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クラウドと著作権

      2014/08/21

英国の著作権法改正について、
先日の記事で、パロディが認められたことに触れました。

話題のインパクトとしてはパロディは大きいですが、もしかすると、それ以上に実体的な影響が大きいのは、私的利用のための複製の拡大かもしれません。



7月末で国会を通った議案により、28Bという条項が追加されることになりました。
この拡大により、クラウド上にデータを保管(複製)する行為も、一定の要件の下で私的利用のための複製として認められるようになりました。 

 

変更のある条文は以下の通りです。

 


“28B    Personal copies for private use

(1) The making of a copy of a work, other than a computer program, by an individual does not infringe copyright in the work provided that the copy—

(a)is a copy of—
(i)the individual’s own copy of the work, or
(ii)a personal copy of the work made by the individual,
(b)is made for the individual’s private use, and
(c)is made for ends which are neither directly nor indirectly commercial.
 
(2) In this section “the individual’s own copy” is a copy which—

(a)has been lawfully acquired by the individual on a permanent basis,
(b)is not an infringing copy, and
(c)has not been made under any provision of this Chapter which permits the making of a copy without infringing copyright.
 
(3) In this section a “personal copy” means a copy made under this section.

(4) For the purposes of subsection (2)(a), a copy “lawfully acquired on a permanent basis”—

(a)includes a copy which has been purchased, obtained by way of a gift, or acquired by means of a download resulting from a purchase or a gift (other than a download of a kind mentioned in paragraph (b)); and
(b)does not include a copy which has been borrowed, rented, broadcast or streamed, or a copy which has been obtained by means of a download enabling no more than temporary access to the copy.
 
(5) In subsection (1)(b) “private use” includes private use facilitated by the making of a copy—

(a)as a back up copy,
(b)for the purposes of format-shifting, or
(c)for the purposes of storage, including in an electronic storage area accessed by means of the internet or similar means which is accessible only by the individual (and the person responsible for the storage area).
 
(6) Copyright in a work is infringed if an individual transfers a personal copy of the work to another person (otherwise than on a private and temporary basis), except where the transfer is authorised by the copyright owner.

(7) If copyright is infringed as set out in subsection (6), a personal copy which has been transferred is for all purposes subsequently treated as an infringing copy.

(8) Copyright in a work is also infringed if an individual, having made a personal copy of the work, transfers the individual’s own copy of the work to another person (otherwise than on a private and temporary basis) and, after that transfer and without the licence of the copyright owner, retains any personal copy.

(9) If copyright is infringed as set out in subsection (8), any retained personal copy is for all purposes subsequently treated as an infringing copy.

(10) To the extent that a term of a contract purports to prevent or restrict the making of a copy which, by virtue of this section, would not infringe copyright, that term is unenforceable.”

 

特に関係するのは、(5)の(c)です。

ここのでの「私的利用」には、インターネット等の手段によりアクセス可能な電子ストレージに保管するための複製行為を含む、と規定されています。

クラウドにデータを保管するのは、私的利用のための複製であって、権利侵害とはならないことが明記されたわけですね。

ただし、いくつか条件があって、まずその電子ストレージには、利用者個人と、そのストレージに責任を持つ者(事業者?)しかアクセスできないことが課されています。
また、この私的複製の規定からは、コンピュータプログラムが除外されています。

つまり、クラウドサーバの公開・共有設定がされていない領域に(又は厳しく見るなら公開・共有設定ができない領域に)、コンピュータプログラム以外の著作物(音楽とか映像とか)を保管することは、
私的複製ということでOKだよ、ということです。

ちなみに、同じく(5)の(b)において、フォーマット変換を伴う複製も私的複製の範囲でOK!とされています。



ちなみに日本の私的複製の規定はこちら
 
(私的使用のための複製)
第三十条  著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
一  公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器(複製の機能を有し、これに関する装置の全部又は主要な部分が自動化されている機器をいう。)を用いて複製する場合
二  技術的保護手段の回避(第二条第一項第二十号に規定する信号の除去若しくは改変(記録又は送信の方式の変換に伴う技術的な制約による除去又は改変を除く。)を行うこと又は同号に規定する特定の変換を必要とするよう変換された著作物、実演、レコード若しくは放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像の復元(著作権等を有する者の意思に基づいて行われるものを除く。)を行うことにより、当該技術的保護手段によつて防止される行為を可能とし、又は当該技術的保護手段によつて抑止される行為の結果に障害を生じないようにすることをいう。第百二十条の二第一号及び第二号において同じ。)により可能となり、又はその結果に障害が生じないようになつた複製を、その事実を知りながら行う場合
三  著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、その事実を知りながら行う場合

 

・クラウドサーバーが「自動複製機器」に当たるのか、
複製の主体が利用者か事業者か、
という2点が論点だと理解しています。

 

立法当時の趣旨を考えれば自動複製機器には当たらないし、
少なくとも通常の(汎用)クラウドにおいては、事業者はストレージを提供しているだけで、複製の主体は利用者であって、それは大体私的利用のための複製だから、
「単にクラウドにデータを保管する行為は著作権侵害に当たらない」、 というのが自然な解釈だとは思っています。
しかし、反対意見もあり、OKな範囲も不明確です。 
 

 

日本でも、審議会において、クラウドと著作権の問題が議論されていますが、
なかなか落とし所が見えなそう。

 

日本でも英国のような規定だけ設けておいて、
  • 純粋な私的複製としてのクラウド利用はOK(権利処理不要、補償金的なものも無し)
  • もちろん配信や公開が目的であれば契約で進める(ユーザフレンドリーでクリエイターに利益が還元できるビジネスモデルを事業者・権利者で作りましょう)
  • その範囲に疑義のあるものは法廷で争う
ということでいいんじゃないかと、単純ながら思ってしまいます。



 - 著作権

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