

特に後者の、ボラティリティが高いことが、宝くじの魅力そのものだろうと考えます。

 

冒頭の意見が常に正しいと考えている人は、
ギャンブルと投資とを混同してしまっています。

 

宝くじを買うというギャンブル行為は、投資のように安定して継続的な利益を上げようとか考えているわけではなく、もしかしたら大金持ちになるかもしれない、という夢を買っているわけですね。ですから、期待値がマイナスであることのみをもって、それが馬鹿のすること、という意見は受け入れがたいものです。
それが非合理的な行為だ、と言われれば、うん、その通りですけどね。

 

さて、繰り返しになりますが、
宝くじで夢を買う、というのは、まさに「ボラティリティ」を買うのと同義。

 

他の金融商品で考えても、
オプションの価値は元商品のボラティリティが高いほど高額になりますし、
株式においても、高ボラティリティ銘柄ほど低リターンである(のに買われる)と言われています。
 

 

しかも、宝くじの場合は、損益のヒストグラムに激しい非対称性が存在します。
つまり、1枚の宝くじを購入する場合、損失額は最大でも300円なのに対し、利益額は4億円まで想定される。正の方向にのみ高いボラティリティ(表現は不正確ですが)というのが、宝くじの価値・魅力となっています。
 
 
 

 

宝くじの賢い買い方は?⇒ボラティリティの高い買い方



では、宝くじの賢い買い方はどのようなものでしょうか。

 

宝くじの価値=高ボラティリティと捉えると、
ボラティリティ、この場合は標準偏差と読み替えて、
標準偏差が高くなるような買い方が賢い買い方、ということになります。


全くランダムなくじであれば、買い方によって標準偏差が変わることはないのですが、
ここでのポイントは前後賞があるということです。

さて、サマージャンボ2014を例に考えて見ましょう。
 
 
サマージャンボ2014では、26ユニット(780億円分)が売れた場合の当たりくじは、下記のようになっています。
宝くじ1
 
ここでは簡単のため、1ユニット=10,000,000枚=3,000,000,000円分を対象に、期待値と標準偏差を計算してみます。
 
 
さて、1枚だけを購入するとした場合、各当たりくじの確率、期待値、標準偏差は下記のように計算できます。
宝くじ2
 
 
1等が当たる確率は、0.0000001、
1千万人に一人の割合ですね。そうそう当たりません。

期待値は、上で述べたとおり、142.99円。
300円に対する払い戻し率は、47.66%ですね。
1枚買うと157円の損失が期待されることになります。
 
そして、肝心の標準偏差は、134,276.8円と、300円の買い物に対して、非常に高いことがわかります。
(本当は外れくじの分も計算すべきですが、誤差程度にしか影響しないので無視しています)
 
 
これを元に、ばらで2枚買う場合も、期待値は2倍になるだけで、払い戻し率は変化なし、
標準偏差にも変化はありません。
 
ただし、連番で2枚買うとなると、計算の仕方が変わります。

 
まず、1等が当たると、必ず前後賞のどちらかも当たることになります。
1等+前or後賞が当たるのが2通り、前後賞のどちらかのみ当たるのが2通りとなるため、
分かりやすいように2枚を1枚分の確率に直すと、下記のような計算になります。
 
宝くじ3


変化している点は、上の2つのみですが、賞金が固まるため、標準偏差も上ぶれします。
当然ですが、期待値に変化はなく、標準偏差のみ、161,339円と結構大きくなりました。
 
ばらで買うよりは、2枚連番で買うほうが、期待値は変わらないが標準偏差は大きくなることが分かります。



同じように、連番3枚の場合も考えてみましょう。
この場合は、1等+前後賞が当たるのが1通り、1等+前or後賞が当たるのが2通り、1等の前後賞のみが当たるのが2通りとなり、
下記のような計算となります。
 
宝くじ4


1等+前後賞という当たり方ができるため、標準偏差は171,358.1円と、さらに大きくなりました。
 
 
 
4枚連番、5番連番にすると、上3つの確率のみが変わって、
標準偏差は少しだけ大きくなっていきます。
 

宝くじ5



宝くじ6





10枚連番の場合は、
 

宝くじ7



となります。
 
 
以上から、宝くじに「夢」=「高ボラティリティ」を求めるのであれば、
ばらで買うのではなく連番で、しかも10枚連番で買うのが良い!
という結論が得られそう。
 
 
が、この理論には大きな欠陥があります。
上の計算の流れを見ていて、薄々気づかれたかもしれませんが、
結局のこと連番であれば、購入枚数が多いほど、標準偏差は大きくなります。
 
連番で買うのが良いことは分かったけど、連番で何枚買えばいいの?
10枚?20枚?それとも100枚?
 
この問いに対して、標準偏差を上げるためには、とにかくたくさん買えばいいじゃないか、という結論に陥ってしまいます。
その意味で、購入枚数N⇒∞の場合を考えると、確率計算は以下のようになります。
 

宝くじ8

 
標準偏差は、いくら上がっていっても、189,816.4程度まででサチってしまうわけですね。

連番であれば、たくさん買うほどボラティリティは上がるけど、4枚目以降からは上がり方が鈍くなり、上限がある。
また、当然ながら、何枚買っても収益率の期待値は変わらず、たくさん買うほど期待される損失額が大きくなる。
 

これらから分かることは、宝くじの満足度には、2つの方向性(関数)があって、

・(連番なら)買えば買うほどボラティリティが上がる。たくさん買うほど夢があるが上限がある。
⇒標準偏差は、右肩上がりで曲線の関数
・買えば買うほど損をする。夢だけ買うなら少ないほうが良い。
⇒期待値は、右肩下がりで直線の関数
とういこと。

これをグラフにすると、下記のようになります。

オレンジの関数が標準偏差で、1枚の時以外は全て連番での購入の計算値です。
3枚くらいまでは急激に増加して、その後は少しずつ増加し、漸近線の189,816.4円に近付いていきます。

青の線が期待値で、1枚買うごとに、損失の方向に157円ずつ減っていきます。

宝くじ

この2つの関数の和を、シンプルに宝くじの満足度と捉えると、2つの加重次第ですが、
標準偏差の増加の傾きが最も変化する、「連番3枚」の所が極大値となりそう。

ということで、結論が出ました。

結論:連番で3枚だけ買うのが、最も賢い宝くじの買い方! 



億越えを狙う人は?

ちなみに、この結論の前提は、ボラティリティの高さを求めることにあります。
人によっては、1等+前後賞なんて贅沢は不要で、
1等だけとか前後賞のどちらかだけとか、とにかく「億」を超える当たりを1つでも引きたい
という指向の方もいるでしょう。

そういう人にとっては、上の表の確率列を見てもらえれば分かるように、
連番で買うよりバラで買うほうが、億越えの確率は上がることになります。

バラで2枚買うときには、億越えの確率は(0.0000001+0.0000002)×2=0.0000006
一方、連番で2枚買う時の億越えの確率は(0.0000001+0.0000001)×2=0.0000004
と、2/3になります。

バラで10枚買うときには、億越えの確率は(0.0000001+0.0000002)×10=0.000003
一方、連番で10枚買う時の億越えの確率は(0.00000008+0.00000002+0.00000002)×10=0.0000012
と、1/3くらいまで減っていきます。

狙いによっては、バラ買いも有りということですね。
とにかく大金の「夢」を買いたい人は、連番3枚!
とにかく「億」を超える額を欲しい人は、バラ買い!


バラ買いの時に、何枚くらい買えばいいか、というのは、、
あんまり買いすぎないことでしょうか。


宝くじと税の問題

さて、おまけとして、話を税の問題に転じます。
 
競馬やカジノのほうが払い戻し率は高いと述べましたが、
これらの場合、勝ち金の全てが手元に残るわけではありません。
 
競馬で30億円ほどを当てた人に対して、
6億円の課税がされたニュースは、聞き覚えがあると思います。
 
これは結構ひどい事件で、
30億円を当てるために、29億円ほどの馬券を購入しており、
利益は1億円ほどなのに、外れ馬券は経費として認められず、
利益以上の額が課税されてしまっているわけです。
 
これは極端な例ですし、この件は結局、
金額の大きさと継続性から営利目的が認められ、勝ち金は「雑所得」と認定され、
外れ馬券も経費として認められました。


ですが、通常の場合、競馬やギャンブルの勝ち金は「一時所得」となり、
一般的なサラリーマンでも、一時所得が年90万円を超えると、
所得税と住民税の支払い義務が生じます。

この場合は外れ馬券なども経費としては認められず、課税割合は所得課税の額によりますが、例えば勝ち金を含めた所得課税が1800万円を超える場合は、一時所得としてその1/2が総合課税され、約20%が課税されることになります。
手元に残るのは80%だけ、ということですね。
 
 
一方で、宝くじ当せん金の所得税は「非課税」です。これは、宝くじが「当せん金付証票法」という法律により発売されており、その第13条で当せん金については所得税が非課税であることが規定されているからです。
 
 
当せん金付証票法 第十三条  当せん金付証票の当せん金品については、所得税を課さない。
 
これはもちろん、胴元の取り分が高い分、そこから税が天引きされているという考えなのですが、税金負担を考えると、他のギャンブルと比較して、宝くじもそんなに悪くないかもしれません。
 
※競馬についても、宝くじと同じような課税方式にすることが検討されているみたいですね。


まとめ

以上、宝くじの魅力の根源を、高いボラティリティと捉え、
標準偏差と期待値のバランスから、最適な買い方を検討してみました。

結論は、とにかく夢を買いたい人は、
連番で3枚だけ買いましょう、ということです。

また、とにかく億越えを求めたい場合は、
バラ買いで、適当枚数買いましょう

3枚が買いにくければ、10枚でももちろん良いでしょう。

冒頭のほうで当然のように述べましたが、
宝くじはギャンブルであって、投資ではありません。

ギャンブル商品としては、魅力的なものですが、
投資商品と見た場合は、最悪のものです(期待利回りがマイナスなので)。

その点を勘違いして、はまり過ぎたりしないように、
夢を買うのであれば、3枚~数10枚くらいに抑えるようにしたいですね。

また、みんな夢を買っているんだから、それを非合理的だと馬鹿にすることなく、
仲良く少しずつ購入しましょう。

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