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海外ネット配信への消費税課税、反対意見が少ないけど大丈夫?

      2015/02/22

amazon
AmazonやGoogle等による、海外から日本へのデジタル商品のネット配信サービスの取引について、
消費税を課税することが既定路線のようです。
 

海外発ネット配信の消費税課税、何が問題になってるの? 


「デジタル商品のネット配信サービスの取引」、典型的には電子書籍や音楽データの販売ですね。

 

現在の日本の消費税法は、輸入品と国内取引が課税の対象となっています。
国境を超えるデジタル商品の電子取引の場合、サービス配信供給地が国内の場合には課税されますが、
国外の場合は課税されないこととなっています。

 

このため、同一の電子書籍でも、国内発か海外発かで価格は異なります
例えば、国内のネット書店では消費税8%を含む1512円で配信されているものが、
アメリカやカナダに拠点を置くネット書店では1400円になっています。

 

日本のユーザーからすれば、コンテンツが同じであれば、当然に安い方を選びます。
これは明らかに日本の事業者にとって不利な取り扱いとなってるわけですね。

 

楽天の電子書籍も、カナダの電子書籍事業会社のKoBoを買収し、
この子会社を通じて電子書籍販売をしています。
消費税課税が一つの理由となっていると考えられます。

 

「このままでは消費税の空洞化を招く。税の抜け穴をふさぎ、内外格差を是正し公平な制度にするべきである。」
ということで、海外からの販売にも消費税を課税しよう、ということが議論され、それがほぼ規定路線のようです。

 

メディアによれば、海外から日本の個人や企業向けへのネット経由のデジタル配信額は24年で5119億円。
単純計算で、約256億円の消費税を取り損ねたことになるそうです。

 

ただ、消費税による税収は10兆円程度なので、割合でみればそんなに大きくありません。
税の空洞化とか税収の問題よりは、海外企業との不公平をなくすことが重要ですね。

 

具体的に、どうやって対策・課税するのか? 

 

しかし、課税すると言っても、それは容易なことではありません。
これまで海外からのデジタル配信に課税しなかった(できなかった)のは、
テクニカルな困難性の要因が大きいでしょう。
 
「物」の輸入であれば税関を通って把握できても、電子データの配信なんて、税当局が把握するのは難しいですよね。

海外の事業会社に、自分でしっかり管理してもらって、わざわざ日本の税務署へ支払ってもらうしかありません。
 具体的には、消費税法の改正を27年度税制改正大綱に盛り込む。海外から日本の個人向けにネット配信する事業者に対し、「納税管理人」と呼ばれる税金支払いの代行者の設置を日本国内で義務付け、税金を徴収する。

 個人向けでは、納税義務者は配信元の海外企業とする。日本の国税当局に登録した海外企業が納税する仕組みだ。現在、アマゾン・ドット・コムの海外サーバーなどから配信される電子書籍やアプリなどは非課税だが、新制度導入後、個人は消費税を上乗せした金額を払うことになる。

 法人向けでは、ネット配信を受けた国内の企業が消費税を納める。国内企業が業務用ソフトなどのネット配信を受けた海外企業に支払う代金は消費税抜きのままとするが、消費税分を日本の国税当局に納める仕組みだ。
・・ということらしいです。

 

 

課税による公平性担保、それでいいのか?


さて、これら一連の報道を受けて、
ネットでは概ね好評のようです。

ユーザーからすれば、これまで非課税だったものに消費税が課税されるので、負担でしかないのですが、
やはり海外の巨人に好きにさせるわけにはいかない、
日本企業を応援したい、という思いが強いのでしょう。
私もそうです。

なお、Amazon等の企業のサービスに消費税が課税されると言っても、
手続き上、納税するのは(納税者)Amazon等ですが、
その税は負担するのは(担税者)日本国民のユーザです。

Amazon等の売上や利益に直接の影響が出るわけではないので、
その点、誤解のないようにしたいですね。

それでも消費税の有無によって、日本企業との不公平が出ているので、
それを是正することは、必要な措置だと思います。


しかし、どうしても気になってしまうことが一つ。
納税方法が煩雑だと、海外企業が日本へのサービス提供をやめてしまうんじゃないかという心配です。


や、もちろん、AmazonとかGoogleとかの大手は、
法的に求められればしっかり対応するでしょう。

でも、これから立ち上がっていくベンチャー企業には、
わざわざ日本に納税管理人?を置くことなんてできないでしょう。
だったら、とりあえずしばらくは、日本人には使わせないようにしようかと、
なっちゃいますよね。

思えば、AmazonMP3も、個人的には待望のサービスだったのですが、
日本と海外の法制度の違いからなかなか日本では使うことができず、やきもきしました。



税の三原則は
「公平、中立、簡素」です。

日本企業と海外企業とで、中立な課税はもちろん必要ですが、
それは「簡素」(分かりやすく、納税手続き自体が過度な負担とならないこと)であることが必要です。


また、日本企業と海外企業の中立性担保はもちろん必要ですが、
それを担保した結果、
日本人ユーザーと海外ユーザーとの利便性に差が出るのは、やっぱり困っちゃいますよね。


じゃあ、どうしたらいいの?

大きい方向性としては3つ。


①納税手続きを出来るだけ簡便にする

一番現実的な解ですね。

相当の額以下であれば課税免除するとか、
まあ抜け穴になっちゃいそうですけど、工夫して、
魅力的なサービスが日本に入ってこないことにならないよう、
頑張ってほしいです。


②国際的にダイナミックな運用改正

グローバル化が進む中、問題となっているのは消費税だけなく、
むしろ本丸は法人税でしょう。
脱税的な節税や、企業・国籍の中立性担保のため、
国際的に協力した取り決めが求められてくると思います。

と言っても、具体的にはノーアイデアですがw


③電子配信の非課税・低減税率

これが、一番期待する解です。
日本企業と海外企業との中立性を担保しつつ、
日本のユーザにとって不利なことにもならない。

もちろん、業界の中立性という観点から、反対意見が強いでしょうけど、
このくらい思い切ってくれたらいいなあ。

 

 - 知財会計

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