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パロディ、同人誌と、キャラクターの著作権

      2014/08/21

興味深いニュースを2つピックアップします。

 

 



ハイスコアガール SNKプレイモア
まず、1つめのニュースですが、
月刊ビッグガンガンで連載されている漫画「ハイスコアガール」において、SNKプレイモアが著作権を有するキャラクターを許諾無く使用したことに対して、同社から刑事告訴され、家宅捜査までされたということです。



SNKプレイモアは今回の刑事告訴に関し、
 
「株式会社スクウェア・エニックスは、当社の許諾を受けることなく、当社が著作権を有する多数のゲームプログラムのキャラクターを複製使用した漫画「ハイスコアガール(著者:押切蓮介氏)」を出版し、当社の著作権を侵害しました。当社は、重大な違法行為を厳重抗議すべく、株式会社スクウェア・エニックスに対し、「ハイスコアガール」の電子書籍、単行本、月刊誌その他の販売の即時停止を再三申入れましたが、なんら誠意ある対応がなされませんでした。当社としましては、本来、著作権等の権利を守り、その侵害に厳格に対処すべき、大手上場企業のグループ会社による極めて悪質な本件行為を看過するわけには参りません。そこで、当社は、やむを得ず、株式会社スクウェア・エニックス及び同社出版部門の関係者を、著作権法第119条第1項により刑事告訴した次第です。」
と発表。



ハイスコアガールは、1990年代のゲームセンターを舞台にしたラブコメディです。
当時、実際に発売されたゲームのプレイ画面が作品に多々登場することが特徴で、SNK社の作品である、KOFやサムスピのキャラが描写されています。
またSNK社のほかにもカプコンのストⅡやナムコのスプラッターハウスなども登場しています。

 

格ゲーのキャラが出てくる漫画という意味では、同人誌などと同様ですが、
ハイスコアガールでは、単にゲームをやっている描写の中で格ゲーキャラ等が出ているだけのよう。

 

個人が楽しむ同人誌は黙認しても、ビッグガンガンに連載されるような漫画、しかも競合であるスクエニが発行するとなれば、黙ってはいられない、ということでしょう。

 

あらためて、同人誌やパロディの法的危険性があらわになった事件だと思います。
元々同人誌だって、法的にはアウトなものが黙認されていただけ。人気が出たり連載されたりして目をつけられれば、いつ訴えられてもおかしくないわけですね。

 




英国でパロディ権
それに対して、2つ目のニュース、
英国でパロディ権が認められるという面白いニュースです。

 

英国の著作権法が改正され、パロディ作品を作るために既存作品を適切に利用することが認められるという話のようです。
パロディ権と言っても、著作権者から有償で設定される権利ではなく、パロディ元の権利者の許諾やライセンス料は不要で、その成果物の配布も許されるそうです。

30A Caricature, parody or pastiche
(1) Fair dealing with a work for the purposes of caricature, parody or pastiche does not infringe copyright in the work.
(2) To the extent that a term of a contract purports to prevent or restrict the doing of any act which, by virtue of this section, would not infringe copyright, that term is unenforceable.
 
許容されるパロディの範囲・定義が気になります。

 

あわせて、クラウド保存も私的複製の範囲とする点も改正内容に含まれているようです。
こちらが詳しい↓ 



キャラクターの著作権
ちなみにですが、キャラクターの著作権について。

 

キャラクターとは、小説や漫画等の具体的表現から昇華した抽象的なイメージです。
キャラクターそのものはアイデアレベルの抽象的概念であるため、具体的な表現を保護する著作権法では保護されないということは、判例・学説上の支持を得ていると言えるでしょう。

 

しかし実際に多く問題となるのは、漫画やアニメのキャラクターの「絵」であって、それをキャラクターと呼ぶかはさておき、これには漫画として著作権が発生します。

 

そうすると、キャラクターの絵を模倣した製品があった場合、原作のどの表現に依拠したのかという、依拠の立証の問題となるのですが、経験則上依拠したことが明らかであれば、特定のコマに依拠したことの立証までは要求しないとされています(サザエさん事件)。

 

つまり、「キャラクター」という言葉の定義を、正確に、抽象的概念として捉えれば、もちろんこれは、著作権法では保護されないということになります。
しかし、実際多くの問題で直面する、キャラクターの絵が用いられている事案においては、依拠された特定のコマの立証が不要という点で、キャラクター的なものが保護されていると柔らかく考えても間違いではないように思います。

 

格ゲー等のキャラクターを、許可無く、引用の範囲を超えて、漫画等に登場させることは、疑いのない著作権違反ということですね。

 


パロディ
また、パロディについて。
パロディは、学問的な定義では、
文芸・美術作品等の原作を模し、あるいは滑稽化した作品であって、原作を揶揄または社会を風刺するもの、とされています。

 

日本ではパロディに関する最高裁判決はモンタージュ写真事件のみですが、中山先生曰く、
本最高裁判決の被引用著作物は、著名とは言い難いようなカレンダーの写真であり、またその写真を利用する必然性、目的等も明らかではない。従って、この最高裁判決をパロディの先例と見ることは必ずしも妥当ではなく、パロディ問題は未解決と見るべきであろう。
ということです。

 

また、同じく中山先生曰く、
著作権法の目的が文化の発展であることを鑑みれば、パロディは他人の著作物を利用しているとは言え、社会に対して新たな著作物を提供しており、単なる複製のほうが、パロディのような翻案よりも厳しく制限されてしかるべきである、
ということです。



なるほど。
パロディや同人誌など、文化の発展にも寄与しえるものについては、
別に緩く判断するのが良いとは限りませんが、なんらか妥当な許諾や利用法が認められれば良いですね。



 - 著作権

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