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TPP知財(続)

      2014/08/21

先日の記事で、TPP知財分野が揉める理由として、
国際社会における知財制度の実質は、「先進国が途上国へのアドバンテージを守るためのもの」だからだと説明しました。

「いやいや、知財制度を充実させることで、
新興国の国内企業も技術開発意欲が促進され、早期の産業発展につながるんだ。
日本だって、技術力の弱いうちから特許制度を導入することで、強い技術力が育ったんだ。
他の新興国もそれに見倣って、知財制度の充実・補強をすべきだ。

こんな反論がありそうなので、少し補足しておきます。



確かに、長期的な視野に立つと、知財制度を充実させることで、
国内企業の技術競争が活発になり、産業の発達に寄与するでしょう。
しかし、長期的なメリットがあるからといって、短期的なデメリットを無視するわけにはいきません。


日本が特許制度を導入した80年代と現在とでは、
グローバル化の状況は大きく変わっています。

市場あるいは製造拠点として魅力のある新興国には、既に外資の手が及んでいます。
主要な技術が外資企業の知財で強力に保護されてしまうと、
少なくとも20年のスパンで国内企業の活動が圧迫されてしまいます。

また日本では、実用新案制度をフル活用することで、
日本企業の「ちょっとした工夫」を強く保護し、
外資に負けない出願意欲を掻き立てさせました。

こうした、少しチープな知財制度を用意することも、
TPPでかっつり充実した強固な知財制度を強要されると、
難しくなってしまうかもしれません。

また、日本においては、特許制度を導入してから、
実に14年間もの間、「外国人には権利を与えない
という制度にしていたことも、あまり知られていませんが、無視できない事実です。


こう考えると、今の途上国が、いきなり、
充実した知財制度を導入することは、
やはり短期的なデメリットのほうが大きいだろうと思います。


まあTPPはパッケージの議論ですから、
一面不利でも、総合的にメリットがあれば、協議は成立し得ると思います。
日本は関税撤廃の聖域で断固とした態度を貫いていますが、
もう少し妥協してもいいんじゃないか、というのが私見です。

日本の農業が本当に国際的競争力の無い分野なら、
それを保護して固定するよりは、流動的に強い分野にリソースを当てるほうが間違いなく効率的だし、
今さら食糧だけ自給できても安全性確保とは言えないし、
と思ってしまいます。



また話が変わりますが、
著作権の保護強化(非親告罪化)は、日本のネットユーザからも反発が強そうですね。

確かに、著作権保護をがちがちに固めてしまうのはネット文化に馴染みませんが、
非親告罪化して、明らかな海賊版流通サイトの対策をするのは、
クリエーターの保護としては正しく、また日本の国力強化にもなると思います。

明らかな著作権違反の取り締まり強化と、
パロディ・オマージュ・実況動画などの、文化を発展させるための著作権の柔軟性とは、
別の議論と捉えたほうがいいでしょう。


繰り返しになりますが、
TPPによる、途上国も含めた諸外国(もちろん日本も含めて)の知財保護強化は、
知財先進国であって、コンテンツ大国を目指している日本にとっては、
基本的には追い風だと考えています。
(著作権保護期間の延長は除くけど)
 

TPP 知財戦争の始まり
渡辺惣樹
草思社
2012-02-11


 

 - 知財戦略

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